☆私大の苦境―万一への備えを
. [he-forum 4067] 私大の苦境―万一への備えを(朝日新聞06/07)
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私大の苦境―万一への備えを
朝日新聞ニュース速報
私立の大学や短大が「冬の時代」を迎えている。学生を抱えたまま倒産する学校がい
つ出てもおかしくない状況だ。私学の学生数は全大学・短大の7割を超える。対策を急
がねばならない。
最大の要因は少子化である。受験年齢の18歳人口は92年の205万人を境に減少
傾向に転じ、150万人台まで落ちた。来年度からは減少のピッチがさらに早まる。
進学率が頭打ちだけに、志願者が減ることは間違いない。そこに不況が追い打ちをか
けている。授業料の安い国公立に学生を奪われ、地方の私学はとくに苦しい。
定員割れする学校が急速に増え、昨春は私大の3割、短大の5割を超えたことが、私
学助成の窓口である日本私立学校振興・共済事業団の調査でわかった。
学生数が減る以上、経営が行き詰まる学校が増えるのは避けがたい。実際、短大の中
には募集を停止し、在校生が卒業するのを待って廃校するところが出てきた。4年制で
も、新設して数年という学部の募集停止に踏み切る学校が現れている。
学校がいきなり倒産したら、学生や教官ばかりか、商店街や取引先、自治体など地域
への影響も大きいだろう。
私学団体や事業団、文部科学省は、いざという場合に備えて普段から連携を強め、役
割分担を決めておく必要がある。
有力私大からなる日本私立大学連盟はこの春、危機管理や破綻(はたん)処理策の手
引をまとめた。文科省も事業団や私学団体と連絡協議会をつくったが、話し合いはスタ
ートしたばかりだ。
とりわけ優先すべきは学生への善後策だ。勉強を続けられるよう、相談の窓口や転学
先をあっせんする組織はぜひほしい。学校によって専門領域や水準の違いがあるだけに
簡単にはいかないだろうが、私学団体は、万一の場合どの学校が受け入れ可能か、とい
った情報をすぐに集め、学生に提供できるようにしておくべきだ。
学生が授業料を二度払いさせられるようなことになったら、かわいそうだ。卒業や単
位の証明書を出す基になる学籍簿の管理者も要る。
手遅れになるまで放っておき、ある日突然お手上げという事態を防ぐには、早めに「
警報」を出す仕組みがあったほうがいい。各校の財務諸表を持っている事業団がその役
割を担うのも一法だ。
問題は、各校の財務状況が外から見えにくいことである。文科省の調査では、8割の
学校法人が何らかの形で財務を公開している、と答えている。しかしその中には、「資
料は理事長室の柱の陰に掲示しています」というのも入っているそうだ。学内でさえそ
うなら、学外者や受験生が「危ない学校」を見分けるのは困難だろう。
私学は補助金を受け、公教育を担っている存在だ。その重さを考えれば、経営情報の
開示に努力するのは義務である。
[2002-06-07-00:17]