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新教育の森 第四部 競争再考 大学大変 6    都立大、知事主導で統合/「非効率」の公立大も危機感
 .   [he-forum 4175] 毎日新聞06/24
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『毎日新聞』2002年6月24日付

新教育の森 第四部 競争再考 大学大変 6

都立大、知事主導で統合/「非効率」の公立大も危機感


 組織を効率化し、経費を減らす。国立大改革のルーツは行政改革である。

 しかし、台所事情が苦しいのは国だけではない。自治体が設置した公立大も、
行革を迫られている。

 東京都では都立大(八王子市)など四つの大学、短大が05年度をめどに法人化
され、一つの大学になる。

 都立大工学部と都立科学技術大は新大学の工学部になり、都立保健科学大は
保健科学部に改組する。夜間部と都立短大は廃止され、教員の定員も大幅に減
る。

 再編統合は、石原慎太郎知事のツルの一声で決まった。

 「4大学を統合し、ほかの大学がびっくりするような理想の大学を作りたい」

 00年2月、教育改革をテーマにしたシンポジウムで、知事は突然「大学改革」
を打ち上げた。いつもの石原流で、事務方への相談は一切なかった。

 「都民の役に立たない研究はいらない」「大学なんか売り飛ばしてもいい」

 知事はその後も”不穏な”発言を続け、4月には知事室を訪れた都立大の荻
上紘一学長に厳しい言葉を浴びせた。

 「大学教師は研究ばかりやりたがって困る。そんなに研究をやりたけりゃ、
研究所へ行けばいいんだ」「大学教師に経営ができるわけないよな」

 都立大は49年、旧制都立高など6校を母体に設立された。ここ数年の科学研
究費補助金の採択件数は、650を超す大学の中で30位前後と好位置を保ち、研
究中心の大学として単独での生き残りを目指していた。

 しかし、昨年11月、都の出した結論は、「4大学統合による都民生活に役立
つ大学」。教職員は非公務員化し、経営を担当する法人の長と教育研究を担当
する学長を分ける。学長は大学側が選ぶが、法人の長は知事が外部の人を選任
する。

 「こちらの主張はほとんど通らなかった。地味な基礎研究がなければ、都民
に役立つ研究成果も出ない。それを理解できない人が法人の長になって、組織
や人員をカットしたらどうなることか」。荻上学長は新大学の行く末を危惧し
た。

 ほかの公立大も「明日はわが身」である。

 00年度末の地方自治体の借入金残高は181兆円と10年前の3倍近くに膨れ上がっ
た。公立大は全国に75校。学生数は平均約1500人と国立大のほぼ4分の1しかな
い。自治体が収支を度外視して作ったところも多く、経営効率は悪い。

 「大学の中で最も生き残れる見通しが暗い。予算を自治体が握っているため、
大学に経営の概念がない。職員も短期間に入れ替わるので専門職員が育たない。
学長の権限が小さく、首長に理解がないと改革も進められない」。

 県立宮城大の初代学長を務めた野田一夫・多摩大名誉学長は、自らの経験を
踏まえて警告する。

 公立大も手をこまねいているわけではない。公立大学協会は昨年11月、希望
する公立大学法人に移行できるよう法整備を国に要請した。

 「護送船団の中で、国立大に追随していればいい時代は終わった。法人化す
れば、他大学との統合や、私大の優秀な職員のヘッドハンティングもしやすく
なる」と児玉隆夫会長(大阪市立大学長)は言う。

 しかし、兵庫県はすでに神戸商科、姫路工業、県立看護の3大学の統合を決
めた。大阪府も府立3大学の再編を検討している。いずれも改革は「行政主導」
である。

 公立大の「自主改革」に残された時間は少ない。

文 横井信洋
=つづく

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