☆バーミンガム大学カルチュラルスタ
ディーズ学部閉鎖
. [he-forum 4364] バーミンガム大学カルチュラルスタ ディーズ学部閉鎖
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「バーミンガム大学カルチュラルスタディーズ・社会学部(CCCS)閉鎖に関して」
関係各位
突然のお便りにて失礼いたします。
この度は、私たちが直面している問題に関して、是非とも皆様のお力添え・ご助言
を
仰ぎたく、お便りさせていただきました。
私たちは、英国バーミンガム大学カルチュラルスタディーズ・社会学部の大学院に
在
籍する、日本人留学生です。一名は博士課程に、二名はMphil課程(研究修士)に在
籍しておりますが、実は、この7月31日をもって突然カルチュラルスタディーズ・社
会学部が閉鎖されることを知らされ、他の学生ともども激しいショックと憤りを感
じ
ております。それというのも、学年途中にも関わらず所属学部が閉鎖されるという
、
学生にとって非常に重大な事実が7月になるまで正式に通知されず、また、こうした
決定に際して学生の側には事前の通達や相談の機会が殆ど設けられなかったためで
す。
実際には5月頃から、大学院生を中心に学部再編のうわさが回り始めましたが、そ
の時点では正式な発表は全くなく、また、うわさの内容も現在明らかになった現実
の
再編案とは大きく異なるものであったため、まさか学部自体が消滅するとは予想し
て
いなかった学生たちの動揺は計りしれません。さらに、学部閉鎖に伴い現在の所属
教
員は4人にまで削減されることになっており、現時点(7月)においても、来学期(
9
月)以降、自分の指導教官が大学に残るのか、辞めてしまうのかが明らかになって
お
らず、論文指導を含めた学生の研究活動は事実上ストップさせられています。
現時点で大学側(新しい学長を中心とした当局側)が示した「リストラクチュア」
の
内容は、以下の通りです。
・バーミンガム大学は国際的な研究大学として生き残るため、RAEランキング4以
下
の学部・研究所は再編対象とする。今回の査定でカルチュラルスタディーズは3aと
評
価されたため再編する。
・学部課程(underguraduate)のプログラムとしては、カルチュラルスタディー
ズ
のプログラム(メディア・文化・社会コース)を残す。
・再編に伴う教員の削減で指導教官を失うことになった研究コースの学生に対し
て
は、「学内で他の指導教員をさがす」「他大学から指導教員を借り受ける」「他大
学
へ転籍する」の処置を講ずる。
これらの案は、年度の途中からいきなり始められたもので、教員も5月頃まで実態を
把握していなかったと言われています。そもそも、学生は入学時点で提示された条
件
を元に入学し、学費を支払っているのですから、大学側は全ての学生が当初の目的
を
達するまで、最初に提示した研究環境を維持する責任があります。そうした意味か
ら
言えば、今回の決定は学生に対する明確な違約であるといえます。
また、大学側の決定には、納得のできない意図を感じざるを得ません。RAEは、イ
ギリスにおける大学の研究レベルのランキングであり、5年ごとに査定が行われま
す。
しかしながら、多くの研究者も指摘するように、RAEの評価は研究に供される資源に
重点を置きすぎており、人文社会系の学問領域においては正当な評価が成されてい
な
いとも言われています。また、仮にRAEの格付けに基づいて再編を行うのならば、過
去5年の評価である今回のランキング一度きりで決定するのではなく、少なくとも次
回の査定時期を待つのが筋だと考えられます。一回の評価で毎回学部を潰していれ
ば、長期的な研究計画を必要とする分野はその性質上存続できなくなってしまいま
す
し、そもそも研究力の向上を意図したRAEランキングの存在自体に意味がなくなりま
す。
更に付け加えれば、バーミンガム大学のカルチュラルスタディーズ・社会学部は
、
過去のRAEでは常にトップ・ランクの5、ないしは4aと評価されてきました。従来、
カ
ルチュラルスタディーズは「社会学」のカテゴリーで評価を受けてきましたが、「
社
会学分野で申請するには質的研究だけではなく量的研究の環境も整える必要がある
」
との指摘を受けて、メディア系のカテゴリーで評価を申請したことも、今回の査定
結
果に影響したようです。評価カテゴリー自体に制約があることも、大きな問題の一
つ
であるといえます。
また、イギリスの学部入学を管理する機関「UCAS」の評価でも、バーミンガム大
学
のカルチュラルスタディーズは3年にわたって最高の評価を受けています。
大学側は、当然、上記の事情を把握しているはずであり、その上でこうした強引な
策
を講ずる大学のやり方に、学生は強い不信感を抱いています。事実、カルチュラル
ス
タディーズや地球科学などを含めた教員が100人規模で整理される一方で、ビジネス
