☆どうなる教育学部−山形大の苦悩(下)
.[he-forum 4152] 山形新聞06/21
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『山形新聞』2002年6月21日付
どうなる教育学部−山形大の苦悩(下)
教育学部の存続を求めて、県内の4校長会が12日、高橋和雄知事に要望書を
提出した際、話題の中心は県独自の少人数学級編成事業「さんさんプラン」だっ
た。
木村康二県連合小学校長会長(山形四小校長)「4月に『さんさんプラン』
を導入したばかりなのに、教育学部がなくなるというのは理解できない。もう
10年もすると、定年退職者が2、300人に拡大し、教員の大量採用時代が到来す
る」
山川勇一県中学校長会長(山形一中校長)「小学校のすべての学年、さらに
将来は中学校で少人数学級を実施し、全国に先駆けて地域に密着した教育を進
めようという時にこういう事態に陥り、県民は大きな衝撃を受けている」
文部科学省や山形大に対し、高橋知事、県議会、県教育委員会、県市町村教
委協議会、各校長会、県教職員組合協議会が提出した意見書と要望書には、例
外なく「少人数学級」「さんさんプラン」の文字が盛り込まれた。
厳しい財政事情の中、多額の予算を投じてスタートした県の少人数学級編成
事業は、全国的に脚光を浴び、賞賛が広がった。「21世紀の教育史に、『高橋
和雄』という名前が確実に刻まれるだろう」と興奮する関係者もいた。
特別な事情がある場合に限り、学級編成の弾力化を認めている文部科学省は
当初、小学校全学年に導入しようとする山形県に強い不快感を示した。しかし、
最終的には粘り強い県教育庁側の説明、姿勢に押されて容認。現在では、モデ
ルケースとして先駆的な山形方式に関心を寄せている。
「授業の手法はどう変わるのか」「教材はこれまで通りでいいのか」「客観
的な評価は」―。新しい取り組みには、課題と悩みがつきまとう。現場の教師
は戸惑い、試行錯誤を繰り返しながら少人数化された学級で指導しているのが
実態だ。
文科省は本年度から2年間の予定で、国立教育政策研究所(東京都目黒区)
に少人数学級編成の調査を委託、本格的な検討を始めた。
県教育庁の幹部職員は「近い将来、少人数学級は国の施策になる。これは間
違いない」と強調する。さらに「全国的な注目を集める山形方式を先進的な事
例として研究し、その成果を全国の教育関係者共有の財産とするために、山形
大教育学部の存在は欠かせない。学部がなくなれば、支援基盤がなくなってし
まう」と嘆く。
山形大教育学部は付属4校園を抱える。将来を憂慮する保護者代表が先月20
日午後、教育学部に足を運んだ。あるPTA役員が述懐する。
「大学側は『120年を超す学部の歴史だけではどうにもなりません。おおか
た(国立大再編の)地図ができてますから、文科省に陳情しても無理でしょう』
とおっしゃった。驚いたというか、学部のことを真剣に考えているのかと開い
た口がふさがらなかった」
教育学部と付属はなくなってしまうのか。南東北3大学間の再編協議が進む
につれ、付属の子どもたちにも動揺が広がりつつある。
付属小の複式学級は、県内の山村の実態を踏まえて取り入れた。その成果は
県内各地の小規模校で脈々と受け継がれている。教育学部の小規模学校に対応
した教育はかつて、県の要望を受けて実現した。
県は教育学部と二人三脚で固有の課題を解決、いつしか「普及の山形」とし
て教育3県(山形、長野、福岡)に数えられるようになった。
県の少人数学級は緒についたばかり。本来ならば、山形大教育学部の頭脳集
団が県内各地の学校に赴き、現場の教師と議論を交わしていく時期なのかもし
れない。
(この企画は報道部・古頭哲が担当しました)