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☆教員養成大学再編/綱引き回避はいいことか
 
.[he-forum 4003] 河北新報社説05/24
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『河北新報』社説  2002年5月24日付

教員養成大学再編/綱引き回避はいいことか


 宮城、山形、福島3県にある国立の教員養成系大学・学部を、どう再編する
か。宮城教育大と山形大、福島大の協議がだいぶ具体化してきた。

 教員の計画養成を行う「担当校」機能の維持を、福島大に続いて山形大が断
念し、宮教大に一本化する。そんな方向が固まり、担当校をめぐる「綱引き」
はどうやら回避されそうだ。

 地域間の綱引きは、それぞれが我を張って不毛な言い合いに終わることが多
い。しかし、語弊のある言い方になるが、今回はもう少し緊迫した綱引きを演
じてほしかったと思う。

 教員養成機関は各県に1つという長年の原則が消え、全国の半数以上が「空
白県」になりそうな割には、再編論議が低調だと感じるからだ。このまま、文
部科学省主導の流れにのみ込まれるのでは寂しすぎないか。

 少子化で教員の採用枠が狭まり、教員養成大学・学部の定員が減少している。
文科省は国立大全体の再編統合構想の中で、特にこの点を重視し、近隣県での
統合方針を打ち出した。「半減以下」が教員養成系再編の目標といわれる。

 東北では弘前大、岩手大、秋田大の北3大学と、宮教大、山形大、福島大の
南3大学の2グループに分かれた検討が始まり、南3大学は2月に連絡会議を
設置した。

 宮教大は東北唯一の教員養成単科大学として引き続き担当校機能を担う姿勢
を示し、一方、自然科学系学群創設を最優先する福島大は先月、担当校断念を
正式に表明している。

 効率化や採算性の観点に偏った再編は、地域教育に格差を生むのではないか。
大学関係者からは折々に、そんな反発の声が上がってきた。地域からの後押し
として注目されたのが今月中旬、「レベルの高い教員を養成してきた山形大を
担当校にするべきだ」と語った高橋和雄山形県知事の発言だ。

 長い歴史を持つ教員養成機関が地元からなくなってもいいのか。山形県知事
の発言を、地域の不安が込められた基本的な問い掛けと考えたい。これにどう
答えていくかという問題意識こそが、再編協議の出発点になるはずだ。

 今後の論議が宮教大か山形大かの二者択一にとらわれてしまう事態は避けら
れそうだ。しかし、問い直したいことは幾つもある。

 担当校は1つという選択肢しかなかったのか。文科省の内々の方針だとすれ
ば、その論拠は何か。それをはねのける地域独自の論理は、もう見いだしよう
がないのか。担当校機能を隣接県の大学で分かち合うことは不可能か。

 それぞれの大学は、教育界を中心に人材を送り出してきたほか、現職教員の
研修の場としての役割も果たしてきた。文科省は空白県対策として、教員研修
用の特別教室開設を掲げている。

 教員の専門性を高めるという長期的な課題に取り組むために、文科省案の実
効性を十分吟味する必要がある。教員再教育の方法論を3大学の連携体制にしっ
かり組み込みたい。

 不毛な綱引きを回避した分、改革へのエネルギーを連携の設計図作りに注ぎ
込んでほしい。本来の自己主張がないまま統合を迎えるのであれば、その後の
推進力は生まれない。