☆振興策の目玉、大学院大学/構想絶賛、前途は多難
[he-forum 3883] 沖縄タイムス04/30.
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『沖縄タイムス』2002年4月30日付
振興策の目玉、大学院大学/構想絶賛、前途は多難
内閣府が新たな沖縄振興策の目玉と位置付け、世界最高水準の自然科学系大
学院大学を創設する沖縄新大学院大学構想が、海外の研究者から高く評価され
た。二十七、二十八日(現地時間)に米・ロサンゼルス近郊で開かれた第一回
インターナショナル・アドバイザリー・コミッティ(国際顧問会議)。ジェロ
ム・フリードマン氏(物理学)らノーベル賞受賞者を含む一流の研究者の関心
を引き付け、今後のバックアップを取り付けることに成功した。学長候補選考
委員会の設置や国際セミナーの沖縄開催など具体的な提言を受け、二〇〇六年
九月の開学に向けた動きが本格化する。(東京支社・浜元克年、政経部・上間
正敦)
「インポータント・プロジェクト(重要な計画)」「ワンダフル・プロジェ
クト(素晴らしい計画)」。第一回会合では、ノーベル賞受賞者を含む各委員
から、大学院大学構想を絶賛する声が相次いだ。
「国際性」「柔軟性」を掲げる同構想では、教授・学生の半分を海外から受
け入れ、授業もすべて英語で行う。研究者らはこの点について「科学技術の共
通語は英語であり、グローバル化に必要。硬直した日本の大学や学界の在り方
を変えてほしい」との期待を口にした。
「いかに優秀な人材を集めるかが成否の鍵を握る」(尾身幸次沖縄相)とし
ているだけに、ノーベル賞受賞者ら一流の研究者からの賛同は、構想実現に大
きな弾みをつけた。稲嶺恵一知事が行った沖縄の自然や環境、文化、歴史の紹
介も好評を得た。
国とスクラム
尾身沖縄相が昨年六月に提唱し、わずか五年余で開学を目指すという異例の
スピードで進む同構想。「厳しいスケジュールで、一日も無駄にできない状況」
(内閣府)という中、構想の取りまとめや用地選定、学長・教授陣の選考など、
一段とスピードアップが求められる。内閣府幹部は「研究者らの後押しをお願
いするつもりが、逆にこちらが尻をたたかれた感じだ」と気を引き締め直す。
一方、建設費八百億円、年間運営費二百億円と巨額に上る財源確保のめどは
立っていない。「財務省との交渉は難航が予想される」(尾身沖縄相)という
最大の壁を乗り越えるためにも、国の動きと連動した県の強力な取り組みと、
構想実現に向けた県民全体のコンセンサスづくりが課題となる。
「実務」は目前
内閣府と県は、六月二十八、二十九日の第二回会合までには、大学院大学の
適地としての考え方も整理しながら、幾つかの候補地選定に向けて作業を進展
させる見込み。多くの地域が誘致要請に動いているが、研究や居住環境、企業
集積など知的クラスター(集積地)が可能な広大な面積を併せ持った適地の選
定は容易ではない。県にとっても、国任せにできない「実務」が目前に迫って
いる。
県首脳は「投げ込んでくる剛速球を後逸せず、しっかり受け止めることがま
ずは大事。できればどんな球を投げてほしいか、サインも出せるようになれば
なおいい」と話し、内閣府の要求に十分応えられるような最大限の体制や取り
組みが必要との認識で一致している。
半面、「県民の盛り上がりがない」(県企画開発部)状況は懸念材料の一つ。
新大学院大学が沖縄の振興にとってどのような役割を果たすのか、その実現可
能性も含めて県民に対する分かりやすい説明が求められる。
知事、環境整備に意欲
沖縄新大学院大学構想の第一回国際顧問会議に出席した稲嶺恵一知事は二十
九日夜、米国から帰任。「議論が終わらず、ノーベル賞学者らが沖縄のことを
自分の子のことのように一生懸命になって考えた」と述べ、会議メンバーの全
面的支援を得て成功裏に終えた初会合を振り返った。
六月末に県内で開かれる第二回会合について、世界最高水準の大学院大学に
ふさわしい立地環境の整備など「具体的な作業を詰めていく中で沖縄が要求さ
れるものが多くある」と述べ、気を引き締めた。
同大学の設置場所については、会合で具体的な発言はなかったとしたが、知
事は「(ふさわしい候補地は)そう多くはないと思う」とし、教育や医療、付
属研究機関や民間企業などの立地スペースなどの条件を挙げた。