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独行法反対首都圏ネットワーク

ナノテクで日本のシリコンバレー目指す  京の知的クラスター計画
  .[he-forum 3885] 京都新聞04/30
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『京都新聞』2002年4月30日付

ナノテクで日本のシリコンバレー目指す
 京の知的クラスター計画
 

 大学を中心に新しい産業づくりを目指す文部科学省の「知的クラスター(集
合体)創成」事業の対象地域に今月十五日、京都府内から京都市域と関西学研
都市が選ばれた。経済停滞に悩む京都市域では、京都大桂キャンパス(西京区)
を拠点に京都が誇るものづくり技術を生かした産業育成を目指す。「目標は日
本版シリコンバレー」−。産学官の思惑が重なって連携事業への期待ががかつ
てなく高まっている。

 「全国十二地域のうち京都の二つが選ばれるとは快挙だ」。京都商工会議所
の村田純一会頭は、文科省の満額回答に喜びとともにほっとした表情を見せた。

 今後五年間実施される知的クラスター事業には全国三十地域が立候補、年間
五億円に上る予算獲得をめぐって激しい誘致合戦を繰り広げた。京都も一時は
落選の危機が伝えられ、村田会頭や荒巻禎一前知事らが相次いで陳情に足を運
び、巻き返した経緯があった。

 ▽テーマ多彩に 

 京都市域の京都ナノテク事業創成クラスター計画は百万分の一ミリというナ
ノ単位の超微細技術を活用、革新的な商品や産業を生み出すのが目標だ。京都
大を中心に立命館大、京都工芸繊維大が産業界との共同研究で電子部品や環境、
医療、繊維の新事業開拓に挑む。

 開発テーマは超微細加工による光ディスクへの高密度記録技術、省エネ型の
半導体開発など多岐にわたる。すでにオムロン、ロームなどが参画を表明。最
先端の大学研究と企業の商品開発力が手を携えることで早期の実用化が期待で
きる。生まれた新技術の特許化や企業、研究者自身による事業化などで年間百
−百五十億円の経済効果と五千−七千五百千人の雇用創出を目標にしている。

 ▽大きな起爆剤

 産業界にとっては、世界トップ水準の研究実績がある京都大をはじめ大学側
との連携や技術移転のルートが確立し、競争力のある商品、事業開発への可能
性が広がる。村田会頭は「二十一世紀の京都産業に極めて重要で、積極的に支
援したい」と期待を込める。

 これまで産学連携に慎重だった京都大は、桂キャンパス開設を機に大きく足
を踏み出す。連携拠点の国際融合創造センターを中心に共同研究の拡大を目指
しており、松重和美・同センター長は「知的クラスターによる連携事業が大き
な起爆剤になる」と歓迎する。

 背景には国立大の独立行政法人化への対応があり、財政基盤の確保に向けて
外部資金を引き込む狙いがある。松重センター長は「大学が受け身でなく能動
的に進めることで地域や社会への貢献にもつながる」と説明。隣接地に民間研
究所やベンチャー企業を誘致する桂イノベーションパーク構想も打ち出してい
る。

 ▽潜在力を発揮

 事業主体の京都市は今後、大学や産業界と推進体制などを協議し、五月中に
基本計画を文科省に提出、七月にも事業開始を見込む。京都高度技術研究所
(ASTEM、下京区)が推進母体となり、同研究所六階に本部事務所を置く
予定だ。

 京都市が今月創設した市スーパーテクノシティ推進室の白須正室長は「あら
ゆるプロジェクトを通じて、大学や企業が持つ潜在力を生かした産業育成を図
り、雇用の場や税収の増加につなげたい」と産学官の連携体制づくりに意欲を
見せる。

 京セラ、ロームなど戦後、数多くの世界的なベンチャー企業を生み出してき
た京都。ナノテク事業創成クラスター計画には、二十一世紀のものづくり都市・
京都の将来がかかっている。