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担当校複数化も可能−文科省教育大学室長
 .  山形新聞08/07
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山形新聞08/07

担当校複数化も可能−文科省教育大学室長

 山形大を含む南東北3大学の再編協議で、文部科学省の本間実・教育大学室長は6日、山形新聞社の取材に応じ、隣県の教員養成を行
う「担当校」は必ずしも1校に集約する必要はなく、学生の入学定員が一定規模以上であれば、複数の場合も十分にあり得るとの考え
を示した。また、担当校を決定する判断基準は、学生の教員採用率の単純比較ではないと言明、再編の受け皿が宮城教育大か山形大か
で揺れる南東北3大学間の協議に微妙な影響を与えそうだ。

 本間室長は「一般的な話」と前置きし、3大学間協議の場合は、一定規模になった複数の担当校が併存する可能性が十分にあると強
調。「大学の都合や組織防衛ではなく、税金を負担している国民のため、質の高い教員を育てる視点」で議論してほしいと要望した。

 遠山敦子文部科学大臣が昨年6月に打ち出した国立大構造改革の狙いについて、本間室長は「パワーアップ」と指摘。説明による
と、教員を計画養成している全国48の国立大は、入学定員100人以下が16大学、101人以上で200人以下が16大学、201人以上が16大学と
規模にばらつきがあるのが現状。「一定規模になれば、(学生が)人間的に成長できる」として、再編に伴う入学定員増が教員養成課
程のパワーアップにつながるとの認識を示した。

 山形大教育学部は5月の教授会で、近年の教員採用率が低迷していることなどを理由に、教員の計画養成機能を断念することを決定
したが、本間室長は「都道府県の事情で就職率は大きく変動する。就職率だけを判断材料にするのは好ましくない」と語り、否定的な
見解を示した。

 教育学部の決定に対し山形県民の反発が強まっている現状に触れ「大変なことになっているが、国として余計な口を挟むのは差し控
えたい」と述べるにとどまった。

 一方で、全国的に行われている再編協議にタイムリミットを設けない方針を繰り返し強調。「山形県と山形大がじっくり話し合おう
という機運が高まっており、拙速になることなく、よく議論してほしい」として、地域との議論が深まることに期待感を表明した。

【本間室長一問一答】
 ―南東北3県の国立大間で、教員養成系大学・学部の再編協議が難航している。近隣県の「担当校」は、あくまでも1校に絞り込まな
ければならないのか。

 「全国的に、どこの大学と一緒になるかという方法論ばかりが優先されているが、教育学部を再編統合することが前提ではない。質
的にいい学生を育てているか、国民の要請に応えているかという観点で、まずは個々の大学や学部ごとに、改善すべきところがないか
どうかを自己点検してみることが重要。学内の他学部から教官や入学定員を補充するなどし、パワーアップできるのならば、それも一
つの選択肢。学内だけでは完結しないということになれば、そこで初めて大学間の協議を探ることになる」

 「一般的な話だが、例えば教員養成課程の入学定員がそれぞれ200人という同規模の3つの大学間で協議する場合、教員養成をあきら
めて新しい方向を模索するC大からA大とB大に100人ずつ定員を割り振り、定員300人という一定規模に達した2つの担当校が並び立
つというようなケースもある。学生の定員は大きければいいというものではないが、一定以上の規模になれば、いろいろな意見がある
中で議論を交わし、切磋琢磨(せっさたくま)して人間的に成長できる。大学の都合や組織防衛ではなく、税金を負担している国民の
ために、子どもたちとしっかり向き合う質の高い教員を育てるという視点が欠かせない」

 「教員を計画養成している48の国立大で、どことどこが一緒になってほしいとか、そのうちいくつ残すということは想定していな
い。どういう組み合わせにしろ、いかにパワーアップが図られていくのかという点を重視したい。ただ、担当校は他県の教員養成を引
き受けるわけで、相当な責任を負うことを忘れないでほしい」

 ―南東北の3大学間で再編協議をしてほしいという文部科学省の指導があったのか。

 「北東北の3大学間で数年前、単位の互換や教官の交流を進める検討が始まった影響が多分にあり、東北の残る3県の枠組みで自発的
に再編協議がスタートした。報道を通して『大変なことになっているな』と感じており、国として余計な口を挟むのは差し控えたい。
ただ、6月に高橋(和雄)知事から要望を受けた岸田(文雄)副大臣が地域との十分な議論の必要性を強調したことを受け、大学側に
同様の内容を伝えてある」

 「国立大の歴史を振り返ると、都道府県の枠を超えた統合や移転は、都内3カ所に分散していた旧東京教育大のキャンパスを統合
し、1973(昭和48)年に筑波大が誕生した例しかない。かつてない大転換期で、時間がかかるのは当然。けがの功名と言えば語弊があ
るかもしれないが、山形県と山形大との間で、じっくり話し合おうという機運が高まった。すぐに結論を出そうと拙速になることな
く、よく議論してほしい」

 ―山形大教育学部は5月の教授会で、近年の教員就職率が低迷していることを主な理由に、教員の計画養成を断念した。担当校を決
める際は、やはり学生の教員就職率が最も重視されるのか。

 「教員の定年退職者が極端に多い時期を迎えているかどうかなど、学生を受け入れる都道府県の事情で就職率は大きく変動する。高
いにこしたことはないが、就職率だけを判断材料にするのは好ましくない」

 ―国立大は2004年度に独立行政法人に移行するが、教育学部の再編協議にタイムリミットはあるのか。

 「独立行政法人になるまでに教員養成課程の再編協議を済ませなければならないという誤解が一部にあるが、そうではない。『でき
るだけ早く』と言っているが、リミットは設けない。法人化の後、統合によるメリットを見いだせれば、それから協議を始めるという
こともあり得る」

 ―全国的にブロックごとの再編協議が難航しているようだが、最終的に文科省が再編の組み合わせや担当校について裁定を下す可能
性はあるか。

 「そのつもりはない。国立大が法人になる04年度以降は、大学の裁量が拡大する。その分、各大学がきちんと結果を出せるかどうか
今以上に問われることになる。現段階で協議が整ったのは教員養成課程と新課程を分け合った島根、鳥取両大間だけだが、推移を見守
りたい」

 ―山形大教育学部の存続を目指し、山形県が独自に新学部像の試案をまとめつつある。どう評価するか。

 「県と大学間の問題であり、コメントする立場にはない」
(聞き手は報道部・古頭哲)