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独行法反対首都圏ネットワーク

☆新潟大学職員組合の学長と評議員宛要請書
 
.[reform:04135] 学長申し入れ
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新潟大学職員組合は学長と評議員に対して以下のような申し入れを行いました。


                              2002年4月16日
新潟大学学長
長谷川  彰 様
新潟大学評議員 各位
            要 請 書

                新潟大学職員組合中央執行委員長 谷本盛光

   大学の再生を困難にする「最終報告」を容認すべきではない
 
新潟大学の改革にむけた日ごろの御尽力に敬意を表します。

来る4月19日に国大協臨時総会が予定されていますが、この臨時総会は、大学の
今後のあり方に重要な影響を及ぼす調査検討会議の「最終報告」に対する国立大学
の立場を決定する重要な会議になると思われます。
 新潟大学職員組合は、この間一貫して国立大学の独立行政法人化に反対する運動
をすすめてきましたが、「最終報告」は、自由で豊かな大学の教育研究を発展させ
るという観点からは容認できない内容を含んでいます。
 この「最終報告」は、「大学の自主性・自律性」とは逆に、学問の自由と大学の
自治を否定して大学を文部科学省と産業界の直接的統制下に組み入れ、大学には本
質的になじまない競争と経済効率を徹底的に導入する最悪の内容になっています。
学長と評議会がこの「最終報告」を黙過するならば、新潟大学はそれを事実上、容
認したことになりますが、そのような態度では教職員の教育・研究と労働条件に、
学生の勉学条件に、また新潟大学の未来に責任を果たせないのは明らかです。

私たち新潟大学職員組合は長谷川学長と評議員各位に、以下の点を要請いたしま
す。

1 全学の教職員を対象として、長谷川学長による「最終報告」の説明会がもたれ
ることを要求します。
2 各部局等では、十分な議論を行い、部局長会議、評議会で意見交換の場をもつ
ことを要求します。
3 長谷川学長は4月19日の国大協臨時総会で「最終報告」の問題点を堂々と発言
されるよう要求します。大学の自治、学問の自由を擁護する立場から、国大協臨時
総会において、「最終報告」を容認しない立場を表明していただきたいと思いま
す。
「最終報告」はその最初から最後まで重大な問題ばかりですが、特に下記の5点を
指摘します。

(1) 基本は通則法とかわらず、長期目標は削除される
独立行政法人通則法が企画・立案機能(国)と実施機能(法人)を完全に分離して
いるのは周知のとおりです。これに対する大学関係者からの批判が非常に強い状況
を踏まえて、「最終報告」は、中期目標と中期計画の原案を大学において一体的に
検討するという対応策を示したかのように記述されています。しかし、基本的に
「最終報告」の内容は、中期目標は文部科学大臣が定め、中期計画は各大学が作成
して文部科学大臣がそれを認可するというもので、通則法のスキームと同一です。
私たちがここ数年来の国立大学の問題を単に法人化ではなく独立行政法人化である
と主張する根拠はここにあります。大学の計画に行政官庁がこれほど強い権限を有
するシステムは世界的にみても極めて異例なものです。
また、3月6日時点での案に記載されていた「長期目標の策定」が最終報告では削除
されたことにも注意を払う必要があります。これは、大学の再編・統合を容易にす
るためと見られ、長期的視野をもった高等教育と研究を崩壊させるものと言わざる
を得ません。

