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独行法反対首都圏ネットワーク

☆山大混迷の夏−教育学部再編問題(上)
 .  [he-forum 4372] 8月3日山形新聞ニュース2
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2002年8月3日 土曜日
山大混迷の夏−教育学部再編問題(上)

 新学部に移行し、教員の計画養成を断念するという山形大教育学部の教授会決定は、県
民にとってあまりにも唐突だった。高橋和雄知事を先頭に、猛然と反発がわき上がり、学
部存続を求めるエネルギーは異例の県民集会にまで発展した。教員養成にこだわる県は、
山形大が再編の受け皿となる「担当校」を目指す方針を鮮明に打ち出した試案を取りまと
めようとしている。厳しい世論は収束の気配すらなく、山形大は文部科学省との間で消耗
。混迷の度を深める南東北の再編協議は、暑い夏を乗り切れるのだろうか。

 「山形大の体質はこのままでは駄目だ。102人の教官で、年間に(現役の学生を)10人
程度しか地元に教員として送り出していない。学生の責任もあるが、何を教えているのか
と言いたい」

 1500人近い教育関係者が県民会館に集結した7月28日の「山形大教育学部の存続を求め
る県民集会」。学部同窓会を代表し、元山形市教育委員会委員長の石垣克之氏が厳しい口
調で教育学部を批判した。

 石垣氏は付属中勤務が長く、教育学部と連携して授業の改善に取り組んできた自負があ
る。「大学はもっと大胆に情報を公開し、広く県民の意見を聞いて、この問題に立ち向か
ってほしい」と続けた。

 県教育庁義務教育課によると、2002年度の県公立校教員選考試験で採用された山形大教
育学部卒業者(過年度卒を含む)は、小学校課程が42人のうち14人、中学校が47人のうち
11人。近年は小学校が10人台、中学校が10人前後で推移している。

 文部科学省の2001年度のデータで、南東北で再編協議を行っている3大学を比較してみ
る。48大学の教員就職率ランキングで、福島大が45.2%で8番目、宮城教育大が38.1%で2
0番目と中位以上に顔を出すのに対し、山形大は30.6%で36番目と下位に甘んじている。
正規採用に限れば、山形大の就職率は際立って低い6.8%にとどまる。

◆責任の放棄
 場面は再び県民集会。石垣氏の後、ステージに立った付属小PTA会長の平清水公宣氏
は、就職率や教官数ばかりを持ち出し、宮城教育大の優位性を強調する山形大教育学部を
「社会と後世に対する責任放棄」と言い放った。

 教育学部の検討は、こうした数字の比較に終始した。地域への貢献度や研究の歴史はほ
とんど加味されることなく、県民を納得させる明確な理由に欠けていた。教員の計画養成
を断念する理由が教員就職率の低迷では、学部の自己否定にほかならない。

 高橋知事が7月10日の懇談会で「担当校を目指す努力が足りない」と指摘したように、
大学に奮起を促す県民のパワーが県民集会に結びついた。

 教育に対し並々ならぬ情熱を傾け、山形県の土台を築いた初代県令の三島通庸が1878(
明治11)年、山形大教育学部の前身である県師範学校を開設した。その跡に建つ県民会館
で学部存続を求める集会が開かれたのは因縁めいていた。

◆貢献は多い
 教育学部には教科教育の専門家がそろう。研究成果や理論を県内の幼稚園と小中学校に
伝授し、現場の教師はその通りに実践、広めるという作業を繰り返してきた。

 県連合小学校長会の木村康二会長(山形四小校長)は「遠藤周作の自伝的な小説『白い
風船』が教科書に載った時だった。非常に面白い題材を授業でどのように活用したらいい
かと、迷わず教育学部に駆け込んだ」と振り返る。山形大教育学部のOBでもある。

 木村会長は「教員養成ばかりに目が行きがちだが、教育学部は理論の普及、教員の現職
研修という面で、県内の教育界に計り知れない貢献をしてきた。あまりにも密接で、まる
で空気のような存在だった」と関係者の声を代弁する。

 県PTA連合会などの運動で、署名が15万人を突破した。児童生徒の保護者、教職員O
B、教育学部同窓会員らの熱い思いがぎっしりこもった署名簿を2日に受け取った仙道富
士郎学長は「重く受け止め、十分に考慮して議論を進める」と語った。
(山形新聞ニュース8月3日)