☆生命科学など4分野、民間の研究開発の税優遇へ
[he-forum 3906] 読売新聞05/05.
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『読売新聞』2002年5月5日付
生命科学など4分野、民間の研究開発の税優遇へ
財務省は4日、科学技術立国への転換を急ぐため、生命科学やIT(情報技
術)などの成長が見込まれる重点分野に限って、研究開発費を税制優遇する2
1世紀型の「殖産興業税制」を創設する方針を固めた。対象分野の研究開発費
の一定割合を法人税額から控除する制度で、2003年度税制改正での導入を
目指す。同省は、与党や産業界が求めている企業活性化税制の中核になると位
置づけている。政府の経済財政諮問会議が6月にまとめる税制抜本改革の「基
本方針」に盛り込まれ、同月の主要国首脳会議(サミット)で日本が提示する
追加デフレ対策の柱になる見通しだ。
殖産興業税制の対象は生命科学、IT、環境、ナノテクノロジー・材料の4
分野と、その関連分野で、これらの分野は諮問会議が昨年6月に決めた「経済
財政運営の基本方針(骨太方針)」に明記されている。企業が対象分野で研究
開発を行う場合、費用が売上高の一定割合を超えることを条件に、研究開発費
の一部を法人税額から控除する仕組みが検討されている。
アメリカには、売上高に占める研究開発費比率が1―2%を超えた企業を対
象に、研究開発費の3%前後を法人税額から控除する制度があり、こうした例
も参考に適用条件や控除割合などを詰める。対象となる研究開発費の範囲は、
製品の製造や、技術の考案・改良などにかかる人件費や、原材料費、委託試験
研究費などになる見通しだ。
研究開発費に関しては、現在も一定割合を法人税額から控除する優遇税制が
あるが、原則として、その年の研究開発費が前年実績を上回るなどの条件を満
たした場合しか対象にならない。最近は不況で研究開発費を減らす企業も多く、
産業界には「優遇を受けにくい」との声も根強い。新税制は、研究開発費が前
年より増加しなくても適用を受けることが可能で、研究開発を促す効果が、よ
り期待できる。
ただ、国が産業の重点分野を決める「殖産興業」方式を巡っては、「民間の
創意工夫をしぼませる」(エコノミスト)との批判もある。産業界は研究開発
の対象分野を限定せずに優遇税制を拡充することを求めており、こうした点で
調整が難航する可能性もある。