(2) 身分は「非公務員」
2001年9月の「中間報告」が結論を先送りした論点に、教職員の身分と運営組織の
あり方がありました。有馬元文部大臣が、法人化の方向を決断したおり、教職員の
身分は「公務員型」を前提とされました。その後も「公務員型」が有力だといわれ
ていましたが、調査検討会議において2002年正月以降急転直下、「非公務員型」に
なりました。
「非公務員型」では国家公務員法と教育公務員特例法が適用されません。国家公務
員法が適用されないと、法律に基づく身分保障がなくなります。国立大学の職員は
身分保障に魅力を感じて国家公務員試験を受け、職を得た人が多いはずです。何ら
の合理的な理由を示さず、また一切の直接的説明もなく、一方的に「非公務員型」
を選択した調査検討会議のやり方に、多くの職員は到底、納得できないでしょう。
法的身分保障の剥奪は職員の怒りを招き、長期にわたり志気の低下につながるのは
間違いありません。
教育公務員特例法は、大学教員の主体的人事権を保障することによって大学の自治
を支える役割を果たしてきました。国立大学以外でも、教育公務員特例法が大学教
員の規範として位置づけられている裁判判決例があります。教育公務員特例法適用
対象がなくなれば、この法律は消滅すると言われています。そうすれば、大学の自
治の重要な法的根拠は崩れ去ることになります。国大協が教育公務員特例法にかわ
る立法に努力することなく、各大学の裁量にまかせてよしとするならば、日本の大
学における教育・研究の自由にたいして無責任の誹りをまぬかれません。
さらに「最終報告」は、学長選考や教員人事において現在とは全く異なる非民主主
義的システムの導入を提示しています。教授会の権限を極端に縮小する方針も、教
育公務員特例法の適用除外と関連しています。
 (3) 天下りが横行し、学長選挙はなくなる
「中間報告」で先送りされたもうひとつの問題である運営組織については、経営と
教学を分離し、経営面を審議する「運営協議会(仮称)」と重要事項を議決する
「役員会(仮称)」に必ず学外者を参加させるとしています。ここでいう学外者が
産業界の人物と文部科学省天下り官僚であるのは明らかです。こうした人的配置を
通じて、産業界と文部科学省が大学を直接的に支配しようとしているのです。
    
さきの教育公務員特例法の適用除外とあいまって、学長選考のあり方も大幅に改悪
されます。いままでのような幅広い教員による選挙の実施は完全に否定され、代
わって学外者の意見を反映させること、学内のごく一部の階層だけが学長選考に関
わることが述べられています。学長選考における学内民主主義の抑圧は、独法化さ
れた大学の運営に関する学長のトップダウン体制確立と表裏一体の関係にありま
す。

(4)「評価」と「資源配分」によって大学は支配される
独法化された大学の評価は「国立大学評価委員会(仮称)」が行い、その評価結果
を次の中期目標期間の運営費交付金に反映させるとしています。重大な問題は「国
立大学評価委員会」が文部科学省内に設置されることであり、また評価と資源配分
が連動することです。第三者評価を行うならば評価機関は文科省から独立していな
ければなりませんが、それが文科省内に設置されると、評価を通じて文科省が大学
を支配するのは必至です。ましてや評価結果が運営費交付金に直接反映される仕組
みでは、文部科学省の支配は一段と強くなるばかりです。

(5)学費は高騰する
国立大学の学費はすでに年間およそ80万円(1年生、入学金と授業料)に達してい
ます。私立大学の文系学部の水準に近く、決して安くはありません。教育の機会均
等は崩れつつあるといえます。独法化された大学における学費は「国がその範囲を
示し、各大学がその範囲内で具体的な額を設定する」というものです。国の財政状
況からみて、国の示す「範囲」がいつまでも今までのような金額にとどまるとは考
えられません。日本育英会の廃止とともに、教育の機会均等を奪うことを加速する
のは確実です。

主要な問題点だけでも以上のとおりです。先行する独立行政法人をみるならば、現
実には「単年度予算執行」がおこなわれており、法人の裁量は増すものではありま
せん。「人件費のしばり」についても、国からの財政で維持される「国立大学法
人」である以上、人事院勧告の枠を越えることは至難のわざなのです。管理・統制
が強化され、営利追求の面が求められる「最終報告」に長谷川学長と評議員は沈黙
すべきではないでしょう。そうした態度では、国大協による「最終報告」の容認か
ら文部科学省による法案作成作業へと、事態が最悪の方向へ一直線に進むばかりで
す。「最終報告」を承認しなければ「民営化」という低レベルの誘導にのってはな
りません。

繰り返しますが、私たち新潟大学職員組合は、新潟大学の将来に禍根を残さないた
めにも、全学の教職員を対象として、長谷川学長による「最終報告」の説明会がも
たれることを望みます。また、各部局等では十分な議論が行われ、部局長会議、評
議会では活発な意見交換がなされる必要があると考えます。
また、長谷川学長には4月19日の国大協臨時総会で「最終報告」の問題点を堂々と
発言されるよう要求します。大学の自治、学問の自由を擁護する立場から、国大協
臨時総会において、「最終報告」を容認しない立場を表明されることを期待しま
す。

御尽力のほどよろしくお願いいたします。