☆文科相「一大転換、改革を」 「2004年、間に合う?」 各地から懸念も
[he-forum 3730] 日本経済新聞04/04.
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『日本経済新聞』2002年4月4日付
国立大法人化で学長会議
文科相「一大転換、改革を」
「2004年、間に合う?」 各地から懸念も
国立大学の法人化問題で文部科学省は三日、東京都内で全国の国立大学長ら
を集めた会議を開き、第三者評価による予算配分見直しなどを盛り込んだ「国
立大学法人」化の最終報告書について説明した。遠山敦子文科相が「法人化は
大学制度百二十年の歴史の一大転換点」と理解を求めたのに対し、大学側から
は「二〇〇四年度に間に合うのか」との疑問の声も出た。
会議には九十九大学の国立大学長や、各種研究機関長らが集まった。
遠山文科相は最終報告書について「国立大も国民や社会への説明責任が増し
ている。第三者評価で存在意義を証明するという視点は極めて重要」などと高
く評価。「総合大学など大規模大学こそ本格的な改革の姿勢を国民に示すよう
ぜひともお願いしたい」と訴えた。
一方、質疑応答では各学長側から「二〇〇四年度からの移行というが組織、
会計、学長選挙のあり方など課題も多く、無理があるのではないか」「経営自
由度が増すと文化や基礎科学研究など将来、日本の体力の基礎が欠ける恐れが
ある」などの指摘があった。また、「中期計画を大臣が認可するなど国の統制
が強まり、大学の教育・研究が制限されるのでは」などと懸念する学長もいた。
最終報告は、教職員の非公務員化で産学の広範な連携などを図ることや、役
員会の設置でトップダウン型の意思決定システムを築くことなどを盛り込んで
いる。
地方の教職員 雇用不安の声
文科省幹部ら説得行脚
学長会議に先立ち、国立大学協会と文科省の幹部は二人三脚で、法人化問題
で各地のブロック学長会議を回る"説得行脚"を繰り広げた。国大協は十九日の
臨時大会で最終報告を受け入れるかどうかを決めるが、教職員を「非公務員」
とする内容に組合側から雇用不安、一部大学から「地方切り捨て」との声が上
がったからだ。
全国大学高専教職員組合は「最終報告はアウトソーシング促進など人事の流
動化を提示している。教職員の雇用・身分保障が不安定になる」とし、殊に事
務職員に不安が強いとされる。
また、地方都市の一部大学には法人化のデメリットの方が大きく映っている
ようだ。「企業立地や県民所得格差があり、大学経営の自由と言って地方では
実効を伴わない。地方の国大と地域社会にとって憂慮すべき制度設計」と訴え
る学長もいる。ブロック会議でも「非公務員化で産学連携が進むというが、大
都市部はともかく地方ではどうか」などの疑問が投げかけられたという。
もっとも、こうした意見はある意味で織り込み済み。「事前の"ガス抜き"が
必要だった」と行脚の意味を打ち明ける大学幹部もいた。