☆滋賀の大学、交流協定相次ぐ 研究や教育面で「実」取る
.[he-forum 3839] 京都新聞04/20
---------------------------------------------------------------
『京都新聞』2002年4月20日付
滋賀の大学、交流協定相次ぐ 研究や教育面で「実」取る
県域を越えた再編統合を模索する滋賀県内の国立大が、近くの公立、私立大
学との間で、研究や教育の交流を進める協定を相次いで結んでいる。十八歳人
口が減少し、法人化を控えての生き残り策だが、なかなか具体化しない再編統
合よりも、まず身近な大学同士が協力して研究や教育面で「実」をとろうとす
る意図も見えてくる。
滋賀医科大(大津市)は、今年に入って龍谷大と協定を締結。龍谷大社会学
部(大津市)の福祉分野と協力し、医療と看護、福祉での共同研究や実践活動、
学生の単位互換などを考えている。また、県内の福祉施設との連携を図るセン
ターを近年中に設ける計画を立てており、五月には痴呆(ほう)高齢者をテー
マにしたシンポジウムを両大学が共催する。
▽医療と福祉の連携必要
滋賀医科大側の実務を担当する三ッ浪健一教授は「高齢化や児童虐待、精神
障害などの今日的な問題には医療と福祉が密接にかかわらないと解決できない。
学生にも福祉の専門知識が必要だ」と連携の理由を話す。
また、三月には大学院同士の協定を立命館大理工学部(草津市)と結び、従
来から行っていた共同研究を充実させることにした。学生間の交流はもちろん
だが、双方の研究で足りない部分を補完するのが大きな狙いで、協定書には特
許取得を前提にした条文も盛り込んでいる。
▽MR手術とロボット工学
例えば、滋賀医科大が全国で最初に導入したMR(磁気共鳴装置)を使って
手術をする際、立命館大のロボット工学と共同して腫瘍(しゅよう)を焼く針
を正確に患部に刺す補助器具の開発を進めている。また、情報工学の協力を得
て、MRの画面を立体化する研究も考えている。
共同研究について、滋賀医科大の犬伏俊郎教授は「医療工学など今までとは
違う医療が求められており、医学部のみの単科大では限界があった」と説明す
る。立命館大の永井清助教授も「理工学の観点から医療に役立てるはず。双方
にメリットがある」と話す。
一方、滋賀大(本部・彦根市)と県立大(同)は国公立の壁を越えた単位互
換制度を四月から導入し、双方とも語学や体育などの一部科目を除くほとんど
の科目を対象にした。
▽交付金獲得へ特徴打ち出し
大学間交流の背景には、二〇〇四年度から一斉に開始される国立大の法人化
がある。法人化の調査検討会議が三月末に出した最終報告書では、国からの交
付金の増減は第三者機関の評価で決まるため、各大は特徴を出さなければなら
ないとしている。また、地域に開かれた大学にするため、公私立大との連携も
うたっている。
さらに、なかなか具体化しない国立大の再編統合よりも、身近な大学同士の
連携への期待は大きい。三ッ浪教授は「協定と再編統合は別の話だが、近くの
大学同士の協力関係には『実』があり、地域貢献のためにも協定は必然だった」
と話している。