☆新大学院大学・さらに機運を高めよう
. [he-forum 4208] 琉球新報社説06/30
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『琉球新報』社説 2002年6月30日付
新大学院大学・さらに機運を高めよう
沖縄新大学院大学の設置に向けて、尾身幸次沖縄担当相は、来年一月の通常
国会に新法案を提出するという。新法制定まで含めた動きが出たことで、大学
院大学構想は、夢から現実に、またひとつ歩を進めた。
新法は人材確保の観点から「既存の大学法では対応できない」(尾身沖縄相)
として、外国人の入国・来沖、居住をスムーズに行えるようにするための法案
が想定されているという。国際的な知的クラスター(集積)を目指す新大学院
構想だけに、人材確保には不可欠な対応だ。
なにしろ構想では最終的な大学院大学の規模は、教授陣二百人、補助スタッ
フ三百人、これに学生五百人の合計千人もの陣容になる。知的交流は、国際的
な人材の往来の頻度に支えられよう。出入国の規制緩和が進めば、交流に拍車
が掛かることにもなる。期待したい。
二十八日から二日間の日程で名護市の万国津梁館で開かれた沖縄新大学院大
学構想の第二回国際顧問会議には、ノーベル賞受賞者を含む二十人の国際的な
学者らが参加した。
会議では次回顧問会議(来年一月、米国)五百人規模の国際セミナー(来年
五月、万国津梁館)、大学院創立のための学術会議(アカデミック・コミッ
ティ)や若手研究者のワーキングチームの設立など、具体的なプログラムが決
定された。
研究者確保のため数千万円から数億円規模の「研究資金助成制度」の創設も
検討され「次年度予算の概算要求を」(尾身沖縄相)という。
着々と進んでいるように見えるが、いくつか懸念がある。まず開学の一年遅
れが決まったことだ。当初は二〇〇六年九月を予定していたが、「準備期間を
要する」(内閣府)として〇七年に遅らせた。研究体制づくりがたやすくない
ことは当初から見えていた。期待感を高めた上で、開学時期の延期は、県民会
議の立ち上げなどで高まったムードに水を差すものにならないか、心配だ。
最大の懸念は、財源問題だ。沖縄新大学院大学は建設費八百億円、年間運営
費二百億円という超巨大プロジェクトである。公設民営というが、いまのとこ
ろ、所管省庁は文部科学省になるのか、経済産業省などになるのか、内閣府が
抱えていくのか、位置づけがあいまいだ。当然、財源も確保されていない。巨
額の資金を一体だれが負担するのか。今後、この面での道筋も速やかに示して
ほしい。
尾身沖縄担当相の意気込みとは裏腹に、県内の反応もいまひとつの感が強い。
県民会議の立ち上げも、構想表明から一年余を経て来月十五日、ようやくの発
足だ。創設に向けて、機運を高めていくよう、さらに主体的に取り組むべきだ。