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☆衆議院文部科学委員会5/29法人化問題質疑
 .[he-forum 4084] 衆議院文部科学委員会5/29法人化問題質疑 
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衆議院文部科学委員会議録第 12 号  平成14年5月29日(水曜日)
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/009615420020529012.htm

(抜粋)

○石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。

私、本日も、まず国立大学の法人化問題について御質問をさせていただきます。

去る四月五日の本委員会において、この問題について、私は、三月二十六日に
新しい「国立大学法人」像についてという調査検討会議の報告書がございまし
て、それをお尋ねしたわけですけれども、次のような大臣の御答弁がありまし
た。国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議という会議体で十分に
議論され、そして大学人の間での合意を得て、今回の調査検討会議のレポート
が出されたわけでございますと。私は、果たして大学人の合意を得ているのか
どうか、これがやはり大きな問題点だと思いますので、質問をいたします。

まず、その後、この報告書をめぐって、四月十九日に国大協の総会が開かれて
います。この総会の発言、あるいは総会の全体の状況がどういうものだったの
かということの御報告をいただきたいと思います。

○工藤政府参考人 四月十九日に国大協の臨時総会が開かれました。これは国
大協御自身の会議でございますので、私どもは出席していないのでございます
が、これは、三月二十六日に、法人化について大変精力的に御検討いただきま
した調査検討会議の最終報告がまとめられまして、それを私どもいただき、四
月三日には文部科学大臣主催の臨時の学長等の会議が開かれまして、私どもと
してもこの報告書の趣旨に沿って諸準備を進めていきたいという趣旨を申し上
げたところでございますが、国大協として、そういう報告書を受けまして、で
はどう取り組むかというような御議論をされる場だったと聞いてございます。

その際、例えば教職員の身分の問題でございますとか、実際に学長さん方、御
承知のように、法人化というのは、これまでの文部科学省の権限のかなりの部
分が長である学長にお任せされるということになりますので、そういうお立場
にある学長さん方として、さてやっていけるのだろうかどうかということも含
めて、いろいろ苦慮するような発言等もあったと聞いてございますけれども、
議論の結果といたしまして、会長から談話が取りまとめられ、発表されたとこ
ろでございまして、さきに最終レポートが出されました新しい「国立大学法人」
像については、二十一世紀の国際的な競争環境下における国立大学が進むべき
方向としておおむね同意できるものである、その上で、今後、最終報告の線に
沿って国大協としても法人化の準備に入るという趣旨の方針がまとめられたと
思って承知してございます。

○石井(郁)委員 この総会はマスコミにも公開されましたし、また、私も、
どういう議論がされるかということを大変注目してきたところです。いろいろ
な意見があったということは、いろいろ新聞報道等々にもございましたから聞
いているわけです。

例えば、これは鹿児島大学学長の意見表明ということによりますと、最終報告
を見る限り、予算、組織、人事等に関する運営上の裁量は拡大しているが、大
学本来の任務である教育研究に関しては、逆に自主性、自律性が損なわれて、
規制強化になっている、このような仕組みは、大学本来の学問的使命と学問の
自由に対する侵犯と言わざるを得ず、世界に類例を見ないものである、また、
本報告に見られる独立行政法人的手法は、経営上の裁量の拡大のために、大学
本来の使命である教育研究の自主性、自律性を犠牲にするものであり、大学の
真の活性化と結びつくはずがない、ゆえに反対をするという、大変厳しい意見
だというふうに聞くわけですけれども、こういう意見はありましたよね。どう
ですか。

○工藤政府参考人 今お話ありました鹿児島大学の学長からの発言、要旨しか
私ども存じてございませんが、少なくとも、反対というよりは、そういう懸念
は表明されたということは承知してございますし、田中学長御自身が調査検討
会議のメンバーでもございまして、そのプロセスの中で、いろいろな意見表明
をされて、最終まとめがなされたものと承知しているわけでございます。

○石井(郁)委員 この学長お一人ということではなくて、ほかにも類似の意
見はいろいろ出されたんじゃないでしょうか。いかがですか。

○工藤政府参考人 国大協、全体の議論の場でございますから、いろいろな御
意見が出たということは聞いてございます。

例えば、先ほど申しましたけれども、教職員の身分の切りかえの問題、それか
ら法人化後のあり方として、都市部と地方での格差で、地方は大丈夫だろうか
という懸念の声、あるいは教特法という法律で教員の人事が一定の規定をされ
ているわけでございますけれども、それが各大学ごとに取り扱いが違うことの
是か非かということでございますとか、あるいは基礎的学問分野をどう守り、
継承していくかということなど、いろいろな御意見があったというのは承知し
てございます。

