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独行法反対首都圏ネットワーク

☆変身の好機と考えて 国立大学法人
 
.[he-forum 3686] 朝日新聞社説03/2
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『朝日新聞』社説  2002年3月27日付

変身の好機と考えて 国立大学法人


 全国の国立大学を独立行政法人制度のもとで国立大学法人にする。明治の帝
国大学創設、戦後の新制大学発足に続く大きな改革である。

 その設計図を描いていた文部科学省の調査検討会議が最終報告を出した。

 独立行政法人は行政改革の発想から出てきた制度だ。大学人には、反発する
声も強かった。だが、調査検討会議はこの制度をてこに予算や人事、組織の規
制を緩和しつつ、一方で大学の自治や学問の自由も確保することを目指した。

 今の国立大学は文科省に手足を縛られ、予算も自由に使えないのが実態だ。

 最終報告を見ると、まだ文科省の統制のもとにある窮屈さは残っている。

 各大学の中期目標は文科相が定める。実績の評価も文科省に置く評価委員会
で行い、その委員は文科省が選ぶ。独立行政法人制度の枠組みに従った形だ。

 しかし、文科相が中期目標を決める際、大学のつくった原案に配慮するよう
義務づける、としている。大学の自主性・自律性を考えた苦肉の策だろう。大
学にふさわしい法人のありかたをゼロから議論できなかったのは残念だった。

 だが、不十分な点が残るとはいえ、大学の裁量が広がるのは確かだ。大学側
がこれを積極的に生かすことが先決である。

 報告で注目すべきは、教職員の身分を他の独立行政法人で圧倒的に多い公務
員型ではなく、非公務員型にしたことだ。

 教職員からは身分保障を心配する声も出ているが、非公務員型とすることで、
短時間勤務や任期付き職員など多様な雇用形態を用意しやすくなる。世界的な
研究者を高い給与で招くのが容易になり、外国人学長も迎えられる。一橋大教
授だった中谷巌氏はソニーの社外取締役との兼職を認められなかったが、今度
は道が開かれる。

 報告は役員会や経営を審議する運営協議会に学外者を入れる、とした。社会
に開かれた大学を目指すためだ。教育関係者だけでなく、企業や市民団体の代
表など、だれを選び、意見をどう生かすか。大学の姿勢が問われよう。

 事務職員はこれまで教官の下と見られがちだったが、大学が自ら運営のかじ
をとるうえで、その役割が重要になるだろう。

 私立大学ではすでに少子化時代の競争激化をにらんで、経営能力にたけた人
材を副学長などに迎え、学生を引きつける大学づくりの試みを始めている。

 「不自由にさえ耐えれば、競争はない」と言われてきた従来の国立大学の環
境は、法人化で一変する。

 基礎研究の充実や世界で通用する人材の育成、地域の活性化など大学に求め
られる役割は多様だ。各大学はどんな自画像を描くのか。その実現への道筋を、
再編統合も含めてどう考えるのか。

ボールは大学に投げ返されている。