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☆「つくる会」教科書採択に対する愛媛新聞 社説
 . [he-forum 4400] 「つくる会」教科書採択に対する愛媛新聞 社説 
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(以下に出てくる加古守行愛媛県知事は文部省出身です)

2002年8月16日 愛媛新聞 2面 社説
           
             扶桑社版教科書採択
           結論も手続きもベストなのか

 選ばれたのは、昨年と同じ教科書だった。

 来春開校する県立中高一貫校四百八十人の歴史教科書に、県教育委員会は、扶
桑者版の教科書を採択した。昨年に続き、全国的にも極めて特異な結論を再び選
択したことになる。

 昨年来、この採択問題は県内はもちろん、国内外の激しい論議を巻き起こした。
なぜ「あえて扶桑社版」なのか。昨年も抱いた疑問を、今年もまた提起せざるを
得ない。

 問題は、大きく二点に分けられる。第一は、扶桑社版教科書の内容そのものだ。

 憲法軽視、戦争美化と多くの人が懸念を表明している通り、その歴史観はやは
り、異彩を放つ。「従来の自虐史観で、日本の悪いところばかり教えていては日
本人の誇りをもてない」といった主張に基づき、情緒的な表現で「大東亜戦争」
の目的などを肯定的に叙述している。しかし、教科書は一般書籍と異なる。論争
が決着していない問題について、一方的な価値観に基づいた記述に偏ると、教育
現場は混乱する。

 細部についても、検定合格後も含め、これまで計二五八ヵ所訂正している。他
社に比べ内容にかかわるミスが多い上、まだ百四十三ヶ所の誤りがあると指摘す
る専門家もおり、信頼性に疑問がある。

 扶桑社版の「教師用指導書」を見れば、その復古主義的な本質は、より鮮明に
なる。例えば「アジア解放に対する日本の功績を二つ書きなさい」。回答例は
「有色人種が白色人種に勝てることを示したことと、日本人が東南アジアの人に
戦争の仕方を教えたこと」−。

 過去の事実から決して目をそらさず、戦争への痛切な反省から学び、未来への
教訓とする。それが、歴史を学ぶ真摯な態度ではないだろうか。反省なきナルシ
シズムから、日本人の誇りが生まれるとは思えない。

 第二の問題は、採択の経緯である。

 加戸守行知事は、昨年の採択前に「扶桑社版がベスト」との「感想」を県教育
長に伝え、批判を招いたにもかかわらず、今年も「(採択は)県政最大の課題」
などと述べた。知事は教育長や教育委員を任命する立場にあり、その一言は、市
民団体の賛否行動よりも大きな心理的圧力になり得る。採択前に公然と発言を繰
り返す姿勢は、公正中立とは到底言い難い。

 県教委は「子どもたちのために、一番学びやすい教科書を選ぶ」という視点が
あったかどうかが問われる。全会一致という結果を見れば、昨年の結果や知事の
意向などを踏まえ、予断を持って「採択ありき」で非公開の審議に逃げ込んだの
ではないか、との疑問は消えない。

 県内のある教諭は「重い荷物を教師が背負わされたが、憲法に従って、良心を
貫き、子どもたちに誠実に対応していくしかない」と話す。どんな教科書であれ、
本当に大切なのは、どう教えるかだ。

 単なる知識だけではなく、他者への配慮や多様性を認め合う寛容さなど、人と
しての成長に欠かせない大切なものを、子どもは学ぶ。教科書とは、そのための
「道具」でもあることを忘れないでいたい。

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           野田隆三郎(元岡山大学)

  TEL/FAX 086-294-4020
 e-mail nodarr.193@do9.enjoy.ne.jp
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