○石井(郁)委員 やはり大学本来のあり方にかかわって、大変基本的なとい
うか、あるいは本質的なというか、問題がいろいろ出されているというふうに
見るべきだと思うんですね。

私、もう一つ御紹介しますが、これは静岡大学の意見ですけれども、予算、組
織、人事など経営面での諸規制の大幅な緩和と大学の裁量の拡大などを法人化
のメリットとしているが、このことが、関連する制度設計の具体的内容、あり
方に整合的に受け継がれて、相応の裏づけを得ているとは認めがたい、組織業
務、人事制度、目標、評価、財務会計制度など、最終報告での各項目は、いず
れも随所で強い制約を課す内容となっている、こうした仕組みは、自由な裁量
を基礎とした大胆な大学運営を推進するものとならない、逆に、大学は経営、
組織の効率的運営を第一に考えざるを得なくなるため、いたずらに周囲の状況
に右顧左べんすることになるおそれが生じると。また、言われましたように、
教職員の身分、これも何か唐突に非公務員化ということが出されているわけで
すが、この選択は、それ自体、国立大学の民営化に大きく道を開く、その一歩
手前まで導いたことを意味すると。民営化の関連での危惧は大変強いというふ
うに私は思います。

先ほど局長は、鹿児島大学学長は懸念を表明されたと言われましたけれども、
文書ではっきり反対をすると言っていますよ。懸念というレベルではないんで
すよね。どうですか。

○工藤政府参考人 既に御承知だと思いますけれども、調査検討会議の大変精
力的な御議論というのは、最初から最後まで外部の方へのフルオープンでまいっ
ておりまして、非公務員型という今のお話も唐突に出たわけではございません
で、前に委員の方から御質問あったかと思いますが、私ども、そもそも国立大
学の法人化を検討するに当たって、有馬大臣当時、それから中曽根大臣当時、
いろいろ文部科学省としての考え方を国大協等にも示してまいりました。

そのときは、私どもとしては、事務的には、教職員の身分でいいますと、公務
員型が妥当なのかなということを表明したこともございますけれども、検討会
議自身のいろいろな御議論を深める中で、公務員型のままではやはり不自由な
部分が残るので、この際、国立大学の一層の教育研究の発展のためには非公務
員型がいいねというのが総意として決まったものでございます。

それで、十九日の会議の状況でございますけれども、いろいろな御意見はあっ
たというのは承知してございますが、先ほど申し上げました会長談話というの
は、一応国大協の総意として、採決といいますか、御了承いただいたというこ
とに聞いてございまして、現に、今お話がありました幾つかの大学、懸念を表
明されている大学におかれましても、具体的な法人化へ向けての諸準備、ある
いは学内体制の整備を図っていると聞いているところでございます。

○石井(郁)委員 今お話しの、会長談話という形で終わったという話ですけ
れども、しかし、この会長談話についても、この承認は次期総会にしてほしい、
あるいは、議論を踏まえて、大学に持ち帰ってやはり説明しなきゃいけないん
です、これは学長さんの集まりですから。説得しなければいけない、学長はも
う大学人を説得する立場に立ってしまう。だから、あなたたちはこれに従って
くださいということでは大学としての発展は望めない、そういう学長の御意見
もあったんじゃないでしょうか。ですから、決して会長談話そのものが、本当
に総意で決まったというふうには受け取れないですよ。

また、競争原理を知的生産の場である大学に導入することには強い反対がある
と。それから、自主性、自律性と中期目標の関係ですね、文部大臣が決めるわ
けで、これも論理矛盾があるとか、先ほども何度も出ている非公務員型は納得
いかないと。これは職員までもそうするわけでしょう。この職員の問題も一つ
重大問題なんですね、非公務員の問題について言えば。研究者の話を出される
けれども、何で職員まで非公務員型なんだと。これはまだ説明されていないで
すよ。

そういうことも含めまして、つまり、兼職、兼務の自由化というのは、ある面
での説明はつく面もあるでしょうけれども、なぜ職員までが非公務員なんだ、
こういう問題ではまだ回答がないという状況の中で、こうしたことで、これら
についてのしっかりした表明がないと承認できないという意見は大変強いもの
があるんですよ。そういう意見は次々出されたんじゃなかったのか。

私、冒頭申し上げましたように、これはぜひ大臣にも後で伺いたいんですけれ
ども、だから、大学人の合意を得て出されたということから出発しているけれ
ども、この状況を見ると、とても合意を得ているとは言えないということでしょ
う。それを伺っているんです。いかがですか。

