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独行法反対首都圏ネットワーク

☆国は大学の支援に徹せよ
 
[he-forum 3694] 東奥日報社説03/31.
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『東奥日報』社説  2002年3月31日付

国は大学の支援に徹せよ


 国立大学法人化の最終報告がまとまった。予算の使い方や人事、教育研究組
織などについての国の規制を緩和し、大学の裁量を大幅に広げるという内容で
ある。国家の付属機関だった従来に比べれば大きな前進といえるだろう。

 だが最終報告を見る限り、国の関与の及ぶ部分は依然として大きい。やり方
によっては、かえって国のコントロールが強まる恐れもある。肝心なのは大学
の自主性・自律性が確立されるかどうかだ。国は大学の支援に徹してほしい。

 最終報告では、教職員の身分を非公務員とすることや、外部の有識者を含め
た役員会を設けることが新たに盛り込まれた。

 大学の自由度をできるだけ高めるという観点からいえば、非公務員としたの
は妥当なところだ。役員会を設けて大学全体として「透明性の高い意思決定」
を目指したのも理解できる。

 経営・教育の責任者となる学長の権限は強大だ。重要事項について学長の意
思決定に先立ち役員会の議決を経るとしたのは、権力チェックという点でも意
味がある。

 ただ、行革論議で浮上した独立行政法人の基本的枠組みを依然として引きずっ
ている点が気掛かりだ。行政の企画立案機能と実施機能を分け、企画立案を本
省が、独立行政法人が実施機能を担うという仕組みだが、この場合、実施機能
として想定されているのはもっぱら定型的業務なのである。

 さらに問題なのは、主務省が中期目標を定めて指示し、主務省に置かれた評
価委員会が達成状況を評価するという上意下達の仕組みである。自由な発想を
基本とする大学には到底なじまない。

 大学の中期目標について、最終報告は各大学が作成した原案への配慮義務を
盛り込んだ。しかし、結局は文部科学大臣が定めるものとし、文部科学省内に
置いた国立大評価委員会が達成状況などを評価して「運営費交付金等の算定に
反映させる」とした。

 中期目標について、中間報告にはなかった各大学の原案への配慮義務を盛り
込んだのは一歩前進だが、国が目標を設けるという基本は変わらなかった。と
ても先進国の大学とは思えない。

 運営費交付金についても最終報告は「評価結果等を反映」としただけだ。教
育費や最低限の研究費など基盤的経費をどこまで保証するかは明らかにしてい
ない。

 予算配分などに大きな権限をもつことになる国立大評価委員も文科省の組織
であり、メンバーも文科省選任だ。これまで以上に文科省のコントロールが強
まるのではないか、という危ぐが出てくるのも無理からぬところだろう。

 国によるトップダウンの仕組みが強まれば強まるほど、大学に未来を開く自
由な発想は生まれにくくなる。白川英樹さんや野依良治さんのノーベル賞は、
国のプロジェクト研究ではなく、ごく日常の自由な研究から生まれたものであ
る。

 注目したいのは、評価結果の交付金への反映方法や評価のあり方などが今後
の検討にゆだねられた点である。

 具体的な制度設計に当たっては、評価と切り離して一定の基盤的経費を保証
することや、国立大評価委員会を第三者機関とすることなど、国の関与をでき
るだけ制限する方向で組み立てるべきだ。

 国立大の側も正念場を迎える。法人化により、大学はこれまで国任せだった
人事・労務などさまざまな業務を自律的にこなさなければならない。限りある
予算を基礎研究につぎ込むかどうかも大学の見識によるのである。

 自由が広がる分だけ責任も大きくなる。「大学自治」を構築できない大学に
は未来はない。任せられたができなかった、では済まされないのだ。