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山形大教育学部 「教員養成課程断念」までの動き  表の顔と苦しい現実と
 .[he-forum 4052] 朝日新聞06/02  
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『朝日新聞』2002年6月2日付

山形大教育学部 「教員養成課程断念」までの動き
表の顔と苦しい現実と

 
 50年余りの歴史を持つ山形大教育学部の教員養成課程が、2年後にも廃止
される。教員養成系大学・学部の統廃合を進めるという文部科学省の方針に従
い、山形、福島、宮城教育の「南東北」3大学の同課程が宮城教育大に一本化
されるからだ。山形大教育学部はこれまで、表向きは同課程存続を目指してき
た。しかし、内部では存続は難しいとみて、早くから新学部への移行を検討し
ていた。(日浅美和)

 「教育県・山形を支えてきた大学としての役割を、今後も担いたい」

 山形大の仙道富士郎学長は3月14日、そう発言した。この日、教員養成課
程の整理統合を話し合う山形、福島、宮城教育の3大学の連絡会議が初めて開
かれた。いずれ一本化される同課程を自分の大学に残したいという意思を、ま
ずは明確に主張したのだ。

 しかし3回目の会議があった5月16日には早くもトーンダウンした。同課
程を残したいとは言わず、「3大学が協力してパワーアップしていくことが大
事だ」と述べるにとどまった。

 教育学部の教授会の議論を受け、「断念せざるをえない」と述べたのは22
日。表面的には、わずか2カ月で180度の方向転換を迫られた。

 学生に教員免許取得を義務づけ、小中学校などの教師を計画的に養成するの
が教員養成課程だ。戦後、すべての都道府県に置かれたが、これを減らしてい
くのは今や国策になった。文科省の懇談会が昨年11月、近隣の複数の大学で
統合すべきだという報告書をまとめると、同省は各大学に強い働きかけを始め
た。

 同月27日の山形大教育学部の教授会では、統合後に教員養成課程を引き受
ける「担当大学」を目指すことで一致した。同時に「教員養成課程を置かない
場合もやむを得ない」ことも確認し、同課程を持たない「一般大学」の役割も
検討していくことを決めていた。

 文科省は昨年12月、同大教育学部に「地域事情だけでは単独で担当大学と
しては残れない」と伝えた。よほどの理由がない限り、特例は認めないという
趣旨だ。ある教授は「教員養成の単科大である宮城教育大がある以上、山形大
が担当大学になる可能性がほとんどないことは最初から認識されていた」と話
す。

 今春、山形大の教員養成課程を192人が卒業したが、正教員に採用された
のは15人だけ。山形県が採用した小中学校教師84人のうちでは、わずか8
人にとどまった。子どもの数が減り、教員採用数も減っている。この数年、採
用試験の合格者は全学生の10%未満、講師などを含めても、教師になる人は
20〜30%という状況が続いていた。

 これに対し、宮城教育大では今春、教員養成課程の258人のうち67人が
正教員に採用された。採用率は群を抜く。仙道学長は「教員養成の中心は、東
北の教育界をリードしてきた宮城教育大と認めざるを得ない」と言う。

 山形大と協議の場を持っている県教委は、(1)現職教師の研修機能(2)
付属校(3)希望する学生に対する教員養成機能――をどう残していくかが課
題だと考えている。長南博昭次長は「県独自の少人数学級も始まり、教育県と
して売りだそうとしている時だからこそ、山形大にサポートしてもらうことが
大切。本当の議論はこれからだ」と話す。

 山形大でも、県が求める課題を、教育学部を再編して設ける新学部に持たせ
る方向で検討中だ。新学部のキーワードとしては、「発達」「心理」「人間」
「地域」などが浮上しているという。

 全学的にも、2年後に国立大が独立行政法人化されることをにらんだ再編計
画が進行中だ。特に人文、理、教育の3学部がある山形市の小白川キャンパス
では、教育学部の改革を機に、各学部が大幅に再編される可能性がでてきてい
る。

 ■山形大学教育学部

 明治時代に開設された県師範学校が前身で、1949年の山形大創立ととも
に発足した。小中学校などの教員免許取得を義務づける教員養成課程が中心だ
が、92年には免許取得を義務づけない「新課程」も導入された。現在の入学
定員は教員養成課程120人、生涯教育課程75人、人間環境教育課程45人。
付属小・中・養護学校、幼稚園を持つ。