○工藤政府参考人 合意形成ということでいえば、それはオープンな議論の場
でございますから、いろいろな御意見があった、あるいはいろいろな懸念の表
明があったというのは事実でございますけれども、私どもも、それから調査検
討会議のメンバーの方々も、それから国立大学の大方の学長先生方も、要は、
法人化というのは大学のこれからのためにいいことだ、教育研究のより一層の
発展のために、大学に自律性、自主性を高めて、一層後世に輝く大学づくりを
するために、それは方法論でございますけれども、法人化というのは、欧米諸
国の大学の標準に比べましてもごくごく当たり前のことでございますから、い
いことだという思いでございます。

いいことは早くやろうというのが大方のコンセンサスでございまして、先般の
国大協の会長談話のまとめに当たりましても、いろいろな御意見はありました
けれども、圧倒的多数で、もうこれでいこうじゃないか、こういうふうに決め
られたというふうに私どもは伺っているところでございます。

○石井(郁)委員 圧倒的多数というふうに言われましたけれども、この日の
総会は異例の挙手採決ということが行われたんじゃないですか。一体何大学が
賛成をして、何大学が反対したのか。いかがですか。

○工藤政府参考人 先ほどの会長談話の御承認については挙手による採決が行
われたそうでございますが、もう数えるまでもなく、圧倒的多数であったとい
うふうに伺ってございます。何割とか何票だったとかということを数えるまで
もなく、圧倒的多数だったというふうに報告を受けてございます。

○石井(郁)委員 私は、こういうことが本当に民主主義だろうかというふう
に思いますよね。だって、国会だって、保留も含めて賛否をとるじゃないです
か。挙手採決だけで圧倒的だ、反対の意見はとりもしないということですけれ
ども、ここには記者さんも、公開ですからいろいろと意見を聞いていますよ。

それから、国大協総会自身がこういう採決をするということはなじまなかった
のですよ。大体、全会一致を原則として進めてきたでしょう。だから、こんな
やり方をせざるを得なかったというところに、私は本当に異例の、しかも手続
においても非常に強硬的なやり方というのは大変問題だというふうに思うんで
すね。それは、二割近くの大学が反対したのじゃないでしょうか。

それで、やはり本当に国大協としては異例な形で大変議論も行われた。ああい
う場で意見を言うこと自身が勇気の要る、今、残念ながらこういうことになっ
ているんですよ。おかしいでしょう。本当は堂々と意見を言い合って議論をし
たらいいわけだけれども、これは、先ほど来文部科学省の姿勢の問題が問われ
ましたけれども、そういうふうにならないというところが一つの現状としてあ
るんですね。

やはり法人化という、これは本当に日本の大学にとって新しい大学像に踏み込
むわけですから、それはもう本当に大問題なわけでしょう。二十一世紀の我が
国の大学のあり方がどうなるのか。一つ一つの大学がどうなっていくのか。一
つ一つの大学も判断をしなきゃいけないという問題ですから、当然慎重にやら
なければいけないということでしょう。それがこの総会で挙手多数で十把一か
らげに決めていってしまう。これでもって合意を得たなどとはとても言えない
というふうに私は思います。

事実、この総会以降、いろいろな大学から反対表明が行われているでしょう。
つかんでいますか。個別大学、学部からも表明なされている。ちょっと一、二
申し上げますけれども、宮崎大学は五月二日に声明を出しています。新しい国
立大学法人像は、本学が平成九年に示した設置形態のあり方の見直しが制度化
される仕組みは、大学の教育研究を阻害し、学術研究水準の低下を来すととも
に、教育の機会均等にも影響を及ぼしかねないと、大学側が既に出しているわ
けですね、その懸念を払拭できないというわけです。したがって、国大協が新
しい国立大学法人像を容認する決議を行ったことに遺憾の意を表明するという
ことです。

また、一橋大学の社会学研究科の教授会ですが、四月十七日、こういう声明を
出しています。率直に言って、大学の果たすべき教育研究の自由な営みを開花
する大学像とは真っ向から反するものである、このような大学像には根本的な
異論を差し挟まざるを得ない、本研究科教授会は、最終報告に見られる大学像
についての根本的な見直しと再検討を訴えるものであると。

私は、この二つだけ今御紹介いたしました。ほかにもあるでしょう。だから、
反対、懸念の声は今広がっているんですよ。私は、拙速に法人化を押しつける
べきではないというふうに思いますが、今局長とのやりとりをいろいろお聞き
になりまして、文部科学大臣としてどうお考えでしょうか。この合意を得てい
るのかどうかという問題について伺いたいと思います。

