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独行法反対首都圏ネットワーク

岐阜大学の未来を考える全構成員に訴えま
 .  [reform:04224] 岐阜大学で緊急アピールを出しました
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独立行政法人化の中期目標策定やトップ30などの関係で、全国各大学でもそれをさまざまに先取りした「改革」が行われています。岐阜大学でも、現在5学部(教育・農学・工学・医学・地域科学)に対し、農学部の改組を前提とした「応用生命学部」構想、それとつらなって「生命科学」特化を目玉とするような「岐阜大学改革(案)」が出されています。それが7月18日の評議会で決定される可能性がある中、教職員組合主催で緊急集会を開き、そこで集会アピールを採択しました。地方国立大学でのひとつの動きとして、ご紹介させていただきます。

 

 

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緊急アピール :岐阜大学の未来を考える全構成員に訴えます

地域の暮らしと産業・教育に根ざした総合大学としての岐阜大学を作ろう!

…「生命科学」特化では岐阜大学改革の展望が開けない

 

T:岐阜大学の将来を決定する改革構想案を、全構成員の議論にかけるべきである

 

現在、文部科学省の「遠山プラン」に対する岐阜大学の回答としての「黒木私案」やその延長線上にある「岐阜大学改革案」についての検討が、学内で急速に進められている。また、法人化に向けての「中期目標」「中期計画」の策定が今秋を目標に進められている今はまさに、近未来における岐阜大学構想を決めるという重要な時期にあたっている。それにもかかわらず、それを考える際の情報が全構成員に十分に発信されていないのが現状である。当然、学内における議論も不十分であり、そういった中での不透明感、閉塞感が強くなり、多くの構成員において、これからの岐阜大学はこれでいいのかという不安と危惧が日に日に大きくなっている。

 

U:「生命科学」特化は未来をきりひらくのか

…学長のトップダウン方式は、構成員の改革への活力を奪う

 

 「岐阜大学改革案」の中身で、他大学に関係する学部再編をのぞけば、最大の提案は農学部を改組して「応用生命科学部」(仮称)を設置することが挙げられる。この改組については、大きく2つの問題点が指摘される。

 一つは、当該学部の意向を十分ふまえない構想が、学長のトップダウン方式で決められようとしていることである。昨年より農学部の将来のあり方に関しては、当該学部内で活発で真剣な議論がなされてきているが、学長はそれらの意見を聴取しながらも、まずは「応用生命科学部」の設置ありきでことを進めようとしている。その結果、この学部再編について農学部内でも意見がわかれ、また「移籍対象」となっている工学部生命工学科教官も、移籍自身には賛成の意向ではないことが学長との懇談で出されている。改組は、あくまで岐阜大学のいっそうの活性化に導くからこそなされるものでなければならないのは当然であろう。そしてそれは、構成員の意思が十分に反映されてこそ実現されるはずである。ところが現在の進め方は、各構成員が岐阜大学の将来をそれぞれの立場から真剣に議論すること自体を排除し、活力を奪う方向で行なわれようとしている。ましてや、この新設学部を優先することが既設学部の教職員・学生の十分な合意なきまま行われれば、多くの矛盾を生み出すこととなり、それは決して大学の活性化に導くものとはなりえない。

 

V:国の方針に追従し、地域軽視の「生命科学」特化型大学をめざすのか

  vs 地域の暮らしと産業・教育に根ざした総合大学を目指すのか?

 

 黒木学長は「中期目標」において、「中部地方に拠点を置いた中規模総合大学」をうたっている。岐阜大学は、4つのそれぞれ異なる独自の歴史を持った4つの学部が統合され、それに新たに文理融合をうたった地域科学部が新設されたいわば「複合大学」と位置づけられる。その際、学部の数あわせとしての総合大学化にとどまらず、それぞれの分野の研究・教育の総合化なども含んだ深い意味での総合大学をめざすべきであろう。しかし、「応用生命科学部」にくわえて、「生命科学総合実験研究センター」(仮称)設置構想案や、将来の岐阜薬科大学との合併案を含めて考えれば、そこには、岐阜大学を生命科学に特化した大学としての生き残りを図る意図が明らかに感じられる。生命科学が21世紀を担う重要な分野であることに異論をはさむわけではない。しかし、それに特化することは、現在のスクラップ・アンド・ビルトを前提とした「構造改革」路線の中では、やがては生命科学以外の分野の切り捨てへと導くことにつながることは十分予想される。そしてそれは、上に述べた「総合大学」構想とは明らかに矛盾するのではないだろうか。

 また現在、「生命科学」関係に予算の重点化を図ろうとしている国の政策を受けて、「生命科学」の看板をかかげる学部・大学院を持つ大学は全国にいくつも存在している。そういった中で「生命科学」に特化することで岐阜大学の「個性」と「存在意義」を打ち出すことは、果たして20年、30年後の大学像を描いた場合、有効な方策となるのであろうか。岐阜県は、地理的にも全国の中心に位置し、その面積の広さと相俟って多様な産業・暮らしが存在することを特色とする地である。工業関係をとっても、窯業から木工、繊維、製紙など非常に多くの種類の地場産業を持っている。海における漁業をのぞけば、農林水産業も多種多様なものがある。人口に比して広大な面積を持つため、教育・福祉ではまさに、それぞれの地域に密着したシステムの構築が緊急の課題となっている。それぞれの領域で地域に根ざした産業・暮らしがあり、そこに大学自身が足を踏み出しそこから学びそしてそれに貢献できるような大学を作ることが、本当の「存在意義」を打ち出すことになるのではないだろうか。そしてこのことは、地域に有能な人材を供給する大学教育の一層の充実(学びがいのある大学)をめざすことにもつながるはずである。将来的な分権社会への移行を踏まえ、いたずらに「世界水準」をめざしてn域から乖離するのでなく、地域社会に根ざし、地域との連携に立って情報を発信していくセンターとしての地方国立大学が、今後ますます重要性を増すことが予想される。その際、既存の諸学問の成果を踏まえた上で、諸学問領域を横断する多様なアプローチから地域の諸問題を分析することを通じて、新しい学問(研究・教育)の創造を目指すことが求められている。今こそ、文部科学省に「目新しさ」・「先進性」をきそう改革ではなく、地域にひらかれた活力のある岐阜大学をめざして、地に足のついた議論をじっくりしてゆくことが必要なのではないだろうか。ぜひ、この機会に全構成員が、岐阜大学の将来を共に考えることを訴える。

   2002年7月12日 岐阜大学教職員組合・学長交渉報告緊急集会