トップへ戻る   東職HPへ戻る
独行法反対首都圏ネットワーク

☆通則法貫徹の文科省『最終報告』を受け入れた4.19国大協臨時総会
 2002.5.28独立行政法人問題千葉大学情報分析センター事務局.
--------------------------------------------------------------

独行法情報速報

No.16

特集:政策議論に基づく学長選を

 

2002.5.28独立行政法人問題千葉大学情報分析センター事務局

 

通則法貫徹の文科省『最終報告』を受け入れた4.19国大協臨時総会

4.19国大協臨時総会は、「通則法に基づく独法化に反対する」というこれまでの方針を投げ捨て、通則法に非公務員化を加えた最悪の独法化=国立大学法人化を謳った文科省『最終報告』を了承し、「この最終報告の制度設計に沿って、法人化の準備に入る」(会長談話 http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe3853.htm)とした。総会の経過は、鹿児島大学長(http://www.kagoshima-u.ac.jp/univ/president/0204report)、首都圏ネットワーク(http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe3896.htm)などによって報告されている。それらによれば発言の「ほとんどは『新しい国立大学法人像について』に反対、懸念、不安を示すもの」であったにも関わらず、「会長談話」承認という形で自ら屈服した国大協執行部(正副会長・理事会)の歴史的責任は重大である。

 

 

なぜ屈服を余儀なくされたのか

責任は国大協執行部だけにあるのではない。個々の大学も省みる必要がある。ここでは、独行法をめぐる情勢が急展開したこの1年間における千葉大学の対応を振り返ってみよう。

 

第1に、大学自治の基礎単位である部局教授会レベルで、情勢を系統的に分析し、折々に批判的見解を表明するとともに、01年9月の『中間報告』に対する正式なパブリックコメントを提出したのは、文学部と理学部のみであった。本センターが繰り返し千葉大学評議会ならびに学長に対して正式な見解を出すように提言したが、無視されたのである。そして、少なくない大学が提出したパブリックコメントを千葉大学が作成しなかったことは重大な誤りであった。

 

第2に、独法化問題の分析作業は独法化対策検討委員会が担うべきであったが、同委員会の活動は極めて貧弱であったと指摘せざるを得ない。そのことを端的に示すのが、2月19日付同委員長文書である(【開示1】参照)。

【開示1】独法化問題に関する検討事項について

本年2月12日開催の部局長会議において、本委員会の審議状況についての質問があり、学長から再度検討を行うよう指示されました。ついては、昨年9月27日に文部科学省の調査検討委員会が取りまとめた中間報告を踏まえて、各自再度検討の上、3月8日(金)までにEメールにて総務部企画広報室企画係あて提出下さるようお願いします。

ここには1月25日の閣議決定と同日の文科省調査検討会議連絡調整委員会によって非公務員化へと大きく方針転換されたという情勢認識(本センター「速報」N0.13:2月15日付)は全く見られず、関連資料も配布されていない。検討対象も驚くべきことに、既に他大学が4ヶ月前にパブリックコメント準備過程で検討の終了している『中間報告』であった。

 

第3に、独法化の実質的先取り作業が進められた。まず、校費重点配分制が導入されたが、結局、審査方法、審査委員等は公開されず、我々が表明した懸念は深まるばかりである(「速報」No.5,7,12など参照)。さらに、重大なのは、学長から昨年11月研究組織から分離した教員組織案が突如提出されたことである(「速報」No.10,11,12参照。学内各方面からの批判で保留状態。)。同様な案は昨秋一斉に各大学で出されており、独法化の内実づくりを目指す文科省の示唆に基づいて学長が提出したのではないかという懸念が払拭できない。

以上、本質的議論とパブリックコメントなど公式見解公表という2つの重要作業を回避する一方、独法化先取りを事実上進めたというのが、この1年間の千葉大学執行部の姿だったのではないか。屈服は実は千葉大学執行部においても準備されていたのである。しかし、執行部の態度に変更を迫るほどには学内世論を盛り上げられなかったという冷厳な事実も直視しなければならない。

 

 

千葉大学においても独法化準備始まる

 

【開示2】学長メッセージ(抜粋)http://www.chiba-u.ac.jp/message/president/corporation.html)

1.3月29日に千葉大学将来計画検討委員会の中に,次の5つのワーキンググループを設置しました。組織業務委員会(◎草刈),目標評価委員会(◎五十嵐),人事制度委員会(◎多賀谷),財務会計委員会(◎松田),病院組織運営委員会(◎伊藤)(◎印は委員長)。

そして,千葉大学としての法人化に対する具体的制度設計の検討に入っています。本年6月?7月中に結論を得て,将来計画検討委員会での議論を経て評議会に提出する予定です。