○遠山国務大臣 国立大学をどのように活性化していくか、そして日本の教育
研究、高等教育、そして先端的な研究の責務を負う国立大学が、しかも国民の
税金を使っての国立大学の営みということが、本当にその機能を発揮してもら
うにはどうしたらいいかという長年にわたる議論があったと思います。それの
一つの集約体として、設置形態について法人化という流れがございまして、し
かもそれにつきましては各方面の大学人が集まった調査検討会議が最終報告を
まとめられたのが三月でございます。

今の御議論を聞いておりまして、国大協の臨時総会においていろいろな議論が
出た、これはもう当然でございましょう。しかし、それを国大協の一つの意思
として、これはむしろ将来の国立大学のあり方、それから大学改革をより前進
させるために、ここでひとつ会長談話ということで合意を形成しようというこ
とで議論がなされたのではないかと承っていたわけでございます。

大きな制度改革でございますから、いろいろな議論が出るというのは当然でご
ざいます。私どもとしましても、そのプロセスにおいて誤りのないように調査
検討会議を行い、それから、それまでにも歴代の大臣方の大変な御努力もござ
いまして、いろいろな角度からの検討を踏まえた上での調査検討会議が実施さ
れ、そしてその成果を踏まえた上での御議論が先般の国立大学協会の臨時総会
においてなされたと思っております。最終的にはその議論が結集をしてあのよ
うな形になったと考えております。

もちろん、新聞報道等、あるいはいろいろな大学が個別に、あるいはその大学
の中の一部の方々からいろいろな意見が出ているかもしれません。しかしなが
ら、今お話に上りましたような大学においても、それぞれ大学、国立大学協会
を通じた情報収集に努められますとともに、大学内において法人化導入に対す
る体制を整えておられる、そういうことについての意思表明もされているとこ
ろでございます。現に、今おっしゃいました大学長の何人かに、私、その後に
お目にかかっておりますが、私に対して、法人化に対する反対という御意見は
お一人からも聞いていないところでございます。

本当に大きな改革でございますから、これから実際に法制化をしたり、あるい
はいろいろな制度化をしていくというときには、その本来の目的というものを
十分に踏まえた上で、私どもも最後まで英知を奮って、そしてこの問題を一つ
乗り越えることによって、日本の国立大学がさらに発展していくように力を尽
くすべきときであると考えております。

○石井(郁)委員 大学のあり方をめぐっていろいろ議論をしてきたと言われ
るのはそのとおりなんですが、それは法人化をめぐって議論してきたわけじゃ
ないですよ。これは文部科学省自身が一番御存じでしょう、大学改革として旗
を振ってきたのは文部科学省ですから。それはもう現場で、本当に私も何度も
質問していますけれども、現場は振り回されてきたのですよ。しかし、法人化
そのものというのは極めて、ここ二、三年の話じゃありませんか。しかも、そ
の方針というのはくるくる、くるくる変わったという中で、この一年の間にが
たがたとこういう方向が今出てきているということですから、大学自身も、あ
るいは国民的にもこの問題の議論は全然煮詰まっていませんよ。そこは混同さ
れては困ります。そして、法人化というのは、各大学が個別に移行するんでしょ
う。だから大変なんですよ、法人化もするんですから。それをあたふたとやっ
ていいものかという問題なんです。

それで、今こういう事態に、私ははっきりさせていただきたいことがあるんで
すが、法人化ではまだ法案はできていません。今あなた方が着手して来年の国
会にかけると言っているわけでしょう。だから、国会でも承認したわけでもな
い、今はそういう状況ですよね。ところが、既にもう法人化ありきでその着手
と具体化がどんどん進んでいる。これは私は納得できません。

ちょっと例を申し上げましょう。

この二月、三月、四月、月一回のペースで旧七帝大の事務局長の方々が集まっ
て、七大学事務局長会議というのが開かれているんじゃないですか。それで、
法人化のもとでの管理運営のモデルづくりを行っているということですね。こ
れはやはり文部省主導でやっているんですよ。七大学の人たちが自主的にやっ
ているということじゃなくて、文部省が関与してやっている。

それから、先ほど図書館問題、図書館というのはいかに教育研究に大事かとい
う話がございましたね。この附属図書館の問題で、私が聞いたところは、二年
後に法人化するための準備だということで、法人化される前に財産を確定しな
ければいけないので、全図書の棚卸しをしている、一冊ごとに買ったときの値
段まで調べて基本台帳をつくる作業に追われている、明治三十二年に買った図
書などどこに所蔵しているのかわからない、探すだけでも大変だと。だから、
てんやわんやですよ、図書館の職員の皆さんが。どういう作業をしたらいいの
か、もう途方に暮れている。

