☆科大学院 熱帯びる誘致合戦 中四国の大学
[he-forum 3952] 山陽新聞05/16.
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『山陽新聞』2002年5月16日付
法科大学院 熱帯びる誘致合戦 中四国の大学
国立大法人化で生き残り対策 財界、弁護士会と連携
司法制度改革の柱となる新たな法曹養成機関「法科大学院(ロースクール)」
が二〇〇四年度スタートする。中四国では岡山、広島、香川など七大学が六つ
の大学院を計画しているが、何校開設されるかは不透明。地元弁護士会や財界
などと連携し、“誘致合戦”が熱を帯びている。(井上建吾)
岡山大は入学定員五十人、教員二十人規模で計画を進める。〇四年開設なら
国への設置申請は来春。「逆算すると、弁護士ら実務家四人程度を含む教員の
採用と教育カリキュラム策定などのめどは今秋までに付けておかなけばならな
い」と岡田雅夫法学部長は言う。
■県民運動へ
タイムリミットが迫る中、三月には全学的な「設置推進委員会」が発足。岡
田学部長は二月、石井正弘岡山県知事に支援を要請し、六月には行政、財界、
報道機関のトップを発起人とした「岡山大学法科大学院創設期成会」も結成さ
れる予定。県民運動へと機運は高まる。岡山弁護士会の協力で、地域の法律紛
争の実情に即したカリキュラムも検討中で、試案が六月まとまる。
定員六十人、教員十八人規模の構想を掲げる広島大も四月から、大学院の授
業の一部を弁護士と教員がチームで担当。実践的な教材や教育内容を研究し、
実務家教員の人選も行う狙いだ。
■基準厳しく?
国の昨年末の調査では国・公・私九十八校が設置を計画。国は「条件を満た
せば認可する」と総量規制はしない方針だが、ある国立大教員は「予算面や教
育の質確保の観点から国は基準のハードルを高くし、数を絞り込むだろう。中
四国はせいぜい三校。一校になるかもしれない」とみる。
中国地方では他に島根、山口大、「一校が限度」との見方が強い四国では愛
媛、松山、香川大が名乗りを上げる。愛媛、松山大は全国でも珍しい国・私連
合大学院構想を掲げ、「連合で香川大とも話し合う用意はある」(矢野達雄愛
媛大法文学部教授)と言う。しかし香川大は「基本的には単独で設置したい」
(中山充法学部教授)。
法科大学院はもともと司法制度改革の流れの中で生まれたが、国立大の法人
化などで大学間競争が激化する中、法学部だけでなく大学自体の生き残り策に
もなっている。
■「地域に影響」
地域への影響も大きい。
岡山弁護士会の登録者は現在百七十三人いるが、岡山、倉敷、津山市に集中
する。岡山地裁の民事訴訟件数は〇一年度約二千三百件と十年前に比べ七百件
も増加。消費者問題や医療過誤など紛争内容も複雑化している。
「弁護士過疎をなくし、どこでも公平な司法サービスを提供できる体制が不
可欠。地域に定着する弁護士は地元で養成しなければ」と岡田・岡山大法学部
長。
一月に発足した岡山弁護士会法科大学院設立支援本部の荒木信之、水谷賢両
弁護士は話す。「法科大学院がなければ司法や経済、市民生活に影響し岡山が
地盤沈下しかねない」
法科大学院 現在年間1000人程度の司法試験合格者を2010年ごろま
でに3000人にし、法曹(裁判官、検察官、弁護士)人口の拡大と質の向上
を目指す司法制度改革の柱。標準修業年限は3年。教員の2割以上が弁護士な
ど実務家。修了者の7、8割が新司法試験に合格すると想定される。