・
スクールの教員・学生を倍増する計画が進められています。ビジネス・スクールの
学
生の大半が、イギリス人学生の4倍近い学費収入をもたらす留学生で占められている
ことは周知の事柄であり、学内では、新学長を中心とした大学の決定は、財政収入
の
増大を見込んだ経済的な思惑に基づいていると考えられています。
ご存じの通り、カルチュラルスタディーズは、ここバーミンガム大学を発祥地とし
て
おり、その成立期から現在に至るまで、数多くの有益な議論を産み出してきました
。
英語圏において、その業績は「バーミンガム学派」として広く認識され、CCCS
(Centre for Contemporary Cultural Studies)は、その立地や成立における政治
的
・時代的背景を含めて「学問と政治的実践」を標榜するセンターであり続けてきま
し
た。
現在、在籍する大学院生の多くは、こうした意味を理解した上でここを研究の場所
と
して選択しました。学生の大半は世界各国からの留学生であり、現在の日本人には
想
像のできないような明確な政治的理念と目的を持って、研究と実践を繋ぐべく努力
し
ている学生も多数います。
そうした学生にとって、今回の決定は到底鵜呑みにすることのできない一方的な
内
容です。多くの指導教員が去った後、この分野を専門にしない教員が同じクオリテ
ィ
の指導を行えるとは思えませんし、既に学年の大半(あるいは修業年限の大半)を
費
やした学生にとって、他大学への転籍は、時間的にも金銭的にも、そして研究環境
的
にもリスクが大きすぎます。
私たちは、バーミンガム大学がカルチュラルスタディーズの発祥地であり、過去に
重
要な業績を産み出してきたという理由で、この学部(センター)を守りたいのでは
あ
りません。そのような伝統の特権化は、カルチュラルスタディーズ自体が否定する
も
のです。カルチュラルスタディーズの提起した問題意識は、現在、世界的な規模で
共
有されています。今や、イギリスに留まらず、様々な国でカルチュラルスタディー
ズ
を実践する機関が存在し、そうした意味では「Cultural Studies」を冠する学問分
野
の中心としての「センター」は、もはや必要ないといえるかもしれません。
しかしながら、私たちは、広く「学問と実践」の問題に取り組んできたこの学部
の
試みは、まだ継続していると考えます。数多くのカルチュラルスタディーズ実践の
一
つとして、この場所のこの組織が果たすことのできる役割はいまだ大きいのです。
上記の理由から、私たち学生は、大学側の非民主的な決定に抗議することを決めま
し
た。既に学生同士の会議を重ね、メールでの抗議活動、議員への陳情、CCCS出身・
関
係者への呼びかけなどを行い、学部を守るためのキャンペーンをはじめています。
私たち日本人学生も、自分たちのできることを話し合い、こうしてお手紙を差し
上
げることになりました。しかし、わたしたち学生の力は本当に小さいものです。特
に、言語の面でネイティヴの学生に及ばない私たちができることは限られています
。
ただ、もし皆様がわたしたちの活動に共感し、サポートして下さるならば、きっと
全
ての学生にとって大きな力になると確信しています。
今のところ、具体的な抗議手段は、以下の2点に限られています。
1. 学長宛に抗議の手紙、もしくはメールを送る
2. メディアなどに取り上げて貰い、問題提起を図る
もし、この文章を読まれ、私たちの抗議活動に共感して頂けるならば、どうか下記
の
住所もしくはメールアドレスに、学長宛の抗議文をお送り下さい。その際、ご自分
の
氏名と所属もご明記下さい。
Professor Michael Sterling (Vice Chancellor)
University of Birmingham
Edgbaston
Birmingham B15 2TT
U.K.
メールアドレス m.j.h.sterling@bham.ac.uk
また、お知り合いなどに報道関係の方がいらっしゃる場合、是非、上記の状況を
お
伝えいただき、可能ならば記事として取り上げていただけるよう働きかけて頂けれ
ば
と思います。
加えて、もし上記のサポートをお願いできる他の方をご存じでしたら、この文章
の
転送をお願いいたします。
最後になりましたが、長文をご高覧いただきありがとうございました。
現在、抗議活動のためのメーリングリストを試験的に運用しております。もし、継
続
して情報をご希望の方がいらっしゃいましたら、その旨お書き添えの上、ご返信下
さ
い。環境が整い次第、リストに加えさせていただきます。
以上、失礼いたします。
(文責:岡田 桂)
バーミンガム大学大学院カルチュラルスタディーズ・社会学
日本人留学生一同
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