☆<社説>ドクホウ的 活力ある大学への遠い道
. [he-forum 4402] 毎日新聞08/19
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Subject: [he-forum 4402] <社説>ドクホウ的 活力ある大学への遠い道 (毎日新聞08/19)
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<社説>ドクホウ的 活力ある大学への遠い道
毎日新聞ニュース速報
降ってわいたような独立法人化に向けて全国の国立大学は今てんやわんやである。ス
タートは04年4月となっている。もうあまり時間はないのに、未知の世界への突入に
検討事項は山ほどある。
「大学改革とかけて薄皮まんじゅうと解く。その心はアン(案)ばかり」。こんなジ
ョークがはやったころとは違い、国立大は歴史的転換期を迎えている。ただ「案ばかり
」は自ら考え出したものだったのに、今回は文部科学省から下りてきた大学改革である
。
活力に富み、国際競争力のある大学づくりを目指す独法化だけにとどまらない。文科
省は国立大に大胆な再編・統合を迫り、法人になった後に話は具体化する。
産学官連携の大合唱もある。「産業活性化に役立て」「大学発ベンチャー企業を」「
論文より特許だ」「バイオ大国に」と大学への要求はエスカレートする。
「象牙の塔」は確かにぬるま湯に浸り過ぎた。既得権益にしがみつく間に日本の大学
教育の国際競争力は最低レベルに落ちた。
それを一気に変えようと文科省は報告書「新しい『国立大学法人』像」を示した。学
長はトップダウンの意思決定を行い、民間的発想で大学を経営する。教職員は非公務員
となり、企業役員を兼務できるなどの自由を持つという。
これに対し、各大学は今も「独法化は既定の路線に沿っているように見えるが、法案
一つ通らず、大学で何を決めていいのか分からない」と戸惑うばかりだ。
学内には不満が強く、教官の意識が簡単には変わらない。特色ある大学にと言われて
もミニ東大を目指した発想の転換は難しい。
評価という難問もある。各大学は中期目標、中期計画に沿って文科省の評価を受け、
運営費算定の基礎となる。教職員への評価は給与に跳ね返るなど重要な意味を持つ。だ
が、厳正で客観的な第三者評価の手法は固まっていない。
産学官連携の中で基礎研究にしわ寄せがいきかねない。「受けのいい研究、すぐ成果
が上がる研究のみが重視されると大学はどうなる」という悲鳴も漏れる。
だが、もう引き返せない。「いやなら民営化だ」といわれる。それにしても各大学が
文科省からの指示待ち姿勢なのは嘆かわしい。学内の議論の積み上げで活力ある大学へ
の知恵を絞るべきだ。
「ほかの大学が利益追求を図るなら、うちはもうからない基礎研究を重視する」「文
科省からの天下りは絶対お断りだ」と気概を示す大学があってもいい。
日本の科学技術行政はトップダウンで経済優先に走り、現場の声が反映されにくくな
った。独法化でも同じであってはならない。
地球環境問題など多くの問題が噴出する21世紀に大学が教育、研究面で果たす役割
は大きい。10年後には大学が様変わりし、「ドクホウ的」が文科省とわたり合った国
立大の奮闘をたたえる言葉になることを願いたいが……。
[2002-08-19-00:06]