先ほど、文部科学大臣のお言葉ですけれども、大学は税金で運営していると言
いましたけれども、国立大学はまさに国民の財産ですから、だから国民が、ど
うしていくのかということをまさに国民的に議論して決めていかなくちゃなら
ないものじゃないですか。こういう今状況。深刻ですよ、現場は。

これは文部省の指示でこういうことをさせているんですか、あるいはしている
んじゃないですか、ちょっとはっきりお答えいただきたい。

○工藤政府参考人 国立大学の法人化というのは、独立行政法人が議論され、
そのスキームを活用しながらという議論は確かにここ数年なんでございますが、
御承知のように、昭和四十年代から国立大学の法人化というのは大きな課題で
ございました。中教審の答申もございますし、その後臨教審でも議論されて、
ところが、なかなか機が熟さないまま今日まで至っているわけでございます。

しかも、法人化そのものが目的なのではございませんで、大学の教育研究ある
いは大学の活性化のための一つの方法論でございまして、いろいろな会議等の
場で意見を表明される方もございますが、むしろ私どもがおつき合いしている
大学の学長先生の中には、もうあしたにでもやりたいという大学の学長さんす
らいらっしゃるわけでございます。

そういう中で、先ほど申したように、この法人化というのはこれからの国立大
学のためにいいことだということは、私どもも、大方の学長さん方もそう考え
ているわけですが、そのためにこれからいろいろな諸準備、私どもなりにいろ
いろしてございますけれども、各大学もそれぞれの御判断でいろいろな諸準備
に取りかかっているというのは聞いてございますが、私どもがとりたてて指示
をしたり、いろいろ申し上げているわけでは全くございませんで、例えば先ほ
ど事務局長さんの会議があるということ、御指摘がありましたけれども、私ど
もが聞いているところでは、それぞれの大学ごとにいろいろ検討してもロスが
大きいので、ある程度ブロックの大学でまとめて準備室を設けて検討会議を始
めたという例なども聞いているわけでございますが、これからの諸準備に当た
りまして、各大学のロスを少なくしながら、かつ私どもがとりたてて何か強制
したりするということはこの制度の根幹にかかわりますので、大学の自主性を
高めるためのものでなきゃいけないのがこの法人化でございますから、大学の
自主性をあくまでも尊重しながら、かつ大学の労力をどう減らしながら円滑に
移行できるかということを今後とも大学側と相談しながら、誠意を持って取り
組んでまいりたいと思っております。

○石井(郁)委員 しかし、言葉の端々にもうブロックで準備をしているとい
う話で、しかしそれは強制はしていないと。

私、申し上げましたように、七大学で、これは旧七帝大ですよ。大体法人化で
小さい大学がつぶれるだろうという話になっているでしょう。だから、旧七帝
大がこの管理運営で移行できるモデルをつくっているという話なんで、はっき
りさせてください。文部科学省として、そういうことを準備を進めようとか、
あるいはその準備に関与するとか、その指示を出しているということはないと
いうことははっきり言えますか。それは七帝大の事務局、事務方がいわば、事
務方といっても事務局長も文部省のお役人でしょうから、勝手にやっていると
いうことなんですか。

○工藤政府参考人 七大学に限らず、事務局長レベルあるいは学部長レベル、
学長レベル、いろいろな会議がこれまでもございました。七大学というのはあ
る程度規模が大きい、歴史が古い大学のグループでございますから、かねてか
らその七大学だけでお集まりになるような会議体もあるのは承知してございま
す。七人の学長さん方でも集まっていらっしゃいますし、事務局長もこの機会
にそういう学内の問題を意見交換しながら、この取り組みの準備を進めている
んだと思いますが、少なくとも、私どもがおっしゃいますような指示をしたり
ということでは決してございません。

○石井(郁)委員 法人化については、もちろんそれを賛成する人もいるでしょ
う。だから、私は今、賛成も反対もあるという立場で話をしているんです。

ところが、まだこの問題は法案も出ていない、国会の承認も得ていない。にも
かかわらず、もう管理運営のモデルづくりをどんどん進めている。こういうこ
とはあっていいんでしょうか。私は、本当にこんなことは許されないというふ
うに思いますね。

