☆自己責任伴う大学評価を
. [he-forum 4004] 朝日新聞05/22
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『朝日新聞』2002年5月22日付
【直言】
自己責任伴う大学評価を
京都大学大学院医学研究科教授・本庶佑
国立大学の独立法人化を控え、大学の評価をいかにするかが大きな問題となっ
ている。注意しなければならないのは、評価する者の自己責任を伴わない評価
は、主観的な価値観を押しつけ、お座なりとなる危険性が高いという点である。
どのレストランを選ぶかに始まり、就職や投資先企業を決めるときなど、
「評価」は日常の行動決定についてまわる。誤って評価した責任は自己にはね
返ってくる。
大学は、研究と教育とで評価される。
研究は、教官人事を通じて日常的に評価されている。良い人材を集めなけれ
ば大学の研究費は伸びず、優れた学生も集まらないという自己責任を伴うため、
教授会は真剣かつ懸命に選考に取り組んでいるはずである。
人事と並んで重要な研究評価である研究費の審査制度は、現状では自己責任
があいまいで改善の余地が多い。評価者の氏名と評価内容を応募者に公開する
などして、審査員の自己責任を明確にすることが大切である。
教育の評価も、受験生や卒業生を採用する企業は自己責任で行っている。し
かし評価のための教育内容の情報はまだ十分公開されていない。
国の権威に基づく公的機関による大学評価は、自己責任を伴わず画一的とな
る危険性がある。とすれば、こんな方法はどうだろう。評価データの収集と分
析を専門の民間会社に任せ、大学は無償かつ無条件で必要情報を提供する。一
方、大学評価をしたい企業や官庁はデータを買う。分析の信頼度が評価会社の
経営を左右するから、自己責任も明確にできる。米国では、民間データ会社に
よる大学ランキングは一般的である。
要は、社会全体として「評価は自己責任で行う」という考えと行動を確立す
ることである。
<筆者>京都大学大学院医学研究科教授 免疫学者。米科学アカデミー会員。