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独行法反対首都圏ネットワーク

 間違った布石の後に「詰め」の問題は存在しない
  [he-forum 4427] 佐々木東大総長の評議会報告について
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佐賀大学の豊島です.今年4月23日の,東大臨時評議会記事要旨についての論評です.

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     間違った布石の後に「詰め」の問題は存在しない

                     佐賀大学理工学部  豊島耕一

 4.19国大協決定を受けての,東大総長の評議会での発言をネット上で見ることが
できる*.それによると,佐々木毅総長は,「我々が中間報告に対する意見として
述べた様々な問題は」「(調査検討会議の)最終報告においてなお必ずしも解決を
みていないことは認めざるを得」ないけれども,「最終報告が独立行政法人通則法
をそのまま適用するものであるとは考えていない」そうである.そしてこれら
「様々な問題」の「詰めに関わりつつ、よりポジティブな評価に値するものとなる
よう努力し」,「法人化」に向けた作業を具体化していくと述べている.すなわち
残された作業は「詰め」の問題だというのである.

 実は佐々木氏は3年前に東京新聞で独法化を真っ向から批判して次のように述べ
ている**.

「監督官庁による監視と規制がますます厳しくなることは、目下の財政状態からし
て容易に想像される。」「独立行政法人通則法を抜本的に改め、新しい類型の法人
をつくるといった手だてがなされない限り、ボタンのかけ遠いはスパイラル状にむ
ごい状態を生み出すだけである。」

 そして,文章上は遡るが,次のようにも述べている.
「大学は創造的な研究とざん新な人材を養成すべきだということが声高に言われつ
つも、定型的活動形態の組織に大学を押し込めようとするのは、精神分裂症候群の
典型である。」さらに,「(大学の)命運について真面目に考える人が極めて少な
いのである」と世論やジャーナリズムを批判してもいる.

 しかしわずか三年後の今日,「通則法を抜本的に改め」ない限り,「むごい状態
を生み出す」とした佐々木氏自身が,通則法から字句が多少変わった事をもって「通
則法をそのまま適用するものであるとは考えていない」ので,「法人化」の準備を
するというのである.この二つの命題を整合的に理解することはできない.すなわ
ち佐々木氏自身が「精神分裂症候群」(今は統合失調症候群と言うべきか)に見舞
われているということになろう.それとも,「大学の命運について真面目に考える
人がいない」という言葉は,今や佐々木氏自身に向けられることになるのだろうか.
佐々木氏は,この言説の対象として想定された一般国民ではなく,当事者そのもの
なのだから,事態は深刻である.

 個人としての意見と総長としての立場は違う,といった弁護論も予想されるが,
そのような態度はこと基本的な理念に関する限り許されない.そしてこの社会を,
そしていろんな組織を歪めてきたのはまさにそのような「統合失調症」なのである.


(付記)佐々木氏は政府の何かの審議会の座長をしているようだが,国立大学のシ
ンボルともいうべき東大総長が行政府の下請け仕事をするのはいかがなものであろ
うか.これで大学が政府と対等にわたり合い,また行政府を自由に批判することで
きるのだろうか.少なくともその審議会が出した結論は批判できないだろう.大学
総長としての社会的役割は,政府の中に入ることなどではなく,政府から独立して
個々の問題について発言することである.仮に国家機関の下働きをするとしても,
行政府以外,つまり立法府あるいは司法に対してであるべきではないかと思われる.

840-8502 佐賀市本庄町1
佐賀大学理工学部  豊島耕一
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職場電話/ファクス 0952-28-8845