独行法情報速報 |
No.19 |
目標・計画委員会8.7依頼文書/学内評価 |
2002.8.22 独立行政法人問題千葉大学情報分析センター事務局
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Club/9154/
文科省のやり方は法治国家の原則に反する
【開示1】第154回国会 文部科学委員会(8月7日)議事録より
○石井(郁)委員 法治国家で、行政権の活動といえども、国会の制定する法律に服すること、要求されているのではありませんか。法律ができていない、制定もされていないのに、文科省が既定事実のように事をどんどん進める、しかも大学に押しつける。あなた方は大学は自主的にやっていますと言いますが、決してそんなことはありません。それは、文科省の話をよく聞きながらというか、もう聞かざるを得ない状況の中で進めているわけでしょう。
○工藤政府参考人(文科省高等教育局長) 私の発言をもとにして、大分御心配、混乱させまして、まことに申しわけないんですが、(中略)先生にこれ以上御心配をおかけすることのないよう、私ども、言葉遣いや応対等も含めて、注意しながら進めてまいりたいと思います。(http://ac-net.org/dgh/kokkai/02/807-shu-monbu-ishii.html)
目標・計画委員会8.7依頼文書は全面的に再検討すべきである
独法化に伴う最大の問題の1つが、文科相による中期目標・中期計画の認可である。にもかかわらず、ほとんどの大学でこの中期目標・中期計画案作成作業が、あたかも“進めざるを得ない”かのような状況になっていることの不当性は【開示1】のとおり、文科省も認めざるを得ないのである。このような状況下でも、いかにして大学の自主性と独自性を貫き、意味のある議論をおこなうのか、大学執行部の見識と力量が問われている。
千葉大学では、大学法人化検討ワーキンググループ目標・評価委員会は五十嵐委員長名で8月7日「大学法人化における中期目標・中期計画について(依頼)」という文書(8.7依頼文書)を、各部局長、各センター長に送付し、「「別紙2記入様式」(【開示1】参照:引用者)により中期目標・中期計画の原案を作成」し、「9月6日(金)までに企画広報室企画係あて電子メールで返信」することを要請した。同文書によると、提出された「原案に基づいて中期目標・中期計画を作成」したものを素案として将来計画検討委員会の審議にかけるという。しかし、この要請には重大な問題点がある。
第1に、目標・評価委員会は5つのWGの一つである。このような全学的要請行動を行うにあたっては、5WG間の協議を行い、将来計画検討委員会の了承を得て行うのが筋である。このようなプロセスを経ていないために、他のWGが検討しているはずの諸項目を一方的にただ羅列している箇所が随所に存在し、部局やセンターを困惑させている。
第2に、8.7文書は部局レベルから見れば予告なく発せられ、しかも締め切り日の明確な根拠も示されないまま9月6日までの回答が強要されている。このような計画があるのなら、なぜ五十嵐委員長は7月12日付回答(本「速報」18号【開示4】参照)にその旨表明しなかったのか。これでは部局、センターレベルでの民主的議論を保証することはできない。
第3に、内容に至っては、独自に体系的な目標・計画を作りあげるにはほど遠いものと言わざるを得ない。以下、開示と分析を行う。
【開示2】目標・評価委員会の中期目標・計画の素案(配布された依頼文の要点)
『別紙1 中期目標・中期計画(WG基礎資料)02.7.31』
平成14年7月18日開催の評議会で承認された「千葉大学の将来構想U――大学改革の方向性」中のB将来計画部分から中期計画・中期目標の記載事項例に該当すると思われる事項を抜粋し、本委員会で作成した中期目標(案)に沿って分類したものです。
『別紙2 中期目標・中期計画 記入様式』
別紙1を参考に各部局・センター等で原案を記入する様式であり、記入した本様式を返送してください。/記入要領 (1)各部局・センター等においては、別紙1の中期計画を参考にして中期計画を作成くださるようお願いします。
【分析1】別紙1・別紙2は、ワークシートとして使えないほど記載項目未整理
東大や京大で作成されている中期目標・計画の記載事項例と対比してみると、別紙1・2の記載事項例は、必要な記載事項が欠けていたり、中期目標としては不適切なものが上げられたりという、フォーマットとしての条件を満たしていないもので未整理との批判を免れない。
(1)別紙1・2の中期目標記載事項例は、「将来構想U」からの学長私案部分も含めた恣意的選択・配置であるばかりでなく、それ以外の部分を文部省調査検討会議の「記載事項例」からの選択・配置でおぎなったものである。しかも、別紙1では、将来構想Uは○、文部省調査検討会議は◎というように出所が明示されていたのが、部局に記入がもとめられている別紙2ではその区分もなくなり、文部省調査検討会議の「記載事項例」が堂々と千葉大学の中期目標を規定する仕組になっている。かくて、千葉大学としての理念・長期的目標からする体系性・独自性をもったものにはほど遠い構造となっているのである。
