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☆[公募研究資金]「“バブル”防ぐ評価体制を築け」
 .  8月20日付・読売社説
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8月20日付・読売社説

 [公募研究資金]「“バブル”防ぐ評価体制を築け」

 “バブル”が深刻に懸念されている。と言っても、経済の話ではない。大学を中心とした研究現場での資金のことだ。

 国公私立の大学や研究機関の研究者などから研究テーマを公募し、優れたものを選んで、国が資金を提供するのが、「競争的研究資金」制度だ。予算は現在の年間三千五百億円から五年間で倍増が計画されている。

 これまで日本では、研究開発予算の総額に占める競争的資金の比率が低く、研究現場の沈滞の原因と言われてきた。倍増計画には、能力と意欲のある若手に機会を与え、独創的研究を進めさせたい、との狙いが込められている。

 だが、その資金が適正に配分されていない、との批判が強まってきた。一部の研究者に資金が集まり、「研究バブル」が起きている、というのだ。“症状”が悪化しないうちに、改善すべきだ。

 研究資金の偏在は、配分などを決める研究評価システムが十分に機能していないところに、最大の原因がある。

 まず、応募課題を選考する評価者が、特定大学の教員に偏る傾向がある。ボス的な存在の研究者が、選考に暗黙の影響を与えている、との批判も出ている。

 競争的資金に関するデータベースの構築が遅れてチェックが利かず、類似の研究テーマについて、複数の関係省から資金を得る研究者もいるようだ。

 文部科学省など関係省や機関に、研究評価や選考の流れを掌握する専門的な研究評価管理者がいないのも問題だ。

 米国では資金提供機関が多数の管理者を擁し、臨時に集められる評価者とは別に、個々の研究テーマを掌握して研究活動をきめ細かくフォローしている。

 応募研究者と同等の専門知識を持っているため、先進的な研究に資金を誘導しやすく、野心的な研究者が世界から米国に集まる一因にもなっている。

 日本では「欧米で先例のある研究課題でないと資金が出にくい」と言われる。任期の短い担当者が、先見性に乏しい評価作業をしているためだ。

 資金を出しっぱなしで、中間段階や事後の評価が十分行われないのも、日本の欠点だ。これも、専門的人材の不足など体制の不備に由来する。

 政府の総合科学技術会議は最近、遅ればせながら報告書をまとめ、関係する省や機関に対して、研究評価システムの改善を求めた。

 厳しい財政状況の下、科学技術予算だけが例外的に増額されている。経済活性化への貢献が求められているからだ。

 予算を最大限に有効活用するため、研究評価システムの抜本改革が急務だ。

(8月20日08:27)