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独行法反対首都圏ネットワーク

[競争の時代に]    (4)山口大 法人化にらみ組織強化
 . [he-forum 4168] 朝日新聞山口版06/20 
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『朝日新聞』山口版  2002年6月20日付

[競争の時代に] 

(4)山口大 法人化にらみ組織強化
 
 
 「全国99の国立大すべてが生き残れるとは限らない。だが、これをチャン
スととらえ、あるべき姿を構築しよう」

 18日、山口大(本部・山口市)であった法人化準備委員会の初会合。副学
長や学部長ら約40人を前に、加藤紘学長が神妙な面持ちで語った。「競争」
への決意の表れだ。

 4月から準備事務本部と準備事務室を設け、専任職員を3人配置した。2年
後を見据え、会議と調整の日々が続く。

 ◇   ◇

 04年度、国立大の独立行政法人化が始まる。

 これまでは授業料などをいったん国庫に納め、文部科学省の特別会計から使
い道が決まった交付金を受け取っていた。

 今後は、交付金の使途は大学で決める。独自の服務規定や採用試験も始まり、
別法人への出資や借金もできる。給料や授業料も一定の範囲内で自由に決めら
れる。

 「法人化を見据えた組織強化」。5月に退任した広中平祐前学長が繰り返し
ていた言葉だ。

 総合大学として戦略的に経営するため、学部分配金以外に大学全体で3億円
をプールする「教育研究重点化経費」を00年に設けた。「学長をトップにし
た大学経営」を実現すべく、97年に学長裁量経費を設け、99年には3億円
に増強した。

 卒業生や地元財界から寄付金を募る「山口大学後援財団」、地域の産学官連
携を強化する「産学公連携・創業支援機構」も4月に発足させた。

 人事にも手をつけた。「終身雇用」していた助手を、今年から5〜6年の任
期制に。「キャリアも実績もない人を無条件に雇えない」のが理由で、講師や
助教授に昇格する道が無ければ、大学を離れる。

 ◆   ◆

 法人化で各大学は自由裁量が増える一方、外部の評価にもさらされることに
なる。

 とりわけ重要なのは「中期目標」だ。

 6年後までに何をするのか、大学が目標の原案を文科相に提出。それに基づ
いて文科相が定める。6年後に達成度を評価し、それを予算配分に反映させる。

 教育・研究、業務運営、財務内容、社会への説明責任など、大学経営に関係
するすべての事項で数値目標が求められる。交付金に直結するため今の作業が
「2010年」の大学を決めることになる。原案の締め切りは来年4月に迫る。

 01年度、山口大の歳入は197億1千万円。歳出は348億5千万円。国
の交付金が歳出の6割あれば運営できる計算だが、保障はない。

 国の予算総額は一定。大学間の競争激化は必至だ。先見性や独自性がないと
予算獲得が難しい。目標が高すぎて達成できないと交付金が減り、目標が低す
ぎても交付金は少なくなる。

 「金になる研究だけでなく、金がかかって地味だが大事な研究もある」「本
来、教育・研究は採算と無縁の世界のはずなのに」。大学のあちこちでぼやく
声が聞こえるが、あと9カ月で大学の「方向」が決まる。