(2)作成された中期目標・中期計画は、いやがおうにも大学評価・学位授与機構および大学評価委員会による達成度評価の基準とされることが想定される。従って、中期目標・中期計画にかかわる以上、大学評価・学位授与機構の「評価実施手引書」の項目を十分意識した上でその問題点を回避するスタンスが必要である。別紙1・2ではそのような見地は全く見受けられず、未整理な項目の羅列のみである。
(3)中期目標・計画の記載例でとりわけ眼につく問題点を例示すると
1.「2.大学全体としての基本的な目標」の記載事項例は、中期計画の目標というより、長期目標としての性格のものではないのか。6年間の中期目標として適切か。
2.「大学院指向型の学部教育への変革を実施する」という目標を掲げているだけで、学部教育、普遍教育の目標・内容があげられていない。
3.研究に関する目標に、「医療分野を基礎とした文理融合型学際的研究の推進を図る」としているが、「医療分野を基礎とした」というのは、どこで確認されたものであるか。「将来構想U」にもこうした記述はない。
4.研究の質の向上のためのシステムに関する目標に、「新しい教員システムを構築することを目指す」としているが、「将来構想U」で明記されているように「学長私案」であり、検討中の事項である。検討中の事項が、どうして目標になるのか。
5.業務運営の改善及び効率化に関する目標であげられている中期目標記載例は、ほとんどが、文部省調査検討会議の記載事項例そのままである。千葉大学としての固有の大学運営のあり方の検討が必要だから、ワーキンググループの組織業務委員会、人事制度委員会が作られたのではないのか。これらの委員会は文部省の記載事項例をそのまま千葉大の目標にすることを了解したのか。これらはワーキンググループの統一見解か。
6.社会貢献に関する中期計画記載事項例の、教)に「教育の未発達な国や地域との交流を進め、その教員養成を支援する」とあるが、「教育の未発達な国や地域」とは、何を想定しているのか。学校制度の未整備な国や地域は存在するかも知れないが、ある国や地域に対して「教育の未発達な」などと規定してよいのか。この文言は、『千葉大学の将来構想U』にもあるが、これを承認した評議会の見識が疑われる。
(4)別紙1・2は項目の整理からやり直さねば、部局が記入できるワークシートにならないと考えられるが、最低でも次の事項の補充・削除が必要である。
1.「教育に関する目標」――この記載例は組織についての目標で、大学全体としての教育目標が欠けている。@普遍教育の目標、A学部教育の目標、B大学院教育の目標についての内容、育成する人材の性格を書かねば、教育目標の策定にならない。
2.教育内容及び教育方法に関する目標――学部におけるカリキュラム編成と授業内容、大学院におけるカリキュラムと授業内容、に整理しないと評価に対応できる形にならない。
3.教育成果に関する目標――東大、京大の記載例では、このような評価になじまないあいまいな項目はない。削除すべきである。
4.研究に関する目標の、1)大学全体としての目標―――東大にはこういう項目はない。京大は、「部局等全体としての研究目標」で、重点的に取り組む研究の計画と研究体制及び研究支援体制の基本方針を中期計画としてあげている。あえて項目としてあげるなら、記載例の最初の「生命科学分野、自然科学分野、社会文化科学分野を世界最高の研究水準にする」を「生命科学分野、自然科学分野、社会文化科学分野で世界レベルの研究水準をめざす」と修正し、これをあげるのみであろう。その他の記載例項目は、「研究体制及び研究支援体制に関する目標」の部分に関わるものである。
5.研究に関する目標の、3)研究成果に関する目標――これは、研究内容及び水準の質的向上に関する目標・計画にすべき。その小項目として、「多様な研究内容と水準の質的向上に関する目標・計画」と「特色ある研究内容と水準の質的向上に関する目標・計画」を掲げるべきものである。
6.「新しい教員システムの構築」は、「学長私案」にすぎないものという問題点をおいても、4)研究の質の向上のためのシステムに関する目標・計画にはなじまない項目である。
7.業務運営の改善及び効率化に関する目標・計画の(1)運営体制の改善に関する目標は、評議会で、@学長のリーダーシップ機能の整備、A学長補佐体制の充実(役員会の機能)、B評議会・運営協議会・部局長会議・各種委員会等の機能整備と効率的運営体制、C学長選任方法の基本点の、検討・結論を得てでなければ、原案であっても作成の意味がない。また(2)教育研究組織の見直しに関する目標・計画は、重複しており、この部分に入る問題ではない。(3)教職員の人事の適正化に関する目標・計画も、まず、学長・役員・部局長・教員(教授・助教授・講師・助手)・事務職員の役割と職務を明確に規定し、システム構築を検討することが先決問題で、それぬきに、瑣末な項目を目標にかかげるべきではない。
