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独行法反対首都圏ネットワーク

法科大学院――改革の原点を忘れるな
 . [he-forum 4413] 朝日新聞08/26 
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法科大学院――改革の原点を忘れるな
朝日新聞ニュース速報

 改革の理念は生かされているのか。法科大学院構想をめぐる議論の曲折を見ていると
、そんな不安を覚えざるを得ない。
 この制度についての与党3党の先の合意には、見過ごせない問題がある。
 その一つが、法科大学院に行かなくても、「予備試験」に受かれば、大学院修了者と
同じように新司法試験を受験できるという「バイパス」の拡大である。
 背景にあるのは、法科大学院と予備試験の2ルートで、どちらがすぐれた人材を社会
に輩出できるか、競い合わせて双方の足腰を鍛えればよい、という発想だ。
 一つの理屈かもしれないが、それは改革の理念を真っ向から否定するものだ。なぜ法
科大学院が必要とされたのか、原点に立ち戻って考えてほしい。
 現在の司法試験制度には、だれにでも開かれているという良さがある。半面、合格率
数%という一発勝負のため、暗記中心の勉強に追われ、マニュアル志向の法律家を生ん
でいる、と批判されてきた。
 そこで、次代を担う法曹養成の仕組みとして法科大学院構想が生まれた。
 少人数教育を基本とし、学生と教員が互いに議論しながら、幅広い知識や論理的な思
考力を養う。社会人や法学部以外からも多様な人材を集め、まじめに学べば、7〜8割
が新司法試験に合格できる。そういう教育の過程を重視した制度へ切り替えようという
ものだ。
 もっとも、法科大学院の修了までには時間も金もかかる。バイパスは、奨学金や教育
ローンを充実させてもなお進学が困難な人たちへの例外的な配慮だった。
 ところが、与党案では、このバイパスをだれにでも認めている。過程を重視する教育
をうたいつつ、一発勝負のバイパスを広げるというのは矛盾としかいえない。安易にバ
イパスを狙う受験秀才が増えれば、構想そのものが立ちゆかなくなる。
 もう一つの懸念は、外部の厳しい評価システムがきちんと機能するかどうかだ。
 法科大学院をつくる基準は緩やかにし、教育の質が一定水準に達しないと、退場して
もらう、というのが当初の基本的な考えだった。司法制度改革審議会は、第三者評価機
関のお墨付きがない法科大学院の修了者には、司法試験の受験資格を与えない、という
厳しい条件をつけた。
 ところが、「それは規制の強化だ」と自民党議員が反発し、与党案では、大学院の設
置認可が取り消されない限り、修了者全員に受験資格を与えることになった。
 これでは、教育内容の悪い法科大学院がずるずると生き延びて、現在の法学部のよう
に乱立しかねない。その結果は、教育の質よりも、合格実績だけを重視することになる
だろう。元の木阿弥(もくあみ)である。
 国民にとって、今後、どういう法律家が必要か。真剣に考えれば、養成制度を根本か
ら変えるしかあるまい。
[2002-08-26-00:41]