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独行法反対首都圏ネットワーク

☆◇国立大法人化 主体的な変革へ踏み出せ
 
. [he-forum 3742] 山陽新聞社説04/05
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『山陽新聞』社説  2002年4月5日付

◇国立大法人化 主体的な変革へ踏み出せ

 全国の国立大学学長会議で、二〇〇四年春に国立大学を一斉に法人化すると
の文部科学省の調査検討会議の最終報告が説明された。

 各学長からは改革案への批判や疑問が相次いだ。わが国の大学制度の歴史的
転換点になり得る国立大法人化だけに疑念は当然だろう。

 最終報告は国立大を従来の独立行政法人とは別の「国立大学法人」とし、文
科省が設ける第三者機関で各大学の業績を評価して国からの予算配分に反映さ
せ、大学間の競争を促すとしている。

 大学側については学科の設置を自由化するなど裁量を大幅に拡大し、大学運
営への学外者の参画を制度化する。また、収益事業を認めるなど民間の経営手
法を導入する。

 焦点だった教職員の身分は「非公務員型」とすることになった。以前から身
分の不安定化による悪影響を心配する声はあったが、任期付き任用や兼職など
多様な雇用形態が可能になる。評価制度が導入され、業績に応じて教職員の給
与に差がつくことになる半面、海外の高名な研究者を招へいしやすくなるなど
の利点もある。

 各大学は、地域特性や教育・研究の特色などを踏まえ重点事業の中期的な目
標を定める。大学側はこの中期計画の原案を文科相に提出し、文科相が決定す
る。

 法人化の成否を左右するポイントは大学や教職員の業績評価が適切に行われ
るかどうかである。だが、評価方法の実際は見えてこない。

 大学での教育・研究は成果が見えにくく、具体的成果が出るまで長年月を要
するものも多い。

 先に文科省の大学評価・学位授与機構が行った国立大学などの社会貢献の評
価でも大学側の自己評価を基に聞き取り調査を加味した結果、評価が甘めになっ
たと指摘されるなど透明で説得力ある評価システムの構築は困難な課題を抱え
ている。

 適切な評価が行われなければ、重要な分野への予算配分がいびつになること
も考えられる。

 学長会議では「文科相が中期計画を決めるやり方では大学の自主自立が制限
される」「金が入りにくい文科系や基礎科学がおろそかになるのでは」などの
声が上がった。

 国立大学については競争が乏しくぬるま湯的との批判が多い。各大学は、法
人化議論の高まりを教育・研究の活性化につなげる好機ととらえ、主体的な改
革に取り組んでもらいたい。地域の高等教育の拠点として脱皮を図ってほしい
との期待にこたえることにもなる。