それはいろいろな分野でありまして、もう一つはこの中期目標、これを法人化
すると目標を設定しなきゃいけないということになっているでしょう。だから、
各大学では、もうことし七月までに、ある大学では、いや、これはまた名前を
出します、新聞報道になりましたから。広島大学なんですね、これは中国新聞
にありました。独立行政法人化後は、中期目標の骨格がもう広島大学は決めて
いると。すごいですね。国会は何にも通ってもいないときに、もうどんどん事
が進んでいるんですよ。それで、学内では中期目標をつくることに教職員を挙
げて振り回されるという状況が行われていますよね。

だから、こういうことも、文部省、あなた方のやはり指導とか、あるいは方針
を示して進めているでしょう、どうなんですか。

○工藤政府参考人 結論から申しますと、決してそういうことはございません。
調査検討会議、大変多くの大学の関係者に御参画いただきました。委員でお加
わりいただいた方のほかに、その委員の方が属する大学でやはりその検討を深
めるために学内の検討会議を設けたりということも含めて、大変多くの方々が
関心を寄せ、参画してここまで来たと思ってございます。

そういう中で、中期目標というのは、大学の自主性を、あるいは将来の戦略性
を確保する上で基本的に大学自身が考えなきゃいけない部分があるわけでござ
いますが、そのためには、それぞれの大学が将来的にどう教育研究あるいはそ
のための組織を位置づけていくのかというのは大学自身がお考えいただく必要
があることで、それは別に中期、短期にかかわらず、むしろ長期と申し上げた
方がいいかもしれませんけれども、そういう大学自身の将来構想のビジョンが
あって初めて、大学からの原案提示というのがあってこれは形づくられるもの
だと理解してございますが、そういう意味で、大学はそれぞれ御判断いただい
て自主的に御検討されているものだと思っております。

○石井(郁)委員 これはやはり大臣にはっきりとお答えいただきたいと思い
ますが、やはり国立大学がどうあるべきかと。今、一つの選択肢として法人化
というのは確かに出されていますが、しかし、これはまだ国会で承認もしてい
ません。それを政府と文部科学省が勝手に進めていいのかどうか。これは国民
的なやはり財産であり、国民的に議論を尽くさなきゃいけない、とりわけ関係
者の意見をきちんと聞くということは一番大事な点じゃないんでしょうか。

だから、それをこういう形で、局長答弁では指示はしていないと言われました
が、実際はそうなのかなということはいろいろありますので、はっきりと、き
ちんと大臣としての御答弁をいただきたいということが第一点であります。

続いて、私はもう一点重大な問題をお聞きしておかなくてはなりません。これ
は、最近のある週刊誌で麻生太郎自民党政調会長がこのように述べていらっしゃ
るわけですね。この一年間で小泉改革の具体的な成果と言えるものがあります
かという問いに対して、東京大学がなくなる、国立大学がすべてなくなること
を決めたのがやはり大きいでしょうね、国立大学は全部なくなりますから、独
立大学法人に変わる、そして数年後には、できるところから民営化ですよ。

どうなんでしょうか。国立大学法人にしてその後に民営化を図る、文部科学省
がそこまで描いているんですか、それが方針ですか。これは大臣お答えくださ
い、先ほどのと二点の問題。

○遠山国務大臣 国立大学に独立した法人格を付与いたしますことは、大学運
営上の自律性、自主性を拡大してそれぞれの創意工夫によって個性豊かな大学
づくりを行っていくという、私といたしましては、本来大学があるべき姿に返
るといいますか、本来あるべき姿をさらに追求するといいますか、そういう目
的を持っているものでございまして、教育研究の活性化を図るという上で大変
大きな意義があると思っております。

各大学におきまして、そういう大きな法人化の方向性というものを前提にしな
がら準備を進めるのは当然でございます。それぞれの大学が事務局レベルある
いは学部レベル、大学レベルで、そういうことについて十分、いろいろな問題
を想定しながら準備を進めているという段階ではないかと思います。

それから、今の民営化についてのお尋ねでございますけれども、私は、今申し
上げましたような法人化の意義ということを考えますと、そのことについては
後で結論を申し上げますけれども、去る三月二十六日の各界の有識者による調
査検討会議における最終報告におきまして幾つかの提言がございまして、その
中に、いわば民間的発想の経営手法を導入した新しい国立大学法人像をつくる
ようにという報告がなされたところでございます。

一つは、学外者を含む役員会によってトップマネジメントを実現していくこと、
二番目には、全学的な観点から資源を最大限に活用した戦略的な経営を実現し
ていくこと、三つ目には、自己収入拡大など、経営努力にインセンティブを付
与すること、そして教職員の身分を非公務員型として、能力主義に立った人事
制度を導入することというようなことでございまして、これは民間的な発想の
経営手法を導入するということでございまして、民営化ということではないわ
けでございます。

