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独行法反対首都圏ネットワーク

☆国立学校特別会計の借入金
 
.[he-forum 3963] 国立学校特別会計の借入金
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北大の神沼です。

 国立学校特別会計の借入金がどのくらいの金額になっているのか、前から知りた
いと思っていたのですが、調査検討会議発行の緑色の冊子「新しい『国立大学法人』
像について」(2002年3月26日)の資料欄にグラフで紹介されています。

 グラフは1964(昭和39)年から2002(平成14)年まで連年で示されていますが、
数字が明記されているのは以下に紹介する年度だけです。それでも国立学校特会の
借入金がここ20年ぐらいのあいだにウナギ登りに増えてきたことがわかります。

<借入金残額(=元金+利子)の推移>
 年度         金額
1964年       20億円
1965年       68億円
1970年     206億円
1975年    1333億円
1980年    5167億円
1985年    6743億円
1989年    8051億円
1993年 1兆1025億円
1998年 1兆3733億円
1999年 1兆3700億円
2000年 1兆3463億円 
2001年 1兆3122億円
2002年 1兆2860億円(予定)

 国立学校特会が借入金をすることができるのは、次の3つの場合だそうです。
(1)附属病院の施設整備事業
(2)特別施設整備事業
(3)移転のための施設整備事業

 この3つはいずれも、借入金を返済できるので借り入れするという建前になって
います。「(1)附属病院の施設整備事業」は文字どおり附属病院の整備のためです
が、施設整備によって診療収入が増収になるので借入金の返済が可能であるという
理屈だてです。
 「(2)特別施設整備事業」というのは、国立学校の施設が老朽化、狭隘化して、
教育研究に著しく不適当になった状態を解消するために実施する施設整備です。こ
の場合は、一定の理由により不用となる財産を処分することによって収入が見込め
るという建前になっています。
 「(3)移転のための施設整備事業」は、移転に要する施設費を支弁するために必
要なので借り入れするという趣旨でして、当該の移転に伴って不用となる財産を処
分するので償還できるという理屈になっています。

 しかしこれらの理由はあくまで建前でして、1兆円を超える借入金は実際問題、
とうてい返済できないのではないでしょうか。

 ところが、国立学校特会の借入金は上に示した金額だけではないようです。2001
年3月7日に開催された国大協設置形態検討特別委員会の第11回会議のなかに次の
ようなやりとりがあります。

「・・・
 ・・・
○財務会計を議論するにあたって、国立学校特別会計制度をどうするかは根本的問
題の一つであるが、実際を把握するため、現在の国立学校特別会計を独法的な会計
処理をした場合どういう実態になるかを整理している。いずれ整理が終了した段階
で報告するが、貸借対照表ベースでいうと、財投からの借入金が1兆円の他、建設
国債でつくった建物・船等の経費が累積で4兆円になる。現在の国立学校特別会計
の貸借対照表は左右均衡だが、法人化された場合には、今の会計基準でいくと、累
積ベースで合計8兆円程度の累積赤字が新しく出てくることになる。
・・・
・・・
○合計すると8兆円の借入金があるとの説明だが、実際問題として、仮に法人化し
たとしても返済できる金額ではない。これは国立大学に投資されたものであるが、
国家施策として実施されたもので、仮に法人化した場合に借金として負うべきもの
か疑問である。国鉄精算事業団のような形で処理していただければ最良である。
○そのような形で棚上げするというのが、私どもの第一順位であり、このことは機
会あるごとに主張しているが、一方では借りたものは、ある程度、返済するのが当
然であるという意見もある。また、棚上げの仕方についても、全体として棚上げす
るのか、大学に割り振った上で棚上げするのか、これによって大分性格が違ってく
るので、この点も議論している。
・・・
・・・」

 国立学校特会の正確な借入金残高がはたしていくらになっているのか、この議事
録からこれ以上はわかりませんが、いずれにしても気の遠くなるような金額である
のは間違いないようです。

 かくも莫大な借入金−その多くは附属病院の施設整備だと思いますが−は、どう
やって返済するのかということよりも、その前に、いかなる経緯によってこれほど
の金額が蓄積したのか、詳細に、全面的に明らかにすることが重要だと思います。
経過が明らかになれば、責任の所在も自ずと明らかになるはずです。責任を明らか
にしないで借金返済の対策を考えるのは、財政当局者の失政がうやむやになるだけ
で、その失政のつけが何の罪もない大学職員(特に附属病院職員)の労働強化と学
生納付金の値上げになって跳ね返ってくるばかりでしょう。