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独行法反対首都圏ネットワーク

☆その3 独法化の先取り、新潟大学の建物利用政策
 
[he-forum 3719] 新潟大学から「法人化」後の大学を考える(その3).
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        シリーズ 新潟大学から「法人化」後の大学を考える    
        その3 独法化の先取り、新潟大学の建物利用政策
             
1) いま新潟大学では、建物の改修と新築が目白押しとなっており、5件の新築、
改修等が2001年度第2次補正予算で決められた。全国の大学でも2000億円の大
幅な予算がつけられ、かなりの施設整備が進みつつある模様で、新潟大学を含め、
全国の国立大約100校中1/3の大学に8割の予算が認められたと言われる。しかし
この様な建物の予算を承認する条件として、文科省は教育研究のスタイルの全面
的変更と、将来の評価の強化を打ち出してきた。また大学内では、新たな建物使
用の規則が作られつつある。

2) 1月に文科省の施設関係のトップによる講演会が新潟大学で実施され、百数
十名の教職員が参加している。その講演会の中で、資料として、文科省大臣官房
文教施設部作成のパンフ「科学技術振興のための基盤整備、これからの国立大学
等施設整備のあり方」が用いられた。書類には、学部ごとの整備から学部をこえ
た全学共用の整備へ、そして競争原理を導入した施設利用の弾力化が強調され、
この方針に立脚して、優れた研究者に充分な研究スペースを配分するシステムが
強調されている。更に具体的な方針として、共同利用は競争原理に基づく利用規
定により、レンタルラボ等として一定の建物スペースを貸与すべき施策が書かれ
ている。(新潟大学では、いちはやくこの方向に添って、忠実に文書化されたも
のが決定され、あるいは決定されようとしている。)当日の別資料によると、国
立大学の建物利用の方針は、「科学技術立国論」に基づくものであるとし、この
国家目標を実現するために、大学の施設整備を、緊急整備5か年計画の形で実行
するとされる。更に上記目標に添った、科学技術政策の総合性と戦略性を考慮し、
重点的な資源配分等の措置が取られるとのことである。

3) 上の競争原理を基にした文科省の大方針を、いち早く、他にさきがけて、大学
内で規則制定にまで進めたのが新潟大である。具体的な建物利用規則づくりの動
きは、自然系と人文系とで分かれて進行しており、それぞれの教授会の決定を踏
むという段取りで進んでいる。

この建物利用内規の要点だけを抜き出すと以下のようになっている。 
 第一条: 施設の点検評価、有効活用に関しての共用スペースについては
      建物委員会・施設委員会と協議すること 
 第四条: 建物利用計画は部局長と他に各1名の教員からなる建物委員会が
      策定し、室の利用者は当該部局長が決定する 
 第五条: 利用期間は原則として5年とする
 
更に、第六条には利用停止の権限、第七条には重大過失等による棄損の賠償責任、
第八条には「利用面積に応じて経費負担する」と明記されている。

共用スペース以外もすべて、経費に換算しようという驚くべき内容であるが、と
りわけ重大なのは共用スペースの有料化であろう。大学の現時点での利用の現状
に目をむけず、上から言われるまま、きわめて短絡的に文科省方針を受け入れる
格好になっているのが、現在の新潟大学の実情と言える。施設部が力をもち、実
務的にリードする形や、委員会での高圧的な姿勢もいろいろ聞こえてくる。
 前学長体制下では、これらの個別の動きに抵抗しても抗しがたいという思いも
あって、自然系の方は、9月段階ですでに4部局教授会で決定がすんでいる。こ
れらの対応は全国の大学のなかでも異例の早さでの対応、迎合的な対応と言わざ
るを得ない。
 もし現在作られつつある利用規則のもとで建物が使われるとすれば、共有スペ
ースを金が支配する様な事態が起こることは日を見るより明らかで、こうなると
外部資金をとってきた研究者、あるいは産学協同の場として、レンタルラボを企
業人が占拠する場になる可能性は高い。これでいいのだろうか。大学は産業技術
開発研究所とは異なる。基礎的な研究、学問の論理にもとづいて守るべき基礎分
野を発展させるためには、金がなければ建物を利用できないようなシステムは存
在してはならないものである。

4)これまでに示した文科省の方針がストレートに近く貫徹した結果がいまの新
築・改修時の設計プランへの制約条件として立ち現れて、大変困難な状況が生ま
れて居り、いまや悲鳴にも似た混乱も生じている。
 
基本的な研究スタイルへの干渉と言える問題として、これまでの科学研究の成果
を上げてきた、個人レベルの研究が形式上とはいえ許されなくなってきているこ
とである。新築の建物に入る研究者は、全てプロジェクト研究という制約をうけ、
既に余り遠くないテーマを持つ複数の研究者によるプロジェクト研究テーマ名称
が提出された。どこの研究室でもプロジェクト研究のスタイルが定着している現
状にはなく、相当無理をした案を作成した事情がある。     
 新築、改修といえば、それを機に建物の利用できる部屋が整備され、よりゆと
りのある実験室ができると期待するのが普通の考えであろう。ところが いま新
潟大学では逆の状況が進行しつつある。つまり、改修・新築により、以前よりも
居室・実験室の狭隘化が起こる事態が明らかになってきた。たしかに建物のスペ
ースは無尽蔵ではなく、時には制約されることも仕方がないであろう。しかし、
今強要されているのは、いつ誰がどの様に使うのか不明な共有スペースを用いた
プロジェクト研究用の面積確保を出発点にせよということである。
 更に問題なのは、新築ではなく改築となる理学部にも、新棟と同様の建物利用
規則が適用されるおそれがあることである。こうなると、旧棟にも共用スペース
の供出が要求されるし、いつまで無償で建物を使っていられるか解らない事態が
やってくる。 

 独立行政法人化が強行されれば、国立大学は制約された運営交付金のもとで、自
助努力を強いられる。我々の大学では、独法化が実施される前に、教育研究のた
めに必須な活動スペースに上に示したような「金の支配」が貫徹する方向が打ち
出されてきた。このような動きが他の大学にも取り入れられることを恐れる。

                   2002年4月 新潟大学職員組合 独法化問題ワーキンググループ