☆どうなる教育学部−山形大の苦悩(上)
. [he-forum 4141] 山形新聞06/20(2)
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『山形新聞』2002年6月20日付
どうなる教育学部−山形大の苦悩(上)
文部科学省の方針を受け、南東北の山形、宮城教育、福島3大学間で、教員
養成課程の再編協議が大詰めを迎えた。学長同士の話し合いは、少なくても表
向きには順調に進展していたが、山形大教育学部が先月21日の教授会で、教員
の計画養成を断念し、新学部移行を決定した後、県内各地から学部存続を求め
る要望書が押し寄せた。3県の教員養成機能は、やはり宮城教育大に集約され
てしまうのか。国と地元の板挟みに遭い、かつてないほどの苦悩が山形大を覆っ
ている。
18日夕。沈痛な空気に包まれた山形大教育学部の一室で、激しい意見が交わ
された。
「5月の前回教授会で、われわれは断腸の思いで新学部移行を決めた。それ
なのに、(19日の)評議会で大学としての決定を見送るとはどういうことだ」
「大学全体の将来ビジョンがまったく見えてこない。だから話が前に進まな
いんだ」
これまでたまっていた行き場のない怒りの矛先が、一斉に石島庸男学部長に
向いたようだった。
教育学部のある教官は「山大は以前から、国の言いなりになってきた傾向が
ある」と自戒を込めて振り返る。石島学部長はそうしたムードを嫌い、先頭に
立って発言してきたとされる。だが、昨年11月の石島学部長の就任以来、再編
に関する事柄が急激に進んだ。多くの教官は「これでは国から言われるがまま
ではないか」と感じ、学部長に不信感を抱くようになる。
この教官は「わずか半年で、あれよあれよと言う間に新学部移行を決定して
しまった」と残念そうに語る。これまで通りに教員を養成することをあきらめ
た5月の教授会以降、学部内は虚無感と脱力感に覆われている。
同じ18日の県議会。事態を重視し、県議会史上初めて開かれた全議員会議、
その後の本会議一般質問で、山形大に対する不満が相次いだ。
「先月17日に(高橋和雄知事らが大学と意見交換した)懇談会を開催してお
きながら、それから数日しか経過していない教授会で、教育学部は新学部移行
を承認した。これは到底、納得がいかない。白紙撤回を求めるべきだ」
「県民には何も知らされないまま、別の所でいろいろな決定がなされている。
まもなく独立行政法人になるのだから、地域の理解と協力を得ながら、一体と
なって生き抜いていかなければならないのではないか」
県教委は11日、仙道富士郎学長に対し要望書を提出し、教育学部の存続を強
く求めた。県市町村教委協議会、県連合小学校長会、県中学校長会、県高校長
会、県特殊教育諸学校長会が歩調をそろえた異例の行動で、代表者は切々と学
部の必要性を訴えた。
大学側は▽教員養成機能▽現職教員の研修・再教育▽付属学校―を3点セッ
トとして、それぞれ確約できる状況でなければ、大学としての意思を最終決定
することはできないと説明した。
各校長会は翌12日、高橋知事にも要望書を提出した。知事は一貫して教育学
部の必要性と優位性を主張してきており、この日も「石島先生(教育学部長)
が権威者であれば、小中高、さらに特殊教育で頑張っている先生方が実学的な
ところをPRして、石島先生を寄り倒さなくてはならない」と語り、珍しく強
いトーンで激励した。
席上、知事は大学が持ち出した3点セットについて言及し「防衛の理屈で、
教育学部を維持していく理由としては説得力に欠ける」と突き放した。
ここまで話がこじれる理由は、国と地方の論理が鋭く対立しているからにほ
かならない。少子化に伴う「大学冬の時代」の到来で、文部科学省は国立大を
国の直轄から切り離す独立行政法人化、さらに近隣県の教員養成系大・学部の
統合を急速に進めようとしている。
これに対し、教育県を自負する山形の関係者は教育学部の廃止で、特に義務
教育に重大な支障が出ると懸念している。