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独行法反対首都圏ネットワーク

☆福島大の近未来像が心配だ
 .  [he-forum 4212] 福島民報論説07/01
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『福島民報』論説  2002年7月1日付

福島大の近未来像が心配だ


 今年の3月から6月末にかけて福島大の学部、学科の再編問題は目まぐるし
い動きがあったが、ここにきて県民や地域にとってあまり喜べない情勢が明ら
かになりつつあるようだ。大学当局が描いた近未来像は、福島大を含む全国の
国立大学が2年後に独立行政法人に移行することを前提に、現在の経済、行政
社会、教育の3学部制を「学群・学類方式」に再編し、新たに長年の懸案だっ
た自然科学(理工)系の学群を開設しようという内容だ。再編と合わせて文部
科学省が打ち出した教員養成課程の統合の方針にも対応し、教育学部の教員養
成課程の存続は断念するが、学生の教員資格取得の道は残し、福島市内にある
付属小、中、養護の各校も現在のまま存続させたいというものである。

 しかし学群・学類方式への移行には国立学校設置法の改正手続きが必要で、
文部科学省が難色を示しているという。国立大では唯一、筑波大で採用してお
り、学部・学科に相当はするものの研究テーマの分け方や学内の運営はかなり
ユニークなものとなる。現在は来年度の国の予算編成作業が進む中で文部科学
省の判断待ちという状況になっているが、これまで伝えられた一連の動きを見
ると、大学側の構想通りに予算が付くかどうかは微妙な情勢のようで、もし見
送りとでもいうことになれば、地元としては「話が違う」と声をあげたいとこ
ろだ。

 福島大は長く経済と教育(学芸)の2学部の時代が続き、キャンパスも旧市
内に分散していたが、大学の努力と県民あげての学部増設運動などが実を結ん
で、現在地への移転と行政社会学部の開設が実現した。学部増設の動きはその
後も自然科学系に絞って続けられており、去る6月17日に開かれた「学部増
設期成同盟会」の今年度総会では組織の名称を「学部(学群)創設期成同盟会」
と変更し、大学側がもくろんでいる再編計画が実現するように支援や文部科学
省への要望活動を展開することを決めた。

 同盟会は佐藤知事が会長を務め、県内各団体などで構成している学部増設の
ための応援団。名称の変更は現行の学部・学科制から学群・学類制に全学を再
編し、その中で自然科学系学群を設けようという大学側の意図に対応した措置
である。

 独立行政法人化への対応と自然科学系の増設に加えて福島大が抱えるもうひ
とつの大きな問題は全国規模で進められる教員養成課程の再編統合である。既
報の通り宮城教育大、山形大との統合協議で福島大はいち早く、教員養成を担
う担当校を降りることを表明したが、これは文部科学省と協議を進める学群・
学類再編構想の中で「欲張り過ぎ」になることを避けたためだ。それなのにそ
の構想自体が本省から「難しい」とされては立つ瀬がない。

 今後、国の予算作りの過程で教員養成課程は廃止になり、自然科学系の開設
は見送りというような事態になれば、将来の福島大の魅力はかなり割り引かれ
ることにもつながりかねない。県も7月から始まる15年度政府予算対策活動
の中に「福島大の自然科学系学群の平成16年度創設」の特別要望を盛り込ん
だが、いずれにしても危機感の中で今後の動きを注視したい。(渡辺 智衛)