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独行法反対首都圏ネットワーク

☆島根医大支援 地域と共生を目指せ
 .  [he-forum 4174] 中国新聞社説06/23
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『中国新聞』社説  2002年6月23日付

島根医大支援 地域と共生を目指せ 


 出雲市が地域ぐるみで島根医科大を支援する。市と議会、商工会議所、いず
も農協の四者が「島根医科大支援協議会」を設立し、本年度から三年間、計三
千万円を提供し、研究や教育活動などに活用してもらう。

 国の施設を、地域が応援するのはあべこべのように見える。現に、地方財政
法では、市町村が国の費用を負担することは禁じられている。また、「地方自
治体や地域の支援を受けるのは、国立大の責任を放棄するもの」という批判も
ある。

 その壁は「島根医科大学教育研究振興財団」を通して間接的に支援する工夫
で克服した。文部科学省も市民が理解する範囲なら、と認めたのである。「地
方の時代」を追い風に、地域医療を担い、地域発展の核になる医大を地域で守
ろうという住民の熱意が動かした全国初の挑戦を注視したい。

 行財政改革の波は国立大学を洗っている。島根医大も来年十月には島根大と
の統合が予定され、独立行政法人化を迫られている。それが地域住民に、二十
七年前に誘致した医大が廃止になるのでは、という危機感を生んだ。廃止の可
能性は消えたが、そのショックは「物心で大学を支えよう」と地域を立ち上が
らせるバネになった。

 島根県は全国一の高齢県である。出雲市の高齢化率は約35%。無医地区の
山間地や島しょ部を抱える。その地域医療を医大付属病院に大きく頼っている。
一方で、市内に島根県立中央病院があり、市は経費のかかる市民病院を持たず
に済んでいる。そんな背景も地域を支援に向かわせた一因だ。

 医大は支援を生かす新研究プロジェクトをつくった。本年度は医療用の中型
測定機器の購入に充てる。地域へどんな貢献ができるかを話し合う「出雲市・
島根医大地域振興連絡協議会」も発足させてもいる。

 もちろん、年間一千万円の支援は医大の経費から見ると、十分な額とは言え
まい。しかし、医大は地域の思いの重さを受け止め、地域社会に何をするのか、
したのかを情報公開し、絶えず住民に働きかける責任を負う。

 地域の医大支援は三年間で片付く性格のものではない。むしろ、いかに継続
するかが難題だろう。現在の協議会では限界がある。農協や商工会議所が三年
を超えて負担するのは財政的に苦しいし、支援規模を拡大するのはもっと困難
に違いない。

 負担は広く、軽く分け合うのがいい。官民のほかに産業界の協力も取り付け
たい。高度医療の拠点を確保する視点に立てば、地域を出雲市や出雲部に限る
必要はない。全県的な県民運動に発展させるべきだろう。

 出雲の試みは地域と国立大との共生を模索する「新しい医大のあり方」のモ
デルになるはずだ。国立大を地域が支える時代なのである。