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独行法反対首都圏ネットワーク

☆岐阜大学地域科学部教授会の「見解」
 
[he-forum 3822] 岐阜大学地域科学部教授会の「見解」.
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       「新しい『国立大学法人』像について」(最終報告)に対する見解
                      2002年(平成14年)4月17
                        岐阜大学地域科学部教授会

 このたび文部科学省の「国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議」か
ら,「新しい『国立大学法人』像について」の最終報告が発表されました.この最終
報告は120年余の歴史をもつ国立大学の大転換をはかるものでありますが,その内
容は将来の大学のさらなる発展,教育研究の大いなる展望をあたえてくれるもので
しょうか.
 岐阜大学においては,平成9年11月の評議会で,効率性を優先し,一律に短期的
な評価を行う独立行政法人化は大学の自主的教育研究活動にそぐわないことなどから
反対するとの決議がなされました.本学部教授会でも,文部省が態度変更して独立行
政法人化に向けて動き出した平成11年10月に,性急な制度変更を急ぐあまり,研
究・教育の論理,大学人の意思を無視するものだとする意見表明を行いました.
 その後様々な過程を経てまとめられた今回の最終報告は,私たちが危惧したことが
らを解消したものとはなっていません.とりわけ,最終段階において盛り込まれた以
下の内容については,重大な懸念を抱かざるをえません.
 一つは,学外者が多数参画した運営協議会を,学内者から構成される評議会と並置
し,その上に役員会を設置してここに権限を集中するとしたことです.大学が国民と
ともに歩むために学外からの意見を様々なかたちで取り入れる必要はあります.しか
し,このシステムによって運営されれば,特定の学外者による経営的観点が強まり,
国民諸階層の要求に深く応える教育・研究に携わっている当事者である学内者の意見
を十全に反映させることはできないのではないでしょうか.
 二つめには,強大な権限を付与された学長の選挙について,従来の直接選挙方式を
やめ,一部の者で構成する学長選考委員会で候補者を絞りかつ選考し,学内者には限
定して意向を聞く程度にとどめるとしたことです.学長は大学の構成員の総意を受け
て選ばれてこそ,その権限も行使でき,責任も果たせます.しかし,学長の責任を問
うシステムも欠いたこの方式では,学長自身が責任を持ってリ−ダ−シップを発揮で
きず,恣意にもとづく主観的な判断で運営が行われ,大学の将来を危うくする危険性
が多分にあると思われます.
 三つめには,上記二つの事項と対応して,学部教授会の権限がまったく極小化され
ていることです.大学が国民の信託を受けて発展するには,基盤組織である学部・部
局が研究・教育において展望をもって生き生きと展開することなくしてはありませ
ん.そのために,学部・部局の研究や教育の組織と計画,人事構成,予算措置等の自
主性が必須であり,それを尊重する大学運営が不可欠です.今回の報告ではこの自主
性を否定する方向にあり,大学全体としての研究と教育の基盤を危うくさせるものだ
と思わざるをえません.
  さらに,今回の最終場面で挿入された教職員の非公務員化,及び教育公務員特例法
の適用除外については,直接の当事者の意見も集約することなく,十分な論議を経な
いものであり,とうてい納得がいきません.とりわけ,教育公務員特例法における身
分保障は,学問と大学が国家政策に従属させれた戦前のあり方からの反省から生まれ
たものであり,学問の自由と大学の自治の具体的保証となってきたものです.した
がって,この適用除外と一対になった非公務員化は,長期的展望に立った個々人の安
定的な研究・教育活動に支障をもたらし,全体としての教育・研究内容を著しく制限
し,歪める可能性が大きいと危惧せざるをえません.
 以上の事項に加えて,この独立法人化の要請が国家公務員の大幅削減という行政改
革から端を発し,戦略的産業の早急な育成に大学の研究を組み入れるという国家政策
の下に強力に推進されてきたことをあらためて思い起こさざるをえません.これは大
学間や学問分野間で経営効率や業績を激しく競わせる流れを生み出しています.私た
ちはこうした方向ではなく,研究・教育を通じて時代の要請にいっそう応えられるよ
うに,大学間や学部間,学問分野間で互いに切磋琢磨していくことこそ重要だと考え
ています.
 こうした点から,私たちは今回の最終報告に対して大いなる危惧を抱き,容認しが
たいことをここに表明し,関係諸機関の皆さんの御理解を得るとともに,今後の検討
の素材としていただきますよう求めます.