☆トップ30大学募集へ 文科省
. [he-forum 4093] 福島民報06/09
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『福島民報』 2002年6月9日付
トップ30大学募集へ 文科省
看板かけ競争し烈
地方国立大など 冷めた見方
世界最高水準の教育研究を対象に、大学に重点的に予算を配分する文部科学
省の「二十一世紀COEプログラム(旧称トップ30大学構想)」の審査要項が決
まり、今月中旬にも文科省から各大学に募集要項が通知される。これに伴い、
各大学は看板をかけて準備を本格化させているが、構想そのものを冷ややかに
見る向きもある。
今月六日、仙台市の東北大キャンパス。金属材料、多元物質科学の研究所や
工学部大学院など専門分野の異なる若手教授らが議論を戦わせていた。
東北大は「異分野の研究者が組織的に連携する必要がある」として、研究科
や専攻の垣根を超えた取り組みを「スーパー大学院」と位置付け、申請に向け
た取り組みを始動させている。
「し烈な競争になる」とみるのは、福井大の児嶋真平学長。昨年十一月、
「重点研究企画推進委員会」を設置し、学内選考を重ねてきた。「うちは小さ
い大学だが工学部のレーザーなどレベルの高い研究がある。申請しないと士気
が上がらない。将来性も評価されるので枠に入る可能性はある」と鼻息が荒い。
私立大の動きも活発だ。慶応大の稲崎一郎理工学部長は「理系にとって年間
一億−五億円はそれほど大きいわけではないが、金額以上に評価されることに
意味がある。慶応といて『出す以上は取る』という空気が学内にある」と話す。
一方、他大学を圧倒する額の科学研究費補助金を文科省から交付され、研究
環境として有利な立場にある東京大。大学関係者の間には「結局は東大の一人
勝ちではないかとの見方もある中、東大の工学部教授は「入るかどうかは文科
省のニーズと、こちらの研究が合っているかどうかだけの話。落ちたからと言っ
て研究レベルが低いわけではない。淡々とやればいい」と余裕の表情だ。
しかし「COEに入るのが、多くても少なくてもたたかれる」と有利な立場な
りの悩みも。
各大学がCOE入りを目指す一方、教養教育の充実ぶりで定評のある国際基督
教大の絹川正吉学長は「申請しなくてもいいと思っている」と冷めた目で見る。
「大学は研究よりもっと教育に力を入れるべきだという流れだった。教育をす
ればいい人材が出てくる」と大学の教育機能を軽視する動きを不安視する。
国立大の法人化に反対してきた鹿児島大の田中弘允学長も、同プログラムに
対して「産業に応用できる見栄えのいい研究だけが取り上げられ、地道な研究
分野は冷遇される」と批判的だ。
「人文社会系の分野で、応募対象の大学院博士課程を設置している国立大は
旧帝大ぐらいしかない。地方国立大は土俵にも上がれない」と不満を募らせる。
21世紀COEプログラム
大学間の競争を通じ世界レベルの教育研究拠点づくりを目指す。背景に日本の
大学に国際的な研究者が集まらず、逆に優秀な人材が海外に流出している現状
への危機感がある。昨年6月、遠山敦子文科相が「トップ30大学構想」として
打ち出したが「大学のランク付けだ」との批判に名称を変更。大学院博士課程
の研究科など10分野でそれぞれ20カ所程度を指定。来年度から年間1億−5億円
を5年間交付する。