2.これと並行して4月30日に,最終報告に記載されている「国立大学法人(仮称)における中期目標・中期計画の記載事項例」を別綴として,各部局長並びにセンター長に配布し,中期計画に関して,本年度中に詳細に亘り,準備を行うようお願いをしました。

3.本大学としての中期目標は別に「策定委員会」を発足し,検討する予定です。

 

【開示3】関東甲信越地区の「人事関係事項打合せ」

5月9日東大において関東甲信越地区の「国立大学法人化に伴う人事関係事項打合せ」が行われた。ここでは、予め文科省から指示のあった任用、給与、研修、福祉、その他の項目ごとに各大学から“考え方”“要望”“質問”をまとめたものが資料として提出された。人事関係事項については、ほとんどの項目が今年度中に、いくつかの項目は03年1月までに、原案の検討・決定がなされようとしている。千葉大学では、4月1日に発足した「大学法人化検討事務協議会(主幹=専門員1、主幹付=専門職員3)」が担当している。開示希望の方は本センターまで。

 

【提言1】緊急に情報公開システムの構築を

【開示2】【開示3】で紹介したように、準備作業は既に事実上始まっている。法案も上程されておらず、もちろん成立もしていない現段階で、こうした準備作業が業務として進められているのは、民主主義の観点から異常であることをまず指摘しておきたい。少数の執行部関係者が非公開で議論するのではなく、作業の状況や関連情報を速やかに公開するシステムの構築が緊急の課題である

 

 

【提言2】学長選挙:政策議論の深化を期待する

 

1.政策議論は今なぜ必要か:国大協の屈服を乗り越え、状況を主導的に切り拓くために

国大協総会が了承した『最終報告』には未検討の部分が相当残っており、具体的な制度設計もなされていない。国立大学法人法なるものも未提示である。従って、私達は、“国大協で了承されたのだから、もうどうしようもない。”という態度をとることはないし、とってはならない。法案作成過程を公開させ本質的批判を突きつけるとともに、その法案の国会上程成立阻止の国会闘争を準備する必要がある。文科省から提示されるであろう制度設計に対しても独法化の内実に本質的制約を与える政策を対置する必要がある。

千葉大学では6月6日(?7日)の投票に向けて学長選挙活動が行われている。今回の選挙で選ばれる学長は、04年4月に移行する予定の国立大学法人制度設計と準備作業に関わるだけでなく、03年4月までの中期目標案・計画案作成過程を通じて6年間にも及ぶ第1期全体に事実上責任を負うことになろう。従って、候補者諸氏は、独法化にどのように対処するのか、一般論ではなく具体的な政策を提示し、有権者の判断を仰ぐ義務がある。

 

2.取り上げられるべき論点

学長候補者諸氏には、検討すべき多数の事柄のうち、少なくとも管理運営関係について政策の提示を求めたい。以下に論点を列挙する。

 

I.組織

1.管理運営組織

 「最終報告」は、大学における管理運営の中心機関として役員会、運営協議会、評議会の3つを設けているが、その位置づけ、実際の運営での三者の関係は、不明確である。現在の大学運営の、学長―評議会―事務局の体制に鑑みて、継続すべきこと、継続せざるを得ないこと、変革すべきこと、を明らかにし、三者の基本的性格と相互チェック機能を明示する必要がある。

(1)役員会:大学の重要な事項について審議する評議会・運営協議会にたいしてその原案を提示し、了承を得られた事項を円滑かつ効率的に執行する執行機関(学長は執行機関の長として大学を代表する)であることを明確にすべきである。

(2)運営協議会:「大学の経営に関する学外の有識者(非常勤)及び大学の経営に関する学内の代表者(役員等)」で構成し学外有識者が「相当程度の人数を占める」、「主に財務会計(予算、決算、財産処分等)、組織編制、職員配置、給与、役員報酬など経営面に関する重要事項や方針を審議する」としている。構成員のほぼ半数に及ぶ非常勤の学外有識者に期待されるのは、大所高所からの大学の経営についての助言や提言であろう。こうした組織に、経営面を専管させ、大学経営への評議会の審議関与を排除するような運営をさせてはなるまい。運営協議会の性格は、諮問機関的なものとするのが妥当ではないか。

(3)評議会:「教学に関する学内の代表者で構成」するとのみ書かれており、その構成方法、規模などは具体的ではない。現行評議会制度においては、執行機能と議決機能が未分化であるが、役員会が執行機関と位置づけられる以上、評議会は、教育研究機関という大学の性格からして、教学面だけでなく経営面についても、審議し議決する意思決定機関(議決機関)と規定されるべきである。これに伴い、執行機関の長である学長が議決機関の長である評議会議長を兼ねる制度は廃止されねばならない。

