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独行法反対首都圏ネットワーク

☆一読のすすめー【紹介】神野直彦著『人間回復の経済学』(岩波新書)
 .2002.6.28 独行法反対首都圏ネット事務局  
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【紹介】神野直彦著『人間回復の経済学』(岩波新書)

 

東大経済学部教授神野直彦さんの新著「人間回復の経済学」は今ベストセラーとなっています。これを読むと現在の「小泉改革」を含めて先進資本主義国での新自由主義的改革の歴史的本質がよくわかります。また、この克服が21世紀初頭の人類史的課題であることも力強く宣言されています。私たちにとって、国立大学独法化を勇気を持って阻止することが、その人類史的課題の達成に応えることだと実感させる本です。“競争”“効率” “市場原理” が当然のように語られている殺伐とした世の中で、希望と勇気を与えてくれる本です。以下、同書からいくつか引用しておきます。

 

20世紀から21世紀にかけてのエポックに、日本は「構造改革」「構造改革」と絶叫し、強者が強者として生きていく競争社会をめざしてきた。人間は利己心に支配された「経済人」であり、競争原理に支配された市場という神の見えざる手に、人間の運命をゆだねなければならないと教唆されてきた。/そうした構造改革は、人間の社会を破局へと導きつつある。人間への信頼や人間のきずなが喪失し、凶悪な犯罪、自殺、麻薬などの社会的病理現象には枚挙のいとまがない。/人間は経済人ではなく、「知恵のある人」であることを忘れてはならない。(p168)

・人間性を喪失した未来を構想する構造改革が推進されていく責任は、経済学にあるといってもいいすぎではない。構造改革の失敗とは、経済学の失敗といえる。より正確に表現すれば、経済学の現実への適用の失敗なのである。(p185)

・人間の創造力は、抑圧からは生まれない。ブレーンストーミングのような自由な発想を生み出す組織が形成されなければならない。そのためには、自己実現の欲求を充足できるようなフラット型組織が必要なのである。/ところが、新自由主義的構造改革は、フラット型組織のようなノンテイラー主義ではなく、より人間の労働の最適化をめざすネオテイラー主義を志向してしまう。(p126)

・テイラー主義の欠陥を克服するには、機能別に組織をピラミッド型に形成するのではなく、立案(plan)執行(do)評価(see)という完結した職務循環を遂行できる組織単位を、フラットに組織化することである。(p111)