私は、こういう民間的な発想の経営手法を導入することによって、一国の、町
の集積体である大学というものをより活性化していくということが今回の法人
化のねらいであると考えているところでございます。欧米諸国では、大学は一
般的に既にもう法人格が付与されているわけでございまして、それらに対して
公的な資金が導入されているというのも当然でございます。そのような状況か
らも、国立大学の法人化がすなわち民営化への移行を前提とするものとは認識
いたしておりません。

○石井(郁)委員 最近、国民の間では、もう小泉改革の熱は冷めてしまった
ということで、大変支持率も急落しているわけですけれども、改革の成果がな
いんじゃないかと言われていたら、一番改革の成果があったのは国立大学がな
くなることだなんということを、自民党の側から、しかもこういう役職にある
方から言われると、こういうことで本当にいいのだろうかというか、文部科学
省として、私は、本当にこれを黙って過ごせるのかなという思いをするわけで、
伺ったわけですね。

今後、民間的発想ということと民営化ということとはどう違うのかとか、大学
の法人化というけれども、それは本当にどういうものなのかということは相当
議論を詰めなきゃいけないですよ。やはり大学の人たちというのは、ある面で、
そういう分野の専門家なんですから、その人たちがいろいろな意見を出してい
るというときに、それを聞かずに、見切り発車的にするというのは、これは大
学改革にとっての大きな禍根を残すというふうに思うんですね。

だから、私は、今の段階で本当に文部科学省、こういう指示をしていないとい
うことは言われましたけれども、そこら辺ははっきりさせていただきたいとい
うことを重ねて強調しておきたいと思います。

ちょっと時間がありますので、私は、今大学というのは本当に、改革、改革と
言われてきたように、解決しなきゃいけない課題がたくさんあると思います。
深刻な状況にもあるというふうに思います。だから、それは法人化したら済む
という話じゃないんだということの例として、きょう、実は一つ申し上げたかっ
たんですけれども、大学院生の問題なんですよ。まさに若手研究者の置かれて
いる状況、その教育や生活状況はどうなのかという問題なんですね。

これも大臣に伺いたいと思うんですが、この十年ばかり、ちょうど文部科学省
は大学審議会答申に基づいて大学院拡充政策をとってこられました。大学院の
量的整備についてで、十年間で大学院生の数を倍加すると。博士課程、修士課
程合わせて、大学院生、九〇年には九万二百三十八人でしたけれども、二〇〇〇
年には二十万五千三百十一人ですね。倍以上の伸びですよ。ちょっと個人的な
ことで、実は私の息子も大学院に行ったんですけれども、この中の一人に入っ
ているのかもしれませんが。

十年前と同水準の大学院教育を維持するというには、単純に考えても、教官数
とかあるいは奨学金の整備の問題だとか、研究のためのスペースだとか、その
条件整備が要るわけでしょう。私は、倍にしているんですから、その条件整備
は本来の倍加だと、環境整備をしなきゃいけないというふうに思うんですけれ
ども、全然そうなっていないでしょう。驚くような実態なんですね。

大学院に行っても自分の机がない。もう信じられない話があちこちであります
よ。これも例として、一橋の学生に聞きましたら、現在千三百九十六人の大学
院生がいる、五百二十五個しか机がない、院生用の机、だから二人で一つ使っ
ている。だから、これが二十一世紀の日本の社会の知的基盤をつくっていると
ころなのかということでは、とても、何かもう情けない話になるわけですね。
これはもう各大学がこんな状況ですよ。

私は、大臣にぜひ伺いたい。だから、各大学で本当に院生がこういう問題でど
ういう研究状況、教育状況にあるのかということの実態はつかんでいらっしゃ
るのかどうかという問題ですね。今つかんでいらっしゃればお聞きいたしたい
と思いますけれども、きちんと調査をされるおつもりがあるかどうか、お聞き
します。

○遠山国務大臣 その点は、私どもも大変重要な問題と考えてまいっておりま
して、積極的にいろいろな対応を打っているところでございます。

今御指摘のように、平成三年から平成十二年までの間に、大学院、重点的な整
備を図ってきたところです。これはもう各国との比較から見ても、日本の大学
院というのは量的にも質的にも非常におくれていたということがございまして、
力を注いでまいったわけでございますが、この間に、国立大学の大学院生数は
二倍となりまして、特に大学院の施設の狭隘化が著しい状況となっているわけ
でございます。

そういうことも踏まえまして、昨年三月に閣議決定されました科学技術基本計
画を受けまして策定した国立大学等施設緊急整備五カ年計画に基づきまして、
施設の重点的、計画的整備に努めているところでございます。

