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☆<社説>研究機関再編 現場から声を上げないと
.[he-forum 3854]毎日新聞ニュース速報4・24

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<社説>研究機関再編 現場から声を上げないと
毎日新聞ニュース速報

 国立大学の法人化と歩調を合わせ、宇宙や原子力分野などの研究機関の再編・統合の
検討が進んでいる。日本の科学技術や学術の現場が大きく変わりそうだが、将来の姿に
不安も残る。

 昨年1月の中央省庁再編で首相を議長とする総合科学技術会議が内閣府に発足し、文
部省と科学技術庁は文部科学省に統合された。これがすべての始まりだった。

 01年度からの第2期科学技術基本計画は国家的・社会的ニーズが高いライフサイエ
ンス、情報通信、環境などを重点分野とし、競争的研究資金の倍増をうたった。競争原
理の導入や産学官連携を前面に打ち出したものだった。

 そんな流れの中ですべての国立大学は民間的経営手法導入を柱に04年度にも一斉に
法人化し、改革は各種研究機関にも及ぶ。

 文科省所管の宇宙開発事業団、宇宙科学研究所、航空宇宙技術研究所の宇宙3機関が
統合され、03年度にも新たな独立行政法人が発足する。特殊法人の日本原子力研究所
と核燃料サイクル開発機構も統合され、05年度にも職員が5000人弱というマンモ
ス独立行政法人が生まれる。

 国立天文台、国立遺伝学研究所など13の大学共同利用機関は連合して04年度から
総合的な学術研究法人になる可能性が出てきた。

 宇宙3機関統合ではロケット開発の一元化で効率化が図られる一方で、国際的に高い
評価を受けてきた宇宙科学研の機能はほぼ独立した形で残ることになり、不満の声はそ
れほど聞かれない。

 原子力2機関統合は原子力政策とも深く関係し、困難を伴う。原研が担当した安全性
研究が軽視されないか、負債の放射性廃棄物をどう扱うかなどの問題点があり、統合後
の最大の目標となる高速増殖炉開発の行方も不透明だ。

 政府が研究現場を活性化し、科学技術の国際競争力を高めようと考えるのは理解でき
る。研究者も既得権益を主張するだけではもう済まず、社会的責任を果たすために意識
改革が求められる。

 ただ一挙に米国型の研究社会に近付けようとしても無理だろう。活性化を狙って導入
した研究者の任期付き任用もあまり進んではいない。研究者の理解と協力を得て改革を
行う必要がある。

 その点で大学や日本学術会議、現場の研究者が積極的に発言しないのは残念だ。大学
は沈滞ぶりが批判され、学術会議は自らの在り方を総合科学技術会議で議論されている
という事情は分かる。

 だが、いま現場から大きな声を上げないと官僚主導で重点化、効率化が重視され、す
ぐに役立ちそうにはない基礎研究や、独創的研究に結び付く自由な発想が顧みられなく
なる可能性がある。物言わぬ研究者群ができるのも怖い。

 国立試験研究機関は1年前に独立行政法人化しており、科学技術を担う機関はいや応
なしに歴史的な転換期を迎えている。日本にはどんな研究戦略と研究環境が最も適して
いるのかを一線の研究者も含めて十分議論し、夢のある科学技術創造立国を目指したい



[2002-04-24-01:25]