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独行法反対首都圏ネットワーク

北東北3大学再編    地域との連携を視野に 
 .[he-forum 4083] 岩手日報論説06/10 
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『岩手日報』論説  2002年6月10日付

北東北3大学再編 

地域との連携を視野に 
  

 厳しい財政状況や少子化による学生数の減少を踏まえ、文部科学省は小泉内
閣の構造改革の一環として、国立大学の独立行政法人化と大幅な再編統合を打
ち出している。それに伴い全国99の国立大学は今、2年後の法人化対応に向
け、再編統合への早急な取り組みに迫られている。

 この中で、岩手大は弘前大、秋田大との北東北3大学の再編統合を視野に入
れ、検討、協議を進めている。3大学はまた、文部科学省が本年度中に教員養
成系学部の再編統合計画を策定する方針を受け、同学部の再編統合を大学全体
より先行させて協議しており、6月中にもその方向性を固める意向だ。

 独立行政法人化とは、国立大学が国から独立し、民間的な経営手法を導入す
ることだ。だが、ほとんどの大学は財政基盤や組織などがぜい弱で、存続する
ためには再編統合の相手を探さざるを得ない。まさに再編統合はいや応なしで
ある。

 しかし、北東北3大学など一連の再編統合で、例えば教員養成学部の空白県
も出てくるなど地域への影響は大きい。それにどう対応していくか。従って
「まず再編ありき」の数減らしであってはならない。 

 新たな特色生み出せ

 再編統合には、地域の教育を取り巻く今日的状況を十分に勘案し、何よりも
地域からの視点を欠かさない理念が必要である。地域の実情をしっかりと見据
え、それぞれの地域が国立大学に求める課題は何なのかを検証し、新たな特色
を生み出すものでなければ意味がない。

 岩手大をはじめとする北東北3大学の再編統合は、このことを念頭に置き、
地域とのより積極的な話し合いなどから視点をを広げて、将来像を描いてほし
い。

 現在、3大学の教員養成系学部の再編統合をめぐり、岩手大と弘前大が、そ
の主導権を持つ「担当校」に名乗りを上げ、綱引きを繰り広げている。また、
3大学のある関係者は「岩手大に農学部と工学部、弘前大に医学部と教育学部、
秋田大に医学部と人文系学部となるのでは…」と再編統合案を予想する。ただ、
いまだにどのような形で決着するかは不明で、今後の協議が待たれる。

 いずれにしても、地域支援機能や教養教育の充実、他学部からの転部を可能
にするなどといった再編統合の利点を生かさなければ将来に禍根を残す。忘れ
てならないのは、地域・ブロック教育を支える機関としての再生であり、地域
に開かれた大学づくりである。

 時代見据えた論議を

 戦後の新制大学発足以来の改革である再編統合の推進に関し、遠山敦子文部
科学相は「積極的に計画を練ってほしい。各方面の意見を聞きながら独立行政
法人化の流れも考慮し、最終的には文部科学省が具体策をまとめたい」との見
解を示している。

 しかし、この改革は、徹底して各大学に任せ、大学が責任をとる仕組みをつ
くることから始めなければならない。目指すべきは大学の自主性・自律性の拡
大と地域社会との連携であり、再編統合は大学の構造改革と連動するべきであ
る。

 こうした観点から文部科学省が最終的に再編統合を決定するのには賛同しか
ねる。地域には地域ごとの特性や事情もある。教育機能の統合という理由だけ
で、地域に根付いた関連の機能まですべてはぎ取るのは問題だ。各大学に徹底
的して再編統合案を練らせ、そこから出た案を優先したい。

 北東北3大学などの再編統合は、あすへの布石として「聖域なき」で進む。
それだけに枠組み先行に陥らず、時代に適応した論議を尽くした上で、結論を
導き出すべきだろう。

(吉田誠一)