この計画の立案に当たりましては、大学院施設の狭隘解消などに必要な面積約
百二十万平米を五カ年間で整備することとしたところでございます。この整備
について、大学院の院生のためのスペースをトッププライオリティーに位置づ
けておりまして、重点的に整備を図ってきたところでございまして、目標に対
する、平成十四年度予算まで、今年度予算、いろいろな意味で充実を図ってま
いっておりますが、その整備量は七十六万平米でございまして、六二・三%、
全体の計画の中で達成をいたしているところでございます。

それ以上の細かいことにつきましては、担当局長からお答えしたいと思います
が、よろしゅうございますか。

○石井(郁)委員 時間がありませんので、私はもう一点、育英会奨学金の問
題なんですね。

本当に日本の学生、院生というのは、やはり生活条件、都市に来ると住宅費が
高い、それから授業料も高いという中で厳しいわけで、この奨学金問題で見ま
すと、無利子の貸与率というのが一九九〇年では三四・五%だったんですけれ
ども、二〇〇〇年で二四・三%なんですよ。落ちているんですね。一〇ポイン
トも落ちているというのはすごい落ちようですよ。だから、今お話しの大学院
の制度の拡充強化と文部省言われるんだったら、これはもっと上げなきゃいけ
ないというところですけれども、十年前の水準も維持できない、これはひどい
話だというふうに思うんですね。

それで、最近、さらに驚くようなニュースは、この奨学金の返還免除の問題な
んですよ。教育職、研究職についた大学院生の返還免除を廃止すると。これは、
新聞報道を見まして、私はもう本当に驚きました。育英会の問題等と奨学金問
題等がいろいろ出てきていますけれども、大学院生の奨学金制度というのをこ
んな形で廃止して、一体本当に日本の若手研究者の養成をまじめに考えている
のかと言わなければいけませんね。

この問題は、文科省としては、どうなんですか。廃止しないということをやは
りきちっと言明していただきたいというふうに思います。

○工藤政府参考人 育英奨学事業の充実については、私ども、かねがね努力し
てきたところでございます。ただ、御承知のような財政事情がございまして、
奨学事業を充実するためには原資であるお金を確保しなきゃいけないのでござ
いますが、それが大変窮屈になってまいりまして、御承知のように、平成十一
年には有利子制度の抜本改善をいたしまして、有利子制度で、財投資金などを
利用した充実を図ってきているところでございます。有利子といいましても、
今、幸いにも低金利時代でございますから、卒業後、低利でお返しいただくと
いうことでは、準無利子に近いものでございますが、やむを得なくそういう形
で充実しているということを御理解賜りたいと思います。

そういう中で、閣議決定されました大学院の返還免除制度の廃止でございます
けれども、これは従前からの経緯で、教育研究の場に優秀な方を招きたいとい
うことで始めてきているわけでございますが、いろいろ不都合が生じてきてま
いりまして、教育研究職だけに限った返還免除制度なものでございますから、
例えば看護婦さんでございますとかあるいは国会議員の先生方でございますと
か、いろいろな職種で、それぞれ、大学院卒業生等、活躍していただきたいの
に、不公平感が生じているのが一つございます。

それから、今の返還免除制度は、卒業後直ちに就職して、かつ長期に、今のと
ころ十五年間でございますが、長期に在職しませんと該当しないという、今い
ろいろな職種で流動性なども求められている中でいかがなものかということも
ございますので、これを一たん廃止して、かつもう少しリーズナブルなものに
していこうじゃないかというのがその趣旨でございまして、何らかの形での充
実策というのは、今後さらに検討してまいりたいと思ってございます。

○石井(郁)委員 時間が参りましたけれども、これは、第二次科学技術基本
計画、二〇〇一年の三月に書かれていることですけれども、すぐれた研究者、
技術者等の養成は、科学技術システムの改革において極めて重要な課題である、
大学はその中核を担うものだということの位置づけがしているでしょう。

私は、一方でこういうことを言いながら、一方で文科省は、閣議決定だからと
いって、どんどん条件を悪くしていくというようなことになったら、先ほどの
質問、東先生の質問もありましたけれども、文科省は一体何のためにあるのか
と言わなければいけないですよ。やはりちゃんと大学を位置づけ、若手研究者
の研究や生活条件をきちっと確保していく、拡充していくというために全力を
挙げるところが文科省ではないのかというふうに思いますので、そういう立場
で、ぜひしっかりやっていただきたいということを申し上げて、終わります。

以上です。
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