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独行法反対首都圏ネットワーク

基準の明確化が課題(焦点!大学評価を問う:上)
 . [he-forum 4041] 朝日新聞05/31 
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『朝日新聞』2002年5月31日付

基準の明確化が課題(焦点!大学評価を問う:上)


 大学を評価する制度づくりが急速に進んでいる。どんな「評価」がされ、そ
こに問題点はないのか。まず、第三者の評価をもとに、予算配分が決められる
ことになる国立大評価の仕組みを点検する。(社会部・宮坂麻子)

 国立大の独立行政法人化を議論した文部科学省の調査検討会議が今年3月、
最終報告を出した。早ければ04年度から始まる法人化をきっかけに、定期的
に国立大学を評価し、その結果を予算に結びつける提言が盛り込まれた。

 評価方法や評価項目、予算にどの程度反映させるかは、具体的に固まってい
ないが、図、メモのような流れが土台になる。

 「大学評価」が動き出した背景には規制緩和の波がある。

 文科省は91年、大学の設置認可を緩める代わりに質の向上のための大学自
身による自己点検・評価を導入した。それだけでは不十分と判断した文科省の
大学審議会は98年に「第三者評価」の必要性を答申した。

 同じころ、国立大法人化の動きが始まった。大学の自由裁量を増やす一方で、
事後チェックとして「評価」を導入する仕組みだ。「大学の品質管理」の意味
も込められていた。さらに、昨年3月、内閣の「規制改革推進3カ年計画」に
大学評価の検討が盛り込まれ、制度づくりが加速した。

 日本には、欧米のように確立した大学の評価機関はなかった。文科省は00
年、評価方法を研究するため「学位授与機構」を改組し、国の唯一の評価機関
として「大学評価・学位授与機構」をつくり、初めて評価を試行した。大学が
出した目標をもとに、同機構から委嘱された大学教員や経済人の委員が達成度
を評価する方法だった。今年3月、この00年度の評価結果が公表された。

 「教育・研究」の評価対象となったのは理学・医学系の各6学部・機構。ほ
かに、すべての国立大学を対象に社会貢献度を評価した。

 「教育・研究」のうち「学生の受け入れ方針」の項目では、京大医学部が面
接試験がないなどの理由で4段階の最低評価になった。

 法人化後、大学評価機構は「教育研究」を本格的に評価することになる。そ
の評価は、国立大学にとって最も重要な予算を左右しかねない。

 結果を受けて大学からは不満が続出した。「目標を低くすればいい評価にな
る」「自己評価が甘ければ評価も高い」「入試まで踏み込むのはどうか」。異
議申し立ては多くの大学から167件に及んだ。

 評価した委員側も不満が残った。大学側が自己評価した報告書をもとに、そ
の大学の幹部を呼んで疑問点を尋ねる形なので論述のうまいところが有利にな
る。明確な基準がないまま4段階のランク付けや評価の記述が調整されたとい
う。

 大学側は高評価を得ようと走りつつある。国立大学協会が8日に開いたシン
ポジウムには、多くの大学職員が参加した。教養教育と評価の在り方を考える
テーマだったが、「評価攻略法」を問う質問が相次いだ。パネリストは「目標
や自己評価は、根拠データがあるものを挙げることに徹することが必要」と言っ
た。

 法人化後も評価結果は公表される。これまでのように密室の折衝で公費の使
い道が決まるよりも、目に見える形で配分されるのは望ましい。

 しかし、予算を獲得するために、評価を意識した教育が始まったり、客観評
価しにくい学問が軽視されたりすることにもなりかねない。評価できるものと
できないもの。それを分けて考えなければ国立大は画一化する恐れがある。

 基準や方法があいまいなまま、結果を予算に反映させれば、公費の使い道が
さらに不透明になる。だれもが納得できる評価の確立が急がれる。

 ●国立大学の評価の流れ

 (1)各大学が6年間の目標案を文科相に出す(2)文科相はそれをもとに
大学ごとの中期目標・計画を作る(3)大学は、その目標の達成度を自己点検・
評価して同省「国立大学評価委員会(仮称)」に報告(4)「大学評価・学位
授与機構」が、自己評価をもとに「教育・研究面」の達成度を評価(5)結果
を受け評価委が財政など法人の「運営全体」を評価(6)委員会の意見を受け
文科相が予算を決める。