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独行法反対首都圏ネットワーク

☆大学破壊の「最終報告」を本当に容認するのか!!
 
.[he-forum 3704] 北大学長・評議員への申し入れ
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2002年4月2日

北海道大学学長
中村 睦男   様

北海道大学評議員 各位

北海道大学教職員組合
委員長  神沼 公三郎


            大学破壊の「最終報告」を本当に容認するのか!!

 文科省の「国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議」(以下、調査検討
会議)は2002年3月26日に最終報告「新しい『国立大学法人』像について」(以下、
「最終報告」)を了承して文部科学大臣に報告し、2000年夏以来の検討作業を終了し
ました。この「最終報告」は、学問の自由と大学の自治を全面的に否定して大学を文
科省と産業界の直接的統制下に組み入れ、大学には本質的になじまない競争と効率化
を徹底的に導入するとともに、さらには国立大学の民営化に向けた露払いの役割をも
果たすもので、まさに大学破壊の「最終報告」としか言いようのない最悪の内容です。
評議会がこの「最終報告」を黙過するならば、北大はそれを事実上、容認したことに
なりますが、そのような態度では教職員の研究・教育と労働条件に、学生の勉学条件
に、また北大の未来に責任を果たせないのは明らかです。そのため北大教職員組合は
ここに中村学長と評議員各位に、大学人としての良心に基づき「最終報告」を拒否す
る態度をとるよう訴えるものです。

