☆徳島大学歯学部附属病院長 中條信
. [he-forum 4061] 徳島大学歯学部附属病院ニュースNo.14
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徳島大学歯学部附属病院ニュース第14号
独法化と大学病院
徳島大学歯学部附属病院長 中條信義
平成14年3月26日,『新しい「国立大学法人」像について』と題する報告書が
「国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議」から出されました。昨
年9月に『中間報告』が出されて以来,平成14年2月21日,3月6日と改正を重ね
た結果の最終報告書です。
そもそも国立大学を法人化することを提言したのは,中教審四六答申であった
と思われます。これは今から約30年も前ですが,独立行政法人化計画が正式に
登場するのは平成9年12月で約5年前です。このとき行政改革会議の最終報告は
独立行政法人制度の導入を提言しています。これは昭和63年(1988年),英国の
サッチャー政権が導入したエイジェンシー制を参考にしたといわれています。
このような背景から平成10年6月には中央省庁等改革基本法が成立し,独立行
政法人制度の創設が盛り込まれました。平成11年7月には「独立行政法人通則
法」「整備法」が閣議決定され12月に法案が成立しました。このとき,大学は
独立行政法人化になじまないとか,通則法がそのまま適応されないだろうとの
楽観論がありました。当時,通則法の問題点については病院運営委員会などで
も病院統合にからんで問題点を整理していました。通則法の問題点は・事務,
事業を効率的かつ効果的に行うことを目的にしている(2条)。・中期目標(29条),
中期計画(30条)を策定し評価(32条)を受けて,その後には独立行政法人組織の
存続または廃止を主務大臣が決定できる(38条)。・会計は企業会計原則による
(38条)でした。大学を独立行政法人化する場合,この通則法から,まったく外
れた法律や組織形態が作れることは幻想に過ぎないことは明らかでした。平成
13年4月には57法人が独立行政法人へ移行しました。国立病院についてはすで
に独立行政法人国立病院機構法案が公表され,独立行政法人化へ移行する予定
です。
さて,最終報告からみて国立大学が独立行政法人化された場合の国立大学附属
病院のあり方を考えてみます。企業会計原則がはいることで財務諸表(貸借対
照表や損益計算書)を作成し,公表される。病院内の不採算部門が廃止された
り,組織の再編や改変がつねに行われるでしょう。複数名の学外者を含めた役
員会が,病院の管理運営内容を決定し,病院長が執行してゆくことでしょう。
教職員は,現在のような国と契約を結んだ国家公務員ではなく,就業(労働)契
約を独立行政法人組織(学長)と交わす雇用形態にかわるでしょう。教授会や
評議会の役割は教学について審議することが主な仕事になるでしょう。国から
の運営費交付金は大学病院にどう適応するのか,不透明な部分もありますし,
余剰収益をあげた場合の処理はどうなるのかは想像の域を出ないのです。
この国立大学の独立行政法人化は,大学病院にとっての将来を考えるなら,次
は医療法人化にあることを念頭に入れておくことが必要だと考えます。最後に,
ゆとり教育などを含む教育全般の改革は,いわゆる通信傍受法や武力攻撃事態
法案など有事関連3法案や個人情報保護法案など社会全体の動きとの関連の中
で統合して検討しなければならないと考えます。