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独行法反対首都圏ネットワーク

☆山大混迷の夏−教育学部再編問題(中)
 . [he-forum 4373] 8月4日山形新聞ニュース 
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2002年8月4日 日曜日
山大混迷の夏−教育学部再編問題(中)

 「小学校教諭の採用比率がどんどん落ちているが、山形大との信頼関係をどのように築
いてきたのか」

 県議会は6月18日、山形大教育学部の問題を集中的に審議するため、史上初の全議員会
議を開催した。県議で唯一の山形大OB、笹山一夫議員(共産)の質問が飛んだ。

 木村宰教育長は「今春は採用した小学校教諭が42人で、ちょうど3分の1の14人が山形大
教育学部の出身。以前は50%程度を占めていた」と答弁、自席に戻った。

 なぜそんなに採用比率が低迷しているのか。委員会室で多くの県議が首をかしげた。

 県民が経済的に豊かになり、教員志望の生徒は高校を卒業すると、学力に見合った全国
各地の国公私立大に進学する時代。数多くの学生がUターンを希望し、山形県の教員選考
試験を受験するようになった。

私大の攻勢
 教員選考試験の内情を知る関係者は「最近の私大は実績がほしいから、徹底して受験対
策を教え込んでいる。国立大の教育学部は意気込みが足りず、山形大の相対的な位置はず
るずると落ちていった」と指摘する。

 山形大教育学部の存続を模索し、独立行政法人化後の新たな学部づくりに向けた県の試
案(骨子)がまとまった。極めて珍しい6年間の一貫教育を施し、初等中等教育現場の核
となる優秀な教員養成に主眼を置く。

 4年まで学部に在籍した学生は、2年間の大学院研究科に進むことが基本で、語学研修や
社会奉仕活動を通し、幅広い教養と経験を身につけることになる。修士課程を修了すれば
教諭の専修免許、希望する場合は児童生徒の問題行動に対処する臨床心理士の資格が得ら
れる。

 総合的、専門的な知識を備え、子どもの疑問に答えられるスペシャリスト―。県の試案
骨子からは、こんな教師像が浮かぶ。地域で優秀な教員を育て、地元の教員採用率を押し
上げようという意識が感じられる内容に仕上がった。

 山形大によると、南東北3大学の教員養成課程の入学定員は、山形大が120人、宮城教育
大が195人、福島大が220人で計535人。今春のデータで、各県教委の教員採用人数は山形
が133人、宮城が417人、福島が268人の計818人だった。

 3大学の教員養成課程の学生がすべて採用されたと仮定すると、単純な充足率は65%。
各大学には他都道府県からの進学者も多数いるため、これは非現実的な数字だが、課程存
続のためには、地元にいかに多くの学生を教員として送り出すかが大きな課題であること
は間違いない。優秀な人材の育成が欠かせないという結論に落ち着く。

少数精鋭に
 県内での教員養成に執念を燃やし続ける高橋和雄知事が「少子化の影響で、南東北3県
の教員採用枠が急激に拡大するような状況ではない。単に3大学の入学定員を足しただけ
の数合わせでは、教員就職率が上向かない」と語るように、県の試案は3県の実態に合っ
た少数精鋭の新学部をイメージしている。

 国立の教員養成系大学・学部の再編統合で、文部科学省は隣県の教員養成課程を集約す
るが、現在の総入学定員約1万人は維持する考えで、県が近く提示する試案を山形大がど
のように受け入れるかは未知数。そこには、南東北の再編協議に存亡が懸かる宮城教育大
の存在も絡む。状況は非常に混とんとしている。
(山形新聞ニュース8月4日)