2.基礎組織

 「最終報告」は、「学部、研究科、附置研究所等」を「各大学の業務の基本的な内容や範囲に大きく関わるもの」とし、それは「省令」で規定する方向をうちだしつつ、これら学部等(以下、従来通り部局と呼ぶ)の位置づけは、明確ではない。部局は大学における教育研究の中心的組織であり、教育研究の活性化はその構成員の積極性の発揮なくてはありえず、したがって部局の自主的な運営が基礎とされねばならない。その部局の自治の根幹は教育研究の自律・自主性の確保と教員人事権、予算配分・執行権にあり、そのことを明文的に規定しておく必要がある。この規定からいくつかの原理的な点が導かれる。

1)すべての教員はいずれかの部局に属し、部局の平等な構成員として自治を担う。昨秋、学長によって突如提案された教員組織論は、この原理を事実上否定した上に成り立っており、退けられねばならない。

2)部局は意思決定機関である評議会に代表を送る権利を有する。現在の千葉大学における学内共同利用センターのように評議会に代表をおくることができないという不合理性は解消されなければならない。

3)評議会と部局教授会のそれぞれの権限と関連を明確に規定する。この権限関係と評議会の意思決定方法(満場一致制か多数決制か)を考慮して、評議会の構成が決められなければならない。

3.事務組織・技術組織

 現在の事務局が担っている業務は、役員会の下部に直属する事務組織がうけつぎ、さらに、役員会の行う企画立案と執行の事務業務を遂行できる体制をつくる必要がある。同時に、部局長の指揮のもとで各部局の企画立案と執行を担う事務組織が配置されねばならない。また、文科省『最終報告』では言及されていないが、技術組織の確立は急務である。

 

II.人事

1.身分

(1)国立大学法人の設置者が国であり、その任務が公共的である以上、国立大学法人の教職員は「全体の奉仕者」としての公務員の性格を引き継ぐものでなくてはならない。従って、1)身分保障(国公法741項、757879条)、意に反する不利益処分に対する不服申立権(89-92条)、信用保持義務(99条)、守秘義務(100条)などをどう継承するか、2)職務専念義務(1011項)、営利企業等に従事しない義務(103104条)をどのように位置づけるのか、明確にされなければならない。

(2)教員の場合は、教特法の示す諸規定(任免、分限、懲戒、勤務評定、研修など)を継承する。

(3)上記事項は、個別法あるいは国立大学法人法のなかの条文として規定する。個別大学の就業規則で措置すべき問題ではない。

2.管理運営機関メンバーの任免

(1)学長

1)執行機関の長として任務を遂行できるためには、権限の正当性の根拠として現行どおり助手以上の教員による投票による「意向聴取」が必要である。学生、職員の「意向聴取」制度も考慮されねばならない。

2)部局を母体とする現在の候補適任者推薦制度は、部局を超えた全学の学長を選考するプロセスとしては妥当ではない。一定数以上の有権者の連署による推薦制度に変えるべきである。

3)チェック装置としてリコール制を設ける。

(2)部局長・評議員

「最終報告」には明確に示されていないが、いずれも部局教授会の選考によって決定すべきである。部局教授会にリコール権。

(3)役員会

学長に任免権があるが、相互チェック機能の充実の観点からすると、評議会の了承事項とすべきであろう。

(4)運営協議会

上記のように諮問機関的という性格付けが妥当であるので、「学長が評議会の了承を得たうえで任命する」とすべきである。

(5)役員・運営協議会メンバーへの学外者登用基準と天下り禁止基準の制定

学外者の登用は運用如何によって重大な弊害が発生する危険があるので、予め基準を設けて置くべきである。特に、文科省等、中央諸省庁の公務員は、現役はもちろん、その退職者も、一定期間の天下り禁止年限を定めておく必要がある。先行独立行政法人における役員肥大化の実態をみると、標記の基準設定の意義は大きい。

 

III.財務会計

検討すべき膨大な内容があるが、管理運営関連で以下の論点を提示しておく。

(1)予算の基礎単位

上記のように基礎組織を部局においた以上、予算の基礎単位も部局とすべきであろう。

(2)基礎的な経常経費

水光費、日常的ランニングコスト等を含めた現状分析を基礎に合理的な算出方法の策定が必要である。学生数、教員数などの標準外形的な要素のみで決定すべきではない。また、この経費については評価と連動させてはならない。

 

**************

【開示4】一橋大社会学研究科(http://www.soc.hit-u.ac.jp/news/dokuhoka/dokuhoka020417b.html )京都大学森本委員会(http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/010508kyudaimorimoto.pdf)が政策づくりに関して参考となる。