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独行法反対首都圏ネットワーク

☆「なれ合い」になる恐れ(焦点!大学評価を問う:下)
 .  [he-forum 4062] 朝日新聞05/31
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『朝日新聞』2002年5月31日付

「なれ合い」になる恐れ(焦点!大学評価を問う:下)


 私立大学にも評価の波がきた。国の認めた機関の評価を受け、「適格マーク」
をもらわなければならない。少子化で「大学倒産」さえ予想されるいま、評価
は私立大にどんな影響を与えるだろうか。(社会部・宮坂麻子)

 私大や公立大が、学部、学科を新設する場合、文部科学省の「設置認可」が
必要になる。

 認可には細かな取り決めがあるが、昨年12月、それを最小限にする答申を
内閣の「総合規制改革会議」が出した。続いて文科省の中央教育審議会が今年
4月、具体的な中間報告をまとめた。図のような枠組みだ。

 大学が自由に改組できるよう設置認可を緩める代わりに、各大学は最低でも
一つ、国が認証した評価機関を選び教育・研究などの評価を受けなければなら
ない。各機関がそれぞれの基準で各大学に「適格」「不適格」を認定する。評
価結果は公表される。大学設置や入試などで法に触れる大学があれば、文科相
は勧告や閉鎖命令を出せる。

 ねらいは、競争を高めながら大学の質を上げていくことだ。だが、同じ私大
でも、早稲田のように、国立大と同じ機関で評価を望むところがある一方、
「評価が悪ければつぶれる」とおびえる大学もある。

 こうした立場の違いもあって、いくつもの団体が評価機関を設立する動きが
出ている。

 国公私立大の約8割が加盟する「大学基準協会」は、6年前から評価をして
いる。だが、来年度から改善した新しい評価制度を始める。7年に1度、教育
研究や財務などが評価される。

 短大を併設する私大が多い「日本私立大学協会」も、第三者評価をする財団
法人を、来年にも独自に設立する。短大が加盟する「短大基準協会」は2校で
互いに相手の大学を評価しあった結果をもとに、新たな評価ができないか検討
中だ。

 この3団体を合わせれば、日本の私立大学の大半は評価対象になる。一つの
機関の評価を受ければいいから、「仲間うちの評価」を受ければ、それで義務
は果たせる。

 3団体とも、主な評価者は加盟校の教員だ。結果公表についても、大学基準
協会は「ABCなど判定段階別の大学の数は出すが、大学名は出さない」と説
明。私大協会は「評価結果は公表するが、財務状況はどうするか検討」という。

 「不適格」評価については、3団体とも現実には出さない方針だ。万一、不
適格になりそうな場合はその大学に評価申請自身を取り下げてもらうしかない
という。

 これでは「不適格」とされる大学は世の中には知らされないことになる。文
科省は、現段階ではこの3団体を認証機関の候補にしている。だが、同省幹部
は「あいまいな評価をする団体ばかりなら、認証する条件を厳しくするしかな
い」と手厳しい。私学助成金にこの評価結果を反映することも、今後検討され
る。

 河合塾によると、ここ数年、受験生や高校の進路担当教師はどんな講座があっ
て、どういう先生がいて、何が身につけられるのかなどを気にしているという。
河津道男・大学教育研究開発部長は「学生が、偏差値で大学を選ぶ時代は終わっ
た。受験生の目は中身に向いている」と断言する。

 きちんとした教育や研究の評価をし、その結果が公表されれば、受験生や社
会が期待する情報となり得る。大学にとってもいい宣伝になる。

 しかし、このままでは、評価は同業者内でしかも十分な情報公開もないまま
行われてしまう。それは、いずれ受験生らの不信感を招き、自ら首をしめるこ
とにもなりかねない。