1.「最終報告」の重大な問題点
 「最終報告」はその最初から最後まで重大な問題ばかりですが、ここでは特に下記
の5点を指摘しておくことにします。
(1)通則法スキームの導入
独立行政法人通則法が企画・立案機能(国)と実施機能(法人)を完全に分離してい
るのは周知のとおりです。これに対する大学関係者からの批判が非常に強い状況を踏
まえて、「最終報告」は、中期目標と中期計画の原案を大学において一体的に検討す
ると一定の対応策を示したかのように記述されています。しかし基本的に「最終報
告」の内容は、中期目標は文部科学大臣が定め、中期計画は各大学が作成して文部科
学大臣がそれを認可するというもので、通則法のスキームと同一です。私たちがここ
数年来の国立大学の問題を単に法人化ではなく独立行政法人化であると主張する根拠
はここにあります。大学の計画に行政官庁がこれほど強い権限を有するシステムは世
界的にみても極めて異例なものになるでしょう。
(2)「非公務員型」への転換
2001年9月の「中間報告」が結論を先送りした論点に、教職員の身分と運営組織のあり
方がありました。そのうち教職員の身分はそもそも「公務員型」が有力だといわれて
いましたが、調査検討会議において2002年正月すぎから急転直下、「非公務員型」を
選択する雰囲気が支配的になり、最終的にそのとおりとなりました。
「非公務員型」では国家公務員法と教育公務員特例法が適用されません。国家公務員
法が適用されないと、法律に基づく身分保証がなくなります。国立大学の職員は身分
保証に魅力を感じて国家公務員試験を受け、職を得た人が多いはずです。それなのに
何らの合理的な理由を示さず、また一切の直接的説明もなく、一方的に「非公務員
型」を選択した調査検討会議のやり方に、多くの職員は到底、納得できないでしょ
う。法的身分保証の剥奪は職員の怒りを招き、長期にわたり志気の低下につながるの
は間違いありません。
教育公務員特例法は、大学教員の主体的人事権を保証することによって大学の自治を
支える役割を果たしてきました。教特法が適用されなくなるので、大学の自治の重要
な法的根拠が崩れ去ることになります。さらに「最終報告」は、学長選考や教員人事
において現在とは全く異なる非民主主義的システムの導入を提示しています。教授会
の権限を極端に縮小する方針も、教特法の適用除外と関連しています。
「非公務員型」の選択は直接的には身分保証と大学の自治を消滅させ、雇用・労働条
件を不安定化させる事態を招きますが、さらに注意しなければならないのは、国立大
学の民営化に先鞭をつける役割を果たしうることです。2001年春に小泉内閣が誕生し
て以降、民営化の動きが強まりました。民営化の方針は、2002年1月25日の閣議決定
「構造改革と経済財政の中期展望」によって、「国立大学を早期に法人化して自主性
を高めるとともに民営化及び非公務員化を含め民間的発想の経営手法を導入すること
を目指す」とはっきり方向づけられました。
(3)無限定な学外者の運営参加
「中間報告」で先送りされたもうひとつの問題、運営組織については経営と教学を分
離し、経営面を審議する「運営協議会(仮称)」と重要事項を議決する「役員会(仮
称)」に必ず学外者を参加させるとしていますが、これも非常に重大な点です。ここ
でいう学外者が産業界の人物と文科省天下り官僚であるのは誰の目にも明らかです。
こうした人的配置を通じて、産業界と文科省が大学を直接的に支配しようとしている
のです。いま官僚の天下り問題が国民的批判を浴びているにもかかわらず、そんなこ
とはどこ吹く風、文科省の官僚は"大学改革"の美名に隠れて甘い汁を吸おうとしてい
ます。
 さきの教特法の適用除外とあいまって、学長選考のあり方も大幅に改悪されます。
いままでのような幅広い教員による選挙の実施は完全に否定され、代わって学外者の
意見を反映させること、学内ではごく一部の階層だけが学長選考に関わることが述べ
られています。全国的に大学紛争の試練を経て到達した学長選考の民主主義的形態が
いとも簡単に奪い去られようとしているのです。学長選考における学内民主主義の圧
殺は、独法化された大学の運営に関する学長のトップダウン体制確立と表裏一体の関
係にあります。
(4)大学支配の手段としての「評価」
独法化された大学の評価は「国立大学評価委員会(仮称)」が行い、その評価結果を
次の中期目標期間の運営費交付金に反映させるとしています。ここでの大きな問題は
「国立大学評価委員会」が文科省内に設置されることであり、また評価と資源配分が
連動することです。第三者評価を行うならば評価機関は文科省から独立していなけれ
ばなりませんが、それが文科省内に設置されると、評価を通じて文科省が大学を支配
するのは必至です。ましてや評価結果が運営費交付金に直接反映される仕組みでは、
文科省の支配は一段と強くなるばかりです。
(5)学費高騰の危険性
国立大学の学費はすでに年間およそ80万円(1年生、入学金と授業料)に達していま
す。私立大学の文系学部の水準に近く、決して安くはありません。教育の機会均等は
崩れつつあるといえます。では、独法化された大学における学費はどうなるのでしょ
うか。「最終報告」にはわかりづらい表現で書かれていますが、結論は「国がその範
囲を示し、各大学がその範囲内で具体的な額を設定する」というものです。国の財政
状況からみて、国の示す「範囲」が今までのような金額にとどまるとは考えられませ
ん。そのため各大学が、現在の国立大学学費よりもはるかに多額の学費を設定するの
は間違いありません。教育の機会均等がさらに奪われていくのは確実です。

2.ぜひ具体的な行動を
 主要な問題点だけでも以上のとおりです。このような大学破壊の「最終報告」に中
村学長と評議員はただ沈黙するだけで良いのでしょうか。そうした態度では、国大協
による「最終報告」の容認から文科省による法案作成作業へと、事態が最悪の方向へ
一直線に進むばかりです。
北大の将来に禍根を残さないためにも、北大の各部局、施設等で十分な議論が行わ
れ、そのうえで4月10日の部局長会議、4月17日の評議会で活発な意見交換がなされる
必要があります。そして中村学長には4月3日の国立大学学長等会議、4月12日の国大
協臨時理事会、4月19日の国大協臨時総会で勇気を持って「最終報告」の問題点を堂々
と発言されるよう要求します。少なくとも、国大協臨時総会が「最終報告」を了承し
ないように奮闘することを強く求めます。