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独行法反対首都圏ネットワーク

国立大法人化 活性化に生かす道筋を
 
.[he-forum 3794] 信濃毎日新聞社説04/10
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『信濃毎日新聞』社説  2002年4月10日付

国立大法人化 活性化に生かす道筋を


 国立大学の法人化に向け、文部科学省の調査検討会議がまとめた最終報告は、
大学の裁量を広げる一方で競争を促すよう提言した。高等教育の大転換となる。
大学の活性化につながる改革にしなければならない。

 最終報告は「国立大学法人法」をつくり、すべての国立大をできるだけ早く
一斉に法人化する方針を示した。教職員は全員「非公務員」とする。民間的発
想の経営手法を取り入れるため、学外の人が運営に参加するシステムも求めて
いる。

 国立大の法人化は行政改革の流れで出てきた論議だ。独立行政法人にするこ
とで国家公務員の削減を図る狙いがあった。しかし、既存の仕組みは必ずしも
大学の活動になじまない。報告が新たな法律をつくるよう提言したのは、その
ためだ。

 法人化が国立大に活力を吹き込む可能性はある。国の組織を離れることで予
算や人事の自由度は増す。例えば、自主的な判断で柔軟に学科を編成できる。
管理職への外国人の登用や企業の役員との兼職・兼業など弾力的な展開も考え
られる。

 問題は、利点をどう生かすかだ。一方では、かえって国の関与が強まらない
か―といった懸念が依然、強い。先週の国立大学長会議でも地方の学長を中心
に法人化に対する批判や疑問が相次いだ。禍根を残さないよう引き続き詰める
必要がある。

 ポイントとなる一つは、大学評価の仕組みの確立だ。報告では、第三者機関
の評価によって国から各大学への資金配分を増減することになっている。どの
ように評価し、配分に反映させるのか。具体的な方法や手続きは今後の検討課
題である。

 すぐには成果の出ない研究分野がおろそかにならないか、結果として大学の
自律性を損なわないか―など心配は少なくない。地方大学については地域貢献
も加味される必要がある。公正で客観的な評価をどう実現するのか、十分な研
究を望む。

 大学の側は自己改革に一段と力を注ぐときだ。少子化が進み、学生を引き付
けなければ、存続も危ぶまれる時代である。それぞれに将来像をはっきりさせ、
存在感を高めていかなければならない。法人化を積極的に生かす姿勢が求めら
れる。

 信州大学は既に取り組みを重ねている。法人化をにらんだ将来構想では、従
来の学部・学科にとらわれず教官同士が連携できる態勢づくりなどを掲げた。
信大の先行きは地域の活力にも深くかかわる。魅力アップへ、試みを積み上げ
てもらいたい。