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独行法反対首都圏ネットワーク

☆山大混迷の夏−教育学部再編問題(下)
 .  [he-forum 4374] 8月5日山形新聞ユース
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2002年8月5日 月曜日
山大混迷の夏−教育学部再編問題(下)

 「教育学部の決定を重く受け止め、全学的な検討を重ねてきた。小職の心積もりとして
は本日の評議会で決定を図るべく準備を進めてきた」

 初夏の厳しい西日が照りつける会議室。仙道富士郎学長は6月19日の評議会終了後、カ
メラの放列を前にペーパーを読み上げた。

 学長声明は、この日が山形大として教員の計画養成機能維持を断念する「Xデー」だっ
たことを意味していた。

 仙道学長は「(再編協議を進めている南東北)3大学間の『連携の枠組み』づくりの進
展を図るとともに、県、山形市との話し合いを進め、相互理解を深めていきたい」と続け
た。総務課の職員が報道陣の質問を遮る。学長はすっと立ち上がり、隣の自室に消えた。

 山形大、宮城教育大、福島大の学長らが直接話し合う3大学連絡会議は、3月中旬にスタ
ートした。3人の学長は初会合で、ことし夏までに一定の結論を打ち出す方針を確認した。

 まず福島大が降りた。5月16日の連絡会議第3回会合で、臼井嘉一学長が教員を計画養成
しない「一般校」になると明言した。

 それからわずか5日後の5月21日夕。今度は山形大教育学部教授会が教員の計画養成を断
念し、新学部に移行するという石島庸男学部長の提案を承認した。

 「担当校」の座は、6月19日の山形大評議会を経て、残る宮城教育大に渡るところだっ
たが、山形県民が立ちはだかった。学内の誰もが予想しなかった反応だった。

15万人の署名
 教育関係団体から15万人を超す署名簿を受け取った仙道学長は今月2日、報道陣を前に
「地域に密着した問題であり、県民の声をよく聞いて慎重に討議を進め、最終的な方向性
を決定したい」と強調した。さらに「文部科学省は『地域とよく話し合ってください』と
言っており、すべてはその方向で動いていく」と踏み込んだ。

 3大学連絡会議の発足当初から、宮城教育大の横須賀薫学長は「担当校として頑張って
いくしかない」として、突出して強い意欲を示していた。しかし現在は「山形県内の状況
が複雑で、事態を見守るしかない」(同大総務課)という立場。

 「ことし夏までに一定の結論を打ち出す」という当初の方針は、2004年4月の国立大独
立行政法人化と同時に、再編統合した教員養成課程が動き出すことを指す。宮城教育大側
は「2004年度に新たな出発を迎えたかったが、このままでは間に合いそうにない。本年度
内に(3大学間の)結論が出ればいいのだが…」と控えめに話す。

 教育学部存続を模索して県が作成中の試案は、あくまでも3県の担当校を意識した内容
にまとまりつつある。山形大がどう受け止めるかが焦点だが、東北唯一の教員養成単科大
学で、一歩も引かない宮城教育大との綱引きが過熱する可能性をはらんでいる。

 戦前、戦後の子どもたちに社会を見つめる目を開かせた生活つづり方教育、山間部の小
規模校に対応した独自の教育手法は、地域と山形大教育学部の共同研究の成果だった。こ
とし4月、全国で初めて小学校全学年に少人数学級を導入する「さんさんプラン」がスタ
ートし、山形は先進的な教育県として再び全国の注目を浴びた。

差し始めた光
 長らく苦悩の時代が続いた学校現場に、光が差し始めた。「今度は少人数学級で共同研
究を」―。県内教育関係者の切なる声は、効率化を求める時代の波にかき消されてしまう
のだろうか。

 現在、宙に浮いている山形大と宮城教育大の話し合いは今後、どこまでも熱を帯びそう
な気配が漂う。
(山形新聞ニュース8月5日)