トップへ戻る   東職HPへ戻る
独行法反対首都圏ネットワーク

☆COEプログラム 資金の集中投下に賛否も
 . [he-forum 4114] 熊本日日新聞社説06/17
--------------------------------------------------------------

『熊本日日新聞』社説  2002年6月17日付

 COEプログラム 資金の集中投下に賛否も


 文部科学省は、来年度から実施予定の「21世紀COEプログラム」の募集
を始めた。全国の公私立大学が対象。COEはセンター・オブ・エクセレンス
の略語で「卓越した研究拠点」という意味である。

 人文社会科学から自然科学までの学問を十分野程度に分け、各分野から二十
カ所程度の先進的な大学院レベルの研究に対し、一件あたり年間一〜五億円を、
通算で五年程度にわたり交付する。選定や評価は専門家で構成する第三者委員
会が行う。

 この制度は「トップ30大学」という仮称で計画された経緯がある。このた
め、選ばれると「一流大学」の評価を受けるという理解が広まっており、全国
の大学には「交付を受けたい」という希望と共に「大学のランク付けを強める」
「研究面での成果主義が教育への取り組みをおろそかにする」という反発もあ
る。教養教育の充実で知られる国際基督教大学は応募を見送るという。

 COEが実施される背景には、先端科学を中心に国際的な競争が激化してお
り、また一方で国の財政難で研究費が不足している現実がある。将来性のある
研究に対して集中的に資金を使おうというものだ。

 同様の事情を抱える韓国では、すでに「ブレインコリア21(頭脳韓国21
世紀計画)」という研究支援プログラムを実施、国家が認める研究には資金や
人事面での優遇措置を与えている。また、シンガポールでは外国の研究グルー
プを呼び寄せて研究システムや資金を提供している。国立分子細胞生物学研究
所の研究者二百二十人のうち約八割は外国人という。

 そこに京都大学ウイルス研究所の元教授、助手、大学院生など十人が「集団
移籍」することを決めたという。研究環境の高さを評価しての選択である。日
本は科学研究の分野でも「空洞化」するのか、という意味で注目も集めている。

 こうした事情からも、COEの対象となる研究は医学、理学、工学などの理
系分野が多くなる見込み。その多くは国立大学大学院になるようだ。理系の研
究分野は国立大学が受け持っている割合が高いからだ。このため、私立大学な
どには「COEは国立の理系大学院に資金を重点投入するための後付けの方便
にすぎない」という批判もある。

 地元の熊本大学大学院からも対象となる研究が出る可能性がある。今後は、
理系を中心に、大学生が大学院まで進もうとする動きはさらに高まると思われ
る。二〇〇一年の学校基本調査によると、大学在籍者二百六十五万五千人のう
ち大学院の在籍者は二十一万六千人。大学入学者は漸減傾向にあるが、二〇一
〇年までには大学院入学者が倍増するとみられている。

 また、COEの交付が多くなると見られる東京大や京都大などの有名大学は、
大学院を重点とする「大学院大学」となり、高校からの進学はできない仕組み
になるのではという予測も出ている。

 一九九五年に総務庁が行った「子どもと家族に関する国際比較調査」にも興
味深いデータがある。「親は子どもにどの程度の学歴をつけさせたいか」とい
う設問に対し、四年制大学は日本五四%、韓国三九%であるものの、大学院は
日本一%、韓国三九%と極端な差が出た。韓国の親の方が「大学院時代」の到
来を一足早く予見していたようだし、新たな進学競争の過熱も招いている。

 COEは大学改革の動きを強めるのは間違いない。「英才教育」の是非も含
めて高校までの教育内容に与える影響も大きいと思われる。