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独行法反対首都圏ネットワーク

☆なくなる教員養成課程
 
. [he-forum 3909] 福島民報論説05/06
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『福島民報』論説  2002年5月6日付

なくなる教員養成課程


 福島大教育学部の学生や卒業生にとって衝撃的なことが4月下旬、明らかに
なった。臼井嘉一学長が、教員養成課程の存続が困難な見通しであると語った
ことである。自然科学系の増設と、教員養成系大学・学部の再編・統合の受け
皿となる「担当校」受け入れを両立することが難しいためだ。

 教育学部は、明治初期に発足した福島師範の流れをくみ、本県の教育を支え
てきた。その卒業生は3万人を超えるだけに、存続を願ってきた関係者の驚き
は大きいことだろう。

 国立の教員養成系大学・学部の統廃合は昨年11月に提出された文部科学省
の有識者懇談会の報告書に基づく。少子化などで新卒者の教壇に立てる学生が
年々減少していること、交通通信網の発達ですべての都道府県で教員を養成す
る必要性が薄れたことなどが統廃合の理由とされる。

 福島大は、南東北の山形大、宮城教育大と連絡会議を設け、検討を進めてき
た。この中で、福島大は「担当校」を目指して、いったんは他大学の定員を引
き受けて教員養成課程の定員を増やす案をまとめた。福島大は教員採用率が全
国でもトップクラスの実績を積み重ねてきただけに当然の方針だったといえる。

 しかし、文部科学省との折衝の中で、教員養成の「担当校」となる教育学部
充実と、悲願ともいえる自然科学系の増設を同時に実現するのは困難との感触
を得た。背景には、福島大が「担当校」となった場合、教員養成の専門大学で
ある宮城教育大が存立する基盤がなくなってしまうこともあるものとみられる。

 福島大に教員養成課程がなくなればどうなるか―。福島大の他の課程でも教
員免許を取得することは可能だが、教員養成課程で学びたい学生は他県の大学
を志願しなければならない。県北や県中などの自宅から通学できたはずの学生
にとっては経済的な負担がかなり大きくなるだろう。

 何よりも、本県教育そのものに大きな影響を与えるだろう。福島大は県教委
と協議する方針だが、教員養成課程廃止に伴う不都合、不便が極力生じないよ
うな体制づくりを望みたい。例えば、現職教員の再教育、研修については、
「一般校」に置かれる「教職センター」を活用するなどの機能をしっかり整え
てほしい。

 郡山、会津若松、いわきの3市では、テレビ会議システムを利用した遠隔授
業で教育学研究科(修士課程)に学ぶ現職教員が多数いる。こうした制度も後
退することがないような配慮が求められる。

 同時に福島市内にある付属の小学校、中学校、幼稚園、養護学校が見直され
ることになる。教育実習に必要だとして小学校は1学年4学級ずつあるが、教
員養成課程がなくなれば、市内でもトップクラスの大規模校である必要はなく
なる。周囲にある市立の福島一、福島二、福島四、清明などの小学校は児童数
の減少で悩んでおり、存続するにしても定員の削減は避けられないだろう。

 教員養成課程は地元と密接なつながりがあるだけに、廃止する場合には禍根
を残さないよう県教委などの関係機関と十分に協議してほしい。

(佐藤 晴雄)