【開示3】東大の中期目標・計画の記載事項例の観点
基本的な中期目標 /長期目標を前提として、基本的な目標や重点的に取り組むべき事項などを掲げた中期目標を設定/(備考)各部局の内容は中期計画の中で記載するとされているが、教学の企画立案と実施機能は不可分であることから、各部局に固有の基本的な目標と一体的に検討する。/V教育研究等の質の向上に関する目標・計画/(備考)大学評価・学位授与機構は、各大学の自己点検・評価に基づき、主として教育研究について専門的観点から評価を実施
【開示4】京大の中期目標・計画の記載事項例の観点
(0)〜(5)を付した事項例は、大学評価・学位授与機構及び大学評価委員会による達成度評価の対象となることが一般的に想定できる評価項目であり、これらの項目ごとに大学としての中期目標を設定する。/教学の企画立案と実施機能は不可分であることから(中略)各部局等に固有の基本的な目標と一体的に検討する/(中期計画は)運営交付金等についての予算を要求する際の基礎となる/(0)〜(5)の事項例のうち、各部局等に該当する事項について具体的な中期目標を設定する。/部局等においては、それぞれの設置目的や基本的な目標に関連する事項を適宜選択して、それらの中期計画を作成すればよい。
【分析2】東大、京大の中期目標・計画の記載事項例の特徴
いずれも、記載事項例は、調査検討会議の最終報告の構成の中に、大学評価・学位授与機構の「評価実施手引書」の項目編成を組み込んで、記載事項例の配列編成をしている。また、大学の中期目標・計画の策定にあたり、各部局の固有の基本的な目標と一体的に検討する方針をとって、ボトムアップをはかっている。その際、東大は、中期目標の事項例として内容に立ち入らずに、事項のみを例としてあげ、それらすべてを部局が具体化して、目標・計画として提出することを求める方式をとっている。これに対し京大は、中期目標の記載事項例を内容的なものに具体化してあげているが、それらすべてに対応して部局が目標・計画を作成するのではなく、関連する事項を選択する方式を採用している。
【提言1】、
1.目標・評価WGから出された「別紙2 中期目標・中期計画 記入様式」に従った中期目標・中期計画の原案づくりは、上記分析にもあるように、千葉大学に相応しい固有の目標・計画を体系的に作り上げる上で障害となるので、止めるべきである。文部省調査検討会議の「記載事項例」中の項目については議論さえおこなわれていないので、削除すべきである。
2.目標・評価委員会は、上記の分析も一つの参考にしながら、「別紙1・2」の全面的な再検討を行なうべきである。
3.別紙2について、各部局、各センターは、“このような未整理で非体系的なワークシートへの回答は不可能”という対処も当然ありうるが、何らかの文書を提出する場合でも、
1)不適切な項目に対しては、理由明記の上、削除を求める
2)検討が終了しない項目に対してはその旨表明する
その上で、WGからの設問に“穴埋め”する形式ではなく、目標・計画に掲げるべき項目群を体系的に提案すべきである。
4.目標・評価WGを含めて5つのWGの活動は、現在の厳しい情勢を主導的に切り開く上で相応しいものとは到底いえない。この際、5WGを改組し、全学の英知を結集する態勢を早急に作るべきである。
【開示5】平成14年度学内評価の実施要項提示される
山口学内評価委員長は、7月31日、「平成
1.評価項目
・H13年度ではア)教育活動等、イ)研究活動等、ウ)管理運営等、エ)社会的・国際的貢献等が、H14年度ではア)、イ)に絞られた。
2.ア)教育活動等
・13評価項目は全て同じ。
・項目5(成績評価方法の改善)、項目8(教育方法の改善)、項目9(ファカルテイデベロップメント)において、H13年度では学部でまとめて記載していたものを、H14年度では
各学科・専攻等別に記載することになった。
3.イ)研究活動等
・項目数は8項目から7項目になった。
・H13年度項目15(科学研究費補助金の新規申請件数)と16(科学研究費補助金の採択数)が一緒になって、項目15(科学研究費補助金の申請、採択等の状況)となったため。
・H13年度項目18(定員外研究者の導入)がH14年度項目17(非常勤研究者の雇用)に変更。記載事項は変更なし。
・H13年度項目19(研究成果の客観的評価)がH14年度項目(学協会等からの受賞者数)に変更。記載事項は変更なし。
【提言2】“評価のための評価”は行うべきではない
昨年の評価結果について殆ど検討も行われないまま、本質的な変更はない評価(ただし、研究成果の評価を学協会等からの受賞者数に限定したのは問題である)を今年度もただただ行なうことにいったいどういう意味があるのか。こういう学内評価を毎年行うことは“評価のための評価”を行うだけであって、かえって評価に対するアパシーを生み出す。今からでもこうした学内評価はやめるべきである。