トップへ戻る   東職HPへ戻る
独行法反対首都圏ネットワーク

☆法科大学院―改革の理念を貫くには
 
. [he-forum 3951]  (朝日新聞05/16)
---------------------------------------------------------------

 法科大学院―改革の理念を貫くには
朝日新聞ニュース速報

 新たな時代にふさわしい法律家を育てるための法科大学院(ロースクール)制度の骨
格が、ようやく見えてきた。04年4月の開校を目指して準備は急ピッチだ。
 中央教育審議会は、大学院の修了に必要な単位数や教員と学生数の割合をどうするか
など、必要な要件について先に中間報告をまとめた。教育の中身を評価する外部の機関
や評価の基準、新しい司法試験のあり方などは、政府の司法制度改革推進本部で細かく
検討している。
 司法を身近で頼りがいあるものにするために、諸外国と比べて極端に少なかった法律
家を大幅に増やし、質も引き上げる。そうしたねらいは分かるが、改革の命運を握るの
は、それにふさわしい法科大学院を実際につくれるかどうかだろう。
 寄せる期待が大きい一方で、心配もいろいろある。複雑な思いで制度設計の行方を見
守っている人々も多い。
 まず素朴な疑問は、法科大学院という「箱」を用意しただけで密度の濃い授業ができ
るようになるのか、という点である。自らの改革を怠ってきた大学のぬるま湯体質が、
不信の背景にある。
 それに応えるには、大学側が魅力あふれる教育をどう実現するかを、分かりやすく国
民に示す必要がある。各大学ともバスに乗り遅れまいと「箱」作りに熱心になるあまり
、中に何を盛るのかという視点をなおざりにしてはいないか。
 折から全国の主な国公私立大学が一堂に会し、カリキュラムや教育方法などを検討す
るための場ができた。法科大学院協会の設立準備会だ。入学者選抜の方法や学生への奨
学援助の充実などの課題についても、提言や要望をしていくという。
 国民に情報を発信し、大学側の意気込みを示すよい機会である。大学は変わるのだと
いう覚悟をぜひ見せてほしい。
 もう一つの不安は、制度作りの根幹にかかわる問題である。
 いまは合格率数%という司法試験の下で学生の多くが暗記中心の勉強に追われている
。こうした試験ではなく、まじめに授業に取り組んだ多くの学生が合格できるような、
「プロセス」重視の養成システムに変えること。これが、法科大学院構想を支える基本
的な理念だった。
 その理念を生かすには、教育プロセスがきちんとしていなければならない。教育の中
身が一定水準に達しない法科大学院には「退場」してもらうような、外部による厳しい
評価システムが必要だ。
 もし、そうした仕組みが不十分なままたくさんの法科大学院ができると、結局はまた
司法試験による選抜に頼らざるをえなくなる。プロセス重視という基本理念は大きく後
退してしまいかねないのだ。
 難しい課題は多い。大学と法曹界が協力し合い、次代に向けて改革理念にかなった司
法の土台作りを進めるべきである。